PIERROT、8年ぶりの復活。PIERROTをリスペクトするアーティストの単独インタビュー8人目は、MERRYのガラ(Vo)。近年、キリトと交流を深めるようになった彼は、自らキリトを中心に考えたPIERROTへの思いを語ってくれた。ライブを目前に控えた今、「PIERROTが復活するっていうことはでかいこと」という彼の言葉は、全ての人の高まる思いと共鳴するのではないだろうか。
◆PIERROTっていうバンドの世界観はあの人の声が持っている
――PIERROTのライブ前のアーティスト単独インタビューは、ガラさんがトリです。
ガラ:いつか、いつかと待っていました。
――PIERROTとの出会いは?
ガラ:僕が最初に組んだバンドが、PIERROTがアルバム『パンドラの匣』を出した事務所と一緒だったので、その事務所でいろいろ聴かせてもらっていました。最初は、『パンドラの匣』を聴いたことがきっかけだったと思います。「SEPIA」が好きでしたね。
――『パンドラの匣』を聴いてみていかがでしたか?
ガラ:あんまりこういう変速リズムのバンドって聴いたことがなかったので、とても新鮮でした。楽曲も、キリトさんの声も中毒性のある感じだったので、僕はすごく好きで聴いていました。
――CDは買いましたか?
ガラ:僕が初めて買ったのはシングル『Screen』でしたね。「screen1 トリカゴ」が大好きなんですよ。PIERROTは、結構買っていました。アルバム『FINALE』や、ライブDVDも買いましたね。
――カラオケで歌ったことはありますか?
ガラ:ありますね。「screen1 トリカゴ」も歌ったことありますし、「CREATURE」も歌ったことがあります。
――PIERROTが活動していた時代からバンドをやっていたガラさんにとって、PIERROTはどんな存在でしたか?
ガラ:当時から、もう他とは違うというか。自分達でやっていたのか、周りがそう見せていたのか、時代が作っていたのかわからないですけど、やっぱり違うところにいましたよね。活動の仕方もそうですし、あんまり周りと絡んでない感じもありましたし。異端なイメージはすごくありました。
――ずばり聞きます。5人のメンバーの中で誰が好きですか?
ガラ:ぶっちゃけ、みんなめっちゃ怖かったので、好きとかそんな感情は無かったです。僕はバンドのローディーもしていたんですけど、イベントでPIERROTが一緒になった時も、もうツンとした感じで、寡黙なイメージで、こりゃ近寄っちゃダメだなってオーラが出ていました。でも、やっぱりキリトさんは好きですね。
――キリトさんの好きなところは?
ガラ:自分もヴォーカルなので、やっぱり一番目がいきます。僕から見ると、完璧な人間ですね。魅せ方もそうですし、いろいろ考えて全部自分でやって、ちゃんと頭の中で起承転結の流れも考えてやっている感じがします。キリトさんとは、ちょくちょく会わせてもらったりしていて、人間的な部分で言うと、怖そうに見えるんですけど、めちゃくちゃ優しい。最近、僕も会話でキリトさんに突っ込んだりしても、笑いながら返してくれますし、イメージで判断するのはよくないなと思いました。PIERROTは歌詞もそうですし、世界観もちょっと暗いじゃないですか。そういう意味ではすごく怖いっていうイメージが強かったんです。雑誌とかでもキリトさんって結構毒を吐いていたので、この人は怖いっていうイメージを自分の中で作っちゃっていたんですよね。でも、実はすごく優しくて繊細な人。たぶん不安なんじゃないですかね。自分もそうなんですけど、これでいいのかな? とか、不安があるから、全部完璧に仕上げる人なのかなと思います。
――ヴォーカリストのガラさんから見て、キリトさんのヴォーカルはどう思いますか?
ガラ:PIERROTっていうバンドの世界観はあの人の声が持っているんじゃないですかね。あの声質というか。声って俺も大事だと思うので、あの声を聴いたら「あ、PIERROTだ!」ってわかるような声っていうんですかね。それってすごく重要だと思います。
――現場でPIERROTのライブを近くで見ていてどうでしたか?
ガラ:ライブは袖から、ちょこっと観たことはありますけど、最初から最後まで、正面からPIERROTのライブを観たことがないんですよ。あとは、DVDとかでしか観たことがないんで。
――ライブ映像を観てどう思いましたか?
ガラ:楽曲がとても良かったので、そこが一番光っていました。完成されていましたし、ファンの感じを見ていてもすごく一体感もあって、PIERROTは一つの国みたいになっていましたね。
――PIERROTの歴史で一番思い出に残っているシーンは?
ガラ:解散発表をした時ですね。あの時に、MERRYは『FOOL’S MATE』という雑誌で表紙の予定だったんですけど、それがひっくり返りそうになったんですよ。写真も撮って、全部できあがっていたのに、入稿の前日にPIERROTの解散発表があって、えらいことだってなって、「すみません、表紙、無くなります」って連絡がきました。
――PIERROTの解散を知ってどう思いましたか?
ガラ:いや、もうその時はそれより、「俺らの表紙…」って。久々の表紙なのに、PIERROTが解散発表をしたっていうので、PIERROTを表紙に持っていくとか、PIERROTとMERRYを半分ずつにするとか、いろんな案がありました(笑)。結局、ひっくり返らなかったんですけど。僕らが『FOOL’S MATE』の表紙を飾れる時に、そういうことがあったので、すごくその解散を覚えているんですよね。「なんで今なんだろう?」と思って。前触れも何もなく、突然コメントが出て、うわーと思いました。でも、その前から、PIERROTって、いつどうなってしまうかわかんないっていう、何かを持っていましたからね。バンドっていつか終わってしまうものかもしれないですけど、それが今日なのか明日なのかわからないみたいな、何かピリピリした感じはメンバーの中にもあったと思います。
――PIERROTとの出会いは、ガラさんの人生にどんな影響を与えましたか?
ガラ:PIERROTっていうと、僕は世界観が強いバンドだなといつも思っていました。キリトさんがフロントに立って、どうやってバンドを引っ張ってきたかとか、目のメイクとかも、自分がアイコンだからっていうのでずっとやっていたんだと思いますけど、もしも僕がそれをやっていたらどう思うんだろうとか、考えましたね。本当に自覚を持って、フロントマン、PIERROTのキリトとして立っていたんだろうなと。そういうところは、刺激を受けましたね。
――もしも、MERRYで1曲カバーするとしたら、どの曲をやりますか?
ガラ:「クリア・スカイ」なんていいんじゃないですか。僕は歌ものが好きですからね。淡々としているんですけど、キャッチーな歌ものですし。MERRYに合いそうな気がするなぁ。
◆最新のPIERROTが観たいですね
――2014年4月12日18時、発表の瞬間はどこにいましたか?
ガラ:ツアーの初日で、熊谷でライブをしていました。この日のライブのMCで、「今日はPIERROTが発表をしているから、何を言っても何をしても、話題にならないから、好きなようにみんなやろうぜ!」って言っちゃいました。「いくらインパクトのあることをやっても、全部、PIERROTの話題で消されるから、無意味だから好きなようにやろう!」って。
――ファンの反応はいかがでしたか?
ガラ:「イエーイ!」ってなっていましたよ(笑)。
――発表を知ってどう思いましたか?
ガラ:「キリトさんどうしたんだろう?」と思いました。一番復活しないであろうと、巷でも言われていましたし、自分でもそう思っていたので。今だからできるのか、やっとそのタイミングがキリトさんの中できたのかわからないですけど、「なぜ、今なんだろう?」って思いましたね。何かあったのかな…。まだキリトさんに聞いたことはないんですけど。解散したバンドがもう一回集まるのって、大変なことだと思います。5人のモチベーションっていうか、「よし、やろう」というのが合わなきゃできないですから。それって、すごいなぁと思いますけどね。何かがあって解散しているわけで、それを乗り越えてまたやるって大変なことだと思うので。それだけPIERROTっていうものはでかいものですし、何をやっていても絶対付いてくるものでしょうから。自分では言わなくても、絶対、元PIERROTの人だって言われるだろうし、一生そうだと思います。それぐらいでかいバンドなんです。
――今、復活ライブに思うことは?
ガラ:会場がさいたまスーパーアリーナじゃないですか。自分達のホームでやるというところに、男気というか、PIERROTの熱さを感じます。PIERROTは音とかは冷たいバンドなんですけど、実は人間味のある人達ですよね。ただのお祭ライブには絶対しないと思いますし、最新のPIERROTが観たいですね。涙とかが似合わないバンドですから、ガツッとやって欲しいです。
――復活ライブで聴きたいこの1曲は?
ガラ:僕は、「screen1 トリカゴ」、「CREATURE」が好きなんで、どっちかを聴きたいですね。あ、シングル『-CREATURES-』は人に貸したまま、返ってきてないな…。
――PIERROTの新しいアーティスト写真はご覧になりましたか?
ガラ:キリトさんの目のあれがないですよね。
――ライブ当日まで秘密ということなんでしょうか…。10月24日、25日のライブは観に行けそうですか? MERRYの他のメンバーはいかがですか?
ガラ:はい、今のところは。結生くんが結構好きだったと思います。ギターシンセを使っていたぐらいですから。
――PIERROTの凄さとはなんでしょうね?
ガラ:個々のキャラクターがしっかりしているってことじゃないですかね。でも、一番は楽曲の良さ。誰もやっていなかった曲をやっていましたから。PIERROTっていうバンド名にちゃんと合った曲といいますか、世界観が合っている気がするんですよね。
――ガラさんにとってPIERROTとは? 一言で表すなら?
ガラ:「毒」じゃないですか。それをずっと食べていると、もう毒がなきゃ生きていけないみたいな。毒を食うために、皿まで食うじゃないですけど。その中毒性がファンを魅了して、みんな付いてきているんだと思います。歌詞にしても声にしても、やっぱりキリトさんって中毒性があるなぁと思いますね。
◆意味のない市場じゃなくて、意味のあるものしか詰まっていない
――では、MERRYのお話を伺っていきましょう。前作『Beautiful Freaks』以来、3年5ヶ月ぶりとなる、ニューアルバム『NOnsense MARKet』の発売が、12月24日に決まりました。現在制作はどこまで進んでいますか?
ガラ:楽器の録りはほとんど終わっていて、歌がまだ結構残っていますね。
――どんなアルバムになりそうですか?
ガラ:3年5ヶ月ぶりって、僕らもこんなに空けたことがないんですよね。「群青」から「ZERO -ゼロ-」までのシングル曲も入っているんですけど、昔出していた曲って、ちょっと古くなってしまったりもするので、それを最新の一枚に収めるために、型にはまらずに、こういう曲を作ろうぜって考えずにみんなで曲出しをして、おもしろい曲をどんどん入れていこうって。核になる曲はあるので、その核の脇を固めるんじゃなくて、そこからはみ出すぐらいのおもしろい曲を作ろうっていう感じになっています。『NOnsense MARKet』っていうタイトルもそうですけど、ゴチャゴチャしている、なんでも売っていそうな市場みたいなアルバムになっているとは思います。MERRYがもともと持っていた“NONSENSE”っていうテーマもあるんですけど、今の時代、モノもいっぱい溢れていて、本当のところが見えていなくて、みんな、こんな馬鹿げた時代に踊らされているだけだよ、みたいな裏テーマもあります。本当に伝えたいことや、本当のことはこのアルバムの中に入っているっていう。意味のない市場じゃなくて、意味のあるものしか詰まっていないっていう逆説の意味もあるんです。
――歌詞は、だいぶ苦労したみたいですけど。
ガラ:そうですね。今回、歌詞には注目して欲しいですね。自分の歌詞のパターンっていうのがあるんですけど、そういうところも一回崩してみたいと思いました。自分がただ表現したいものだけじゃなくて、考えさせたり、巻き込めたりする内容だったり、普段使わないような言葉や、ストレートに思うことを出しちゃっている歌詞もあります。MERRYとしての思いを背負っているガラはもちろん、MERRYのガラじゃなくて、一人の男としての言葉もあるので、いろんなガラが見られるんじゃないかなと思っています。
――テツさんは参加しているんですよね。
ガラ:参加しています。実家がある名古屋のスタジオで弾いていて。音を聴いた感じ、全然問題ないですね。今回テツさんの曲が入ります。最初の頃、曲出しをしていて、テツさんから出てくる曲が、暗い曲ばかりで。聴いていてこっちが切なくなるような曲だったので、「今、テツさんは療養していて、いろんな葛藤があって、こういう曲ができているんだな」って思いました。曲って、今自分が置かれている環境とかその思いがすごく出るなって感じたんですよ。でもそれが、ただ暗いだけじゃなくて、こういう曲はテツさんにしか書けないなと思って。その中から、「ここの部分は使おうよ」とか、テツさんといろいろ話をしました。テツさんの曲は、ツアーでやっていた曲も入るんですけど、新曲があります。勢いがある曲で、「テツさん、今ライブやりてぇんだな」とか、僕はその曲でテツさんの今の状況がわかるような気がしました。
――11月7日からALBUM SHOW CASE TOUR「暗闇にピンク」が始まります。どんなライブになりそうでしょうか?
ガラ:自分達がまず楽しまなきゃいけないですし、観に来てくれる人達を楽しませたいという気持ちがMERRYの中ですごく大きいので、一緒にライブを作りあげていこうという思いがあります。毎回、色のテーマが入っているので、その色に合った演出や曲をやって、毎回違うものを魅せたいと思います。絶対同じライブはないんで。こういう時代だからこそ、僕はライブがおもしろかったり、また観に来たいっていうバンドしか、今後残っていかないんじゃないかなと思うんです。もちろん自分達のやりたいこととか、観せたいものっていうのは根底にあるんですけど、いかにいろんな人を巻き込んでいけるかとか、少しでも興味を持ってもらえるかっていうことを、最近すごく考えています。自分だったらこれ観たいな、このライブに行ってみたいなと思わせる、PIERROTじゃないですけど、何かしら考えたり、これはどういうライブなんだろう? って思わせるような提示はこっちからしていきたいですね。
――そして、2015年1月2日(金)“Grateful Year 2015 ヴァニラスカイアバンギャルド”が渋谷公会堂で行われます。意気込みをお願いします。
ガラ:正月からライブをやるって、不安でもあるんですよ。ここでコケたら、気持ち的に1年ダメになっちゃうんで。今回は、本当にいつもと違うことをやりたいというのもありますし、自分らでも楽しみたいと思ったので、「よし! もう正月からライブやろうよ」となりました。“Grateful Year”っていうのを掲げているんですけど、ここからが僕らの幕開けで、2015年を素晴らしき年にするために、ガツッとがんばりたいなと思っています。
――最後に、復活ライブを控えたPIERROTのメンバーにメッセージをお願いします。
ガラ:いろいろなことがあったと思うんですけど、PIERROTとしてステージにこの5人が帰ってくるっていうのは、バンドをやっている僕も楽しみですし、バンド業界にも何かしらのメッセージだと思います。PIERROTが復活するっていうことはでかいことだと思うので、僕も負けません。逆に、今のバンド業界は、PIERROTが復活できる隙間を与えてしまっていると思うので、「MERRYがいるから、“PIERROT RESPECT”に出てくれた人達がいるから、任せた」って言ってもらえるように、僕らもがんばります。
(文・武村貴世子/編集・金多賀歩美)
※本文中に登場したPIERROTの楽曲・作品(発売日順)
- 1996.7.21
- Indies 1st Album『パンドラの匣』
-
01. 自殺の理由
02. 青い空の下…
03. 利己的な遺伝子
04. KEY WORD
05. ドラキュラ
06. 満月に照らされた最後の言葉
07. Far East~大陸に向かって~
08. メギドの丘
09. SEPIA
10. 「天と地」と「0と1」と
- 1998.4.22
- Indies 1st Single『Screen』
-
01. screen1 トリカゴ
02. screen2 VIRTUAL AGE
03. screen3 残酷な夜
- 1998.9.10
- Major 1st Single『クリア・スカイ』
-
01. クリア・スカイ
02. 蜘蛛の意図
- 1999.7.7
- Major 1st Album『FINALE』
-
01. FINALE
02. ハルカ…
03. CREATIVE MASTER
04. カナタヘ…(Album Mix)
05. Eco=System
06. MAGNET HOLIC
07. MAD SKY -鋼鉄の救世主-
08. SACRED
09. ICAROSS
10. ラストレター
11. クリア・スカイ(Album Version)
12. CHILD
13. Newborn Baby
- 1999.12.22
- Major 5th Single『-CREATURES-』
-
01. CREATURE
02. GENOME CONTROL
03. パウダースノウ
MERRY
<プロフィール>
ガラ(Vo)、結生(G)、健一(G)、テツ(B)、ネロ(Dr)の5人によって2001年10月に結成されたロックバンド。パンクから歌謡曲まで様々なジャンルを大胆にクロスオーバーさせたサウンドでたちまち話題に。哀愁とヘヴィネスの融合による唯一無二の“レトロック”を進化させながら、これまでに7枚のオリジナルアルバムを発表。2014年11月7日よりALBUM SHOWCASE TOUR「暗闇にピンク」を開催し、12月24日には3年5ヶ月ぶりとなるニューアルバム『NOnsense MARKet』をリリースする。また、2015年1月2日には渋谷公会堂公演が決定している。
■オフィシャルサイト
http://merryweb.jp/
『NOnsense MARKet』
2014年12月24日(水)発売
(FIREWALL DIV.)
【ライブ情報】
●ALBUM SHOWCASE TOUR「暗闇にピンク」
■笑う闇、黒のタブー
11月7日(金)Birth Shinjuku(※CORE限定)
■幻想狂気「黄色い部屋」
11月10日(月)渋谷CLUB QUATTRO
■真っ赤な楽園
11月15日(土)名古屋CLUB QUATTRO
■白昼夢…盲目のロマンス
11月16日(日)名古屋M.I.D(※CORE限定)
■紫雨に咲く夢、パラノイア
11月24日(月・祝)心斎橋CLUB DROP(※CORE限定)
■妖しく光るピンク色の憂鬱
11月25日(火)梅田CLUB QUATTRO
●Grateful Year 2015「ヴァニラスカイアバンギャルド」
2015年1月2日(金)渋谷公会堂