2014.5.6
石月努 with (K)NIGHtribe@東京キネマ倶楽部
「黒ノ夜」
—5月6日「黒ノ夜」—
昨晩の「白ノ夜」と対になるような演出で【黒盤】に収録されているインストナンバー「BLACK CAT」の速いパッセージのシーケンスフレーズと4つ打ちのキックが高揚感を煽る。黒を基調としたスタイリングでステージに姿を現した4人。ここまでの演出は1日目の「白ノ夜」とテレコになっている。
オープニングナンバーは【黒盤】の1曲目でもあった「FACES」。ドラムスLEVINの真骨頂である、大きなタイム感のビートにギターの桜村とベースのSatoのエッジの効いたリフが絡み合う。さらに石月にねっとりとしたヴォーカルが重なる。また、ステージに用意されたストロボライトがステージの4人をほんの一瞬映し出しては、また暗転する。聴覚と視覚がグルグルに刺激され、オーディエンスはトランス状態となる。
続く「GAME」では、幾分BPMが上がり、モニタースピーカーに足をかけた石月が挑発的に歌う。“黒ノ夜、真っ黒に染めよう!”という煽りと同時に【黒盤】に収録されている「FAME69」が始まる。イントロの重々しさから、一気に開けるサビ。ミドルのパートでは、ギターの桜村がエモーショナルなソロを聴かせるなど、コンパクトながらも、様々な表情を見せるこの曲。各パートに見せ所も多く、ライブ映えのするチューンであることを強く感じた。
石月は着ていた黒いジャケットを脱ぎ、額に滲んだ汗を拭った後、桜村が一呼吸おいてから「雨のち、君が咲く。」の妖しいギターリフを刻む。抑制されたメロディーに激しい求愛の言葉が絡むこの「雨のち、君が咲く。」。石月は言葉を噛み締める様に丁寧に歌う。
中盤、メランコリックな「Echo」、2013年8月にリリースされたアルバム『UNPROUD』に収録された希望の歌「ヒカリへ」、「DROP」とミディアムテンポの“聴かせる”ナンバーが続く。そして8曲目に用意されたのは4人が織りなすグルーヴをたっぷり堪能できる「MY WAY」。石月が吐き捨てるように“This is My way”と歌うその様は文句なくカッコイイ。
“暑い!”この日の石月のMCの第一声はこんな素の言葉だった。“昨日も来て頂いた方もいると思いますが、「黒ノ夜」の方がハードですね”。再び額の汗を拭いながら石月が笑う。
メンバー紹介を挟んでライブ後半は「RUSTY EMOTION」からスタート。どこか郷愁をさそう、不思議な魅力をもったナンバー。前半の荒々しく、攻めのモードからシフトチェンジして、オーディエンスも石月の歌に聴き入っている。
そして10曲目は昨晩のアンコールでもプレイされた「ADDICT」。昨晩は荒々しく且つ、エネルギッシュに感じたが、この日の「ADDICT」は昨晩よりもタイトな印象を受けた。筆者の勝手な思い込みもあるかもしれないが、セットリストによって同じ曲でも聞き手が受ける印象がまったく違うと実感する。あえて中盤に昨晩アンコールでプレイした「ADDICT」をもってきたのは策士石月努がセットリストによって、オーディエンスの反応の違いを試す実験だったのかもしれない(笑)。
そして「黒ノ夜」の宴もたけなわ。セットリストは屈指のハード・ドライブチューン“DANCE DANCE DANCE”に突入する。この曲の核となるLEVINが創造する攻撃的なビートに合わせて、左右に大きくステップを踏みながらプレイをするSatoのパフォーマンスが印象的だ。石月が朋友である桜村の肩に腕を回して “DANCE DANCE DANCE!!!”と共にシャウトする。この演出ではない“バンドが感”が微笑ましい。会場は一気にピークを迎える。
続く「Shang-Hi-Baby」、「Re:BIRTH」と昨晩もプレイした石月努 with (K)NIGHtribeのスタンダードソングが続く。
そして本編最後は1日目の「白ノ夜」と同様にライブでの鉄板チューン「LOVELESS」だ。ステージ前方ギリギリまでせり出し“愛はきっと 隣の人にも感染していく”とオーディエンスに語りかけるように歌う石月。ステージに熱を残したまま、約1時間30分のステージを終え4人はステージを後にした。
そしてアンコールは【白盤】に収録されている「メロス」と「SWEET PAIN」。「メロス」のイントロがプレイされるやいなや、ステージが白く明転し「黒ノ夜」と「白ノ夜」は融け合って1つの夜となった。
鳴り止まない歓声に応えるかたちで、予定にないダブルアンコールは「365の奇跡」を披露し、この2daysのライブは完成したのだった。
「白ノ夜」、「黒ノ夜」と題された2つの夜。ライブを観るまでは完全に“黒”と“白”にセパレートしたステージになると予想していたが、2日目の「黒ノ夜」のアンコールで“白”く明転したステージで【白盤】収録の「メロス」がプレイされたように、石月にとっての“白”と“黒”の住み分けは、ライブを組み立てていく過程でのきっかけであり、オーディエンスに対する問いかけだったようだ。その証拠となる石月の【白盤】、【黒盤】リリース時のインタビューを最後に記しておこう。
「白か黒かなんて、見る立場によって変わるものですからね。今回、僕は白盤、黒盤と分けましたけれど、白盤に収録されている曲が本当に“白”で黒盤の曲が本当に“黒”なのかっていうところは聞いてくれる方に委ねたいなと思っているんです」。
そう、石月努は黒と白だけの世界の住人ではなく、無限段階グラデーションの価値観の中で生きているアナログ人間なのだ。
◆セットリスト◆
S.E[BLACK CAT]
01. FACES – Fake Genaration –
02. GAME
03. FAME69
04. 雨のち、君が咲く。
05. Echo
06. ヒカリへ
07. DROP
08. MY WAY
09. RUSTY EMOTION
10. ADDICT
11. DANCE DANCE DANCE
12. Shang-Hi-Baby
13. Re:BIRTH
14. LOVELESS
ENCORE1
En1. メロス
En2. SWEET PAIN
W.ENCORE
WEn1. 365の奇跡
(文・ぽっくん/写真・青木早霞(PROGRESS-M Co.,Ltd))
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【リリース情報】
●石月努 with(K)NIGHtribe『WHITE DISC 【白盤】』『BLACK DISC 【黒盤】』
2014年4月1日(火)発売
※石月努オフィシャルサイトでの限定販売
WHITE DISC 【白盤】(CD)URCL-1016 ¥1,428+税
[CD収録曲]
01. メロス
02. SWEET PAIN
03. 桜ノ蕾
04. 白孔雀の湖(instrumental)
05. メロス(voxless ver.)
06. SWEET PAIN(voxless ver.)
07. 桜ノ蕾(voxless ver.)
BLACK DISC 【黒盤】(CD)URCL-1017 ¥1,428+税
[CD収録曲]
01. FACES – Fake Genaration –
02. ADDICT
03. FAME69
04. BLACK CAT(instrumental)
05. FACES – Fake Genaration -(voxless ver.)
06. ADDICT(voxless ver.)
07. FAME69(voxless ver.)
【ライブ情報】
石月努 Acoustic Live 2014「夜会&茶」with 野村義男
8月16日(土) 渋谷duo music exchange
石月努 オフィシャルサイト http://www.tsutomuishizuki.com/