2011.5.15
D’ERLANGER@SHIBUYA-AX
D’ERLANGER LIVE2011 “deep inside of the Moon”
昨年末、中野サンプラザで行われた「a Fabulous Thing in Rose」ツアーファイナルから、実に5か月振りとなるD’ERLANGERのライヴがSHIBUYA-AXで行われた。
会場に入り、真っ先に視界に飛び込んできたのはステージの後方、墨色の虚空に浮かぶ巨大な紅く満ちた月。畏怖の念を禁じえない、しかしある種の抗いがたい美しさをにじませたその姿に今回のライヴに冠された「deep inside of the Moon」というタイトルを重ね合わせる。
ほの暗い月の光がふいに明るくなり、まるでその背景とシンクロするかのような赤いフリルシャツに黒の燕尾ジャケットを身に纏ったkyo、シックなダークトーンの衣装を纏ったCIPHER、SEELA、Tetsuが次々に姿を現すと、2階席まで埋め尽くしたオーディエンスは歓喜の叫びで彼らを迎え入れ、Tetsuはそれに呼応するようにシンバルを打ち鳴らした。
高まりゆく歓声を打ち破ったのは「Sensual Dance」。月は青白くその表情を変え、官能的なD’ERLANGERの世界が遂に幕を開けた。
「待たせたな東京! D’ERLANGERだー!」
久々に耳にするkyoのこの言葉を、オーディエンスはどれほど待ちわびたことだろう。その期待を裏切らず、「TABOO」をこの上なく情熱的に歌い上げ、「十三段目の陶酔」では滑らかにフレットを撫でるSEELAのベースで魅せると、「BABY I WANT YOU」へと息つく間もなく駆け抜ける。
「久しぶりだね、会いたかったよ。たっぷりとD’ERLANGERを感じていってください」
そして奏でられた「Blanc -chères roses-」。甘く鋭く軽やかに刻まれるCIPHERのギターが徐々に激しさを増し、まるで警告のようにライトが明滅する「月光」、そしてメロディアスなビートを刻むTetsuのタムに心奪われる「影舞」へと展開していく。さらには「Singe et Insecte」から、赤いライトが雨のように降り注ぐ中「Romeo & Juliet」を切なく激しく歌い上げ「柘榴」へ…
この日のライヴのセットリストは目まぐるしく、そして実に移り気にその表情を変えるものだった。それはまるで捉えどころのない月のようで、ただただ圧倒され、翻弄される。
「Angelic Poetry」を歌い上げたkyoは客席に深々と一礼をし、そのエレガントな仕草に目を奪われた途端、空気をがらりと変えダンサブルな「Masquerade」「XXX for YOU」で本編を終えた。
…と思いきや、kyoがステージ袖に姿を消すと、CIPHERのギターをきっかけに突如楽器隊によるセッションがスタート! SEELAが流れるようなベースラインで彩りを加え、Tetsuが重厚なリズムで応戦。音と音が重なりあい生まれるその迫力に会場は息をのみ、惜しみない賛美の拍手を送ったのだった。
鳴りやまぬアンコールに応え、胸に「hope」と書かれたチャリティTシャツで姿を現したメンバーが奏でたアンコールの選曲は意外なものだった。
幕開けは「LOVE / HATE」。ほの暗いステージに崩れ落ちるように膝をつき、相反する感情を絞り出すかのように狂おしく歌い上げると、アンニュイな表情を見せる「Love me to DEATH」へ。そして「dummy blue」で激しく刺激的にスリリングなラストを飾った。
2007年の復活以降の楽曲で構成された全17曲。まるで月の引力がわれわれの体内水分を引き寄せるような、抗いがたい力に引き付けられるライヴだった。長きにわたるバンド活動の中で培われた絶対的な技術とそこに今なお息づく音への無邪気な好奇心。陰陽明暗を自由に行き来しながら描き出すその音世界が、観る者の心を奪い、離さないのだ。
Kyoがステージを去る間際に告げた「7月に会おう!」という言葉どおり、7月3日、赤坂BLITZで彼らのライヴが行われることが決定した。再び、彼らの音の引力に翻弄されてみてはいかがだろう。
◆セットリスト◆
01.Sensual Dance
02.デラシネ
03.TABOO
04.十三段目の陶酔
05.BABY I WANT YOU
06. Blanc -chères roses-
07.月光
08.影舞
09.Shinge et Insecte
10.Romeo & Juliet
11.柘榴
12.Angelic Poetry
13.Masquerade
14.XXX for YOU EN
15.LOVE / HATE
16.Love me to Death
17.dummy blue
(文・後藤るつ子)