2011.09.25
凛として時雨@TOKYO DOME CITY HALL
凛として時雨 presents 「トキニ雨 #13 〜Tornado Edition〜」
出演:凛として時雨 GUEST:Chara
2009年夏以来、実に2年ぶりの開催となった、凛として時雨の自主企画イベント「トキニ雨」。13回目となる今回は、おなじみの東京のほか福岡、大阪にも足を伸ばし、初のツアー形式で行われた。この日の東京は秋風が心地よい陽気だったが、一歩場内に足を踏み入れると空気ががらりと変わり、開演前のざわめきとともにゆっくりと熱気が立ち上っているのを感じる。
定刻を少し過ぎた頃、待望の開演。「トキニ雨 #13」では毎公演ゲストが招かれており、この日はCharaが登場。345(Vocal & Bass)も大ファンだという彼女は、新曲も含めた全9曲を披露した。
電子音が鳴り響く中、舞台を覆っていた黒い幕がゆっくりと左右に開いていく。白い仄灯りにメンバーの姿が浮かび上がっている光景に、近未来的という言葉が脳裏に浮かんだ。
初めのナンバーは「a symmetry」。青く照らされた空間を打ち抜くようにして緑のレーザーが放たれ、TK(Vocal & Guitar)のハイトーンボイスがホールにこだまする。ストロボライトの逆光の中、アリーナでは早くも無数の拳が上げられているのが影絵のように見えた。
続く「テレキャスターの真実」では、かき鳴らされるイントロのギターに反応してフロアのボルテージがぐっと上昇。赤いライトが明滅し、ツインボーカルの掛け合いが切実さをもって迫ってくる。その歌声に応えるように暗がりでひしめきあうオーディエンスからは、まだ2曲目とは思えないほど音にのめり込んでいる様子が見て取れた。「COOL J 」でさらに加速していく音を目と耳と肌で感じながら、TKと345の姿が歌声と弦を武器に何かと戦っているかのようだと思う。
曲間で待ちわびたように次々とメンバーを呼ぶ声が上がった。TKの「凛として時雨です」というシンプルな挨拶に、観衆からは盛大な歓声と拍手が沸き起こる。次いで披露された「I was music」は、“いいよ おかしくなって”というリフレインが印象的な曲。その言葉どおりになっていくアリーナではダイバーの姿も見られ、熱病にうかされたような状態に。
勢いを保持したままキラーチューンの「DISCO FLIGHT」へと繋がると、冒頭のベースの1音でそれと気付いたファンが即座に反応する。ドラムスティックを回しながらのピエール中野の煽りにフロアはさらに沸き、シャウトに呼応するライティングに照らされたオーディエンスはロックな荒波と化していた。
345の透き通るような歌声から始まった「秋の気配のアルペジオ」で雰囲気が一変。赤やオレンジを基調とした照明に、黄色のスポットがくるりくるりとゆっくり回る。この時期の外の空気を想い起こしつつ、重なる2人の歌声にじっくり聴き入った。
「illusion is mine」では正確に刻まれるドラミングにのって、浮遊感のある345のボーカルが響きわたる。空間に溶けていくその声はまさに幻影のようで、ラストのサビで一気に鮮明に変化した様子に目が覚めるような感覚を味わった。
続く「Can you kill a secret?」から「Telecastic fake show」「感覚UFO」は文字通りのノンストップで展開。トップギアの轟音と、絡み合いながら突き刺さるように響く2人の歌に、フロアの熱気も頂点に達し最早渦巻いていたといっても過言ではないだろう。「感覚UFO」終盤、TKの絶叫と共に終始抑えめだった照明が全開に。視界が一瞬ホワイトアウトするほどの白い光がホール中を満たした。
「楽しいですね」というTKの言葉に、観衆はまたも拍手と歓声で大きく同意を示す。口数の少ないやりとりでもここまで空気があたたかになるのは、音を奏でることやそれに全身で反応することで、曲の最中に感情のやり取りがされているからかもしれない。345が「今日は来てくださって本当にありがとうございました。凛として時雨でした」とMCを締めくくると、ラストの「傍観」へ。
薄明るい場内に叙情的なギターが響き、TKが呟くように歌い始める。ベースやスネアの音も独り言のように紡がれている中で、繰り返される“僕は知らない 僕は見えない 僕は汚い 僕は消えたい”というフレーズ。呟きはいつしか叫びになり、悲痛さは伴わずにただただ胸に迫ってくる。オレンジ色の照明にくっきりと浮かぶ3人のシルエットは、叩き狂い、弾き狂っていた。楽器を置いても音は止まず、残響の鳴るステージを後にするメンバー——そして訪れた無音の闇。誰もいない舞台に、“傍観”者として残されたオーディエンスから惜しみない拍手が送られた。
◆凛として時雨 セットリスト◆
01.a symmetry
02.テレキャスターの真実
03.COOL J
04.I was music
05.DISCO FLIGHT
06.秋の気配のアルペジオ
07.illusion is mine
08.Can you kill a secret?
09.Telecastic fake show
10.感覚UFO
11.傍観