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16年ぶりのメジャーデビューを果たすwyseが完成させた重要作品『Breathe』。“初めての7年目”、そしてその先へ――

1999年2月14日に結成したwyseは、6年後の2005年2月13日、渋谷公会堂公演をもって解散。6年間の沈黙の後、2011年2月14日に再結成し、その後6年間活動を続けてきた彼らは、2017年2月12日に行われたワンマンライブにて所属事務所からの独立を発表した。そこから約半年後の8月23日、ついにリリースされるニューアルバム『Breathe』で実に約16年ぶりとなるメジャーデビューを果たし、その最新作を引っ提げ解散以来約13年ぶりの全国ツアーを開催する。これまで「6年」という数字に捉われていた彼らが“初めての7年目”に突入し、一つの物語を完結させようとしている今。Vif初登場となるwyseの4人によるスペシャルロングインタビューをお届けする。

◆6年やったところでまた解散しそうで怖かった(TAKUMA)

TAKUMA

――Vif初登場のバンド恒例、隣のメンバー紹介をお願いします。

MORI:メンバー間でTAKUMAと俺が一番年が離れていて、僕が一番上で彼が一番下なんですけど、出会った時からあまり年の差を感じなくて、未来を見せてくれるような話ぶりをするやつです。一度解散して再結成してもそこが変わらない根っこの部分で、さらに色々と経験を積んで新しい印象もくれたり、wyseのエンジンというか、何かを発信するアンテナを持った、そんなやつです。

TAKUMA:HIROを紹介します。一番付き合いが長くて、16歳くらいの時からもう約20年一緒にいます。wyseのこともそれ以外のことも色々と見てきた中で、お互いが成長して、逆に言うと一番衝突をしてきた仲でもある。この年齢になるまでに色々とあったので、今はあまり話をし合わなくても大体同じ方向を向いて進んでいけるような信頼関係があります。wyseを知っている方からすると、HIROという人間は面白いし明るくて、場の空気を作るタイプだと思いますけど、その反面すごく臆病だったりもします。強さも増えた分、臆病さ、傷つく面もあるというのは年々広がったなと。だからこそ放ったらかさずに、ケアしながらやっていかなきゃいけないというか。すごく繊細な人間ですね。

HIRO:月森はwyseのヴォーカリストとしてフロントに立っている人で、良い声で良い歌を歌う、そこは本当にすごいなと思うんですけど、良い意味でも悪い意味でもルーズなところが前面に押し出されているので…天は二物を与えない(笑)。

月森:(笑)

HIRO:君は歌さえ歌っていればいいんだよっていうくらい歌の才能には恵まれているので、そこは羨ましくもあり、彼にしかできないことだと思うので、一緒にバンドをやっているのかなと。もし彼が良い歌を歌わなかったら、絶対に付き合ってはいないと思うんですけど(笑)。歌は本当に素晴らしいので、そこだけは世の中に伝えていきたいです。

TAKUMA:HIROの隣で良かったな。俺の隣だったらボッコボコやで(笑)。

全員:(笑)

月森:MORIは高校の一つ先輩なので一番付き合いが長いんですけど、作曲も喋ることも、あとはwyseのデザイン関係も担当しているので、非常にアーティスティックな人やなと思っています。

全員:…(沈黙)

TAKUMA:席順が悪かったな(笑)。

――(笑)。99年の結成から2005年の解散、解散から2011年の再結成、そして再結成から今回の再メジャーデビューと、全て6年周期になっていますが、再結成から丸6年という今年に何かしようという思いは以前からあったのでしょうか?

TAKUMA:結果的にその数字で括られていたので、6年やったところでまた解散しそうで怖かったんです。だからそれを超えられたら嬉しいし、もっと違うところにいけると信じる気持ちの方が大きくて。人付き合いも波があるのと一緒で、6年間バンドをやると何かがあるのかなと思って、僕らもこのままでいいのかなとか、未来に向かうためにどうするかということを各々が考えるようになったんだと思います。最初から6年の時にはこういうことをやろうというのは、全くなかったです。

――満6年を迎えるにあたって、皆さんで話し合いは行ったんですか?

TAKUMA:このままだと壊れるとわかっていたので、どうする?という感じでした。解散するかどうするかというところまで来たんですよ。ダラダラやるんだったら、それって解散に近いと思うので、壊れていくということ。そうじゃないんだったら、もう1回勝負したくて。去年シングルを出したんですけど、その作品に対してどれだけのアクションを起こせたかというところで、あまり結果を見出せなかったんです。自分たちが思い描いていたものに届かなかったから、状況を変えるしかないという選択肢になりました。

――それが独立という選択に結びついていったと。

TAKUMA:遅かれ早かれ、前から考えていたことではあったので。色々なことがあって、会社に疑問を抱いていたんです。そうすると、ライブに対しても不満というか「?」が出てくるんですよ。そうなってくると負の連鎖なんですよね。で、シングルを出した時に「あ、これはもうダメだな」という思いがメンバー皆の中にあったと思います。期待してくれているファンの子に対して、こんな状況と僕らを見せていることがすごく悔しかったので、「道を変える?」という話をしたら皆一緒の思いでした。どうなるかわからんけど、やってみてあかんかったらあかんかったでいいやと。ただ、今よりも絶対良くなるように頑張れるんじゃないかと。

HIRO:普段はメンバー4人だけで話すことってないんですよ。でも、その時だけは珍しく皆で集まって話をしましたね。その中で、答えは一緒だったっていう。

――今年2月のライブでの独立発表から約半年経ちました。

TAKUMA:一つ言えるのは、会社を離れたことで繋がる人が逆に増えました。それなりの年数やってきたので、新たな出会いなんてもうほぼないだろうと思っていたんですよ。今日取材してもらっていますけど、こういうことってもう起こらないだろうなと思っていたんです。でも自分たちで進めば進むほど、色々な人が手を差し伸べてくれて。そういう人たちと繋がり合えたことは、ものすごく大きい意味を持つのかなと思いますね。

◆これからwyseの新しい王道を作ってくれる曲(MORI)

MORI

――『Breathe』制作にあたって、7年目ということや再メジャーデビューへの意識はありましたか?

MORI:再結成して音源をいくつか出しているんですけど、フルアルバム自体が約5年ぶりで久々の作品なので、今の自分たちが経験してきたことや見える未来を形にしたいなというところがあって。今僕らが届けたいものを凝縮した作品になっていると思うし、それが結果的にもう一度メジャーデビューという形で世に出せるというのが、色々な人に聴いてもらえる環境で良かったなと。関わる人が変わって、僕らのモチベーションが変わるだけで、同じ曲を録っても全く変わってくると思うんです。そういう意味でも、もう一度メジャーデビューするというのは、僕らにとって十二分なことだなと。

――このタイトルに行き着いたのはどのようなところから?

TAKUMA:呼吸する、息吹ですよね。どう取るかは受け手次第ではありますけど、wyseはずっと続いてきたということや、今現在の自分たちがここにあればいいという思いですね。

――1曲目はアルバムの印象を作る重要な部分でもありますが、「Open Your Eye’s」を1曲目にしたのはどのような意図があるのでしょうか。

TAKUMA:アルバムやミニアルバムって一つの物語で、映画や本みたいなものなんですよね。なので、どういうスタートかというところにロマンがあるし、意味合いがあると思っていて。今回は音のアプローチはもちろんですけど、自分たちの思いと歌詞のメッセージ性がいかにリンクするかというのが大事だったんです。今の僕たちを表現する言葉でもあるし、独立を発表してから今まで進んできたというタイミングの中で、1曲目はこれしかないと全員一致で作りました。

――今作のリード曲は「Heart」と「Glorious Story」の2曲ということでいいのでしょうか?

TAKUMA:そうなっていきましたね。「Heart」はメロディが強くて、印象付くような言葉が乗っているというところで、推したい曲になっていったと思います。「Glorious Story」はまた方向が違いますけど、サビが強くてキャッチーという部分が他より抜けているかなと。でも、リードを狙ったわけではなく、出てきた曲の中で結果的にそうなったという感じかな。

――今作中、wyseの王道だなと思う曲は?

月森:昨日リハでやったからかもしれないけど「Heart」かな。まだ他の曲は合わせてないので(笑)。

TAKUMA:それ、合わせたら変わるやん(笑)。

月森:変わるかもしれない(笑)。だってさ、実際「Heart」を合わせたらカッコいいと思ったもん! 何回も「もう1回やりたい!」って思ったもん!

TAKUMA:ですって。じゃあ月森は「Heart」な。

HIRO:「wyseってどんなジャンルなの?」と聞かれて昔から言い続けているのが、特にこだわっている部分はなくて、良いと思ったものは素直にやるし、ハードなものはよりハードに、ポップなものはよりポップにみたいな極端なことをやってきているので、振り幅は結構大きいバンドだと思います。なので、僕らがやっていることがそのまま“wyse”っていうジャンルだよね、という風になれたらいいなと思ってずっとやってきたんです。今作は、よりそれが高まったものなのかなと。振り幅が大きい曲が集まっているし、かといってwyseっぽくない曲はなくて全部がwyseらしいので、王道と言われると難しいんですけど、色々なプロモーション関連で考えると…

TAKUMA:最後そこ(笑)!?

月森:今までの何やねん(笑)!

MORI:これが独立ってやつ(笑)。

HIRO:だから結局その2曲ですよね(笑)。その中から絞り込むとしたら…、まぁ僕も「Heart」。

全員:(爆笑)

TAKUMA:要は、二人とも「Heart」。俺ら、空気読んで喋らなあかんやん(笑)。

MORI:すごく難しいですけど、「Heart」みたいなロックナンバーだったり、「With…」や「RinNe」みたいなバラードだったり、wyseの王道って聴き手によって色々で。だから僕が思うのは、新しいエッセンス以外のものは基本的にみんな王道かなっていう。「1/2」や「in the Moonlight」は僕の中では新鮮で、それ以外だと過去に無料配布している曲が3曲(「Vanilla Sky」「RinNe」「Primal」)あって、「Vanilla Sky」(2017年2月12日wyse Live 2017『Unexisted Stage』@吉祥寺 CLUB SEATAにて配布)は、最初に聴いた時はwyseの新要素という感覚だったんですけど、そこから半年経って、もう僕の中にスッと入ってきていて。だから、ある種、これから新しい王道を作ってくれる曲かなと思っています。アルバムとして一気に全曲聴いてもらえるテンション感で曲が繋がっていくべきだと思っていて、そういう意味では1曲目で神妙に聞き耳を立てているところに、2曲目「Vanilla Sky」がその先を広げてくれるなと。ということで、期待を込めて「Vanilla Sky」にしておきます(笑)。

TAKUMA:外しにきたな(笑)。ずっと応援してくれている人は、wyseというカテゴリーが大きく4つに分かれると思うんですよ。まず「めっちゃロック」と言う子と、そうじゃない子が絶対的に分かれていて。だからリクエストを募るとバラバラになるんです。「Heart」みたいな曲が王道という人もいれば、「Glorious Story」みたいに明るくて柔らかい曲が王道という人もいるし、「With…」みたいにちゃんと聴かせられるメロウなバラードだったり、「Vanilla Sky」みたいに小説を書いているような曲が好きという人もいる。

MORI:お前、どっちに行くんや(笑)。

TAKUMA:難しいですねぇ…。個人的には「Glorious Story」は結婚する友人に対しての気持ちを込めて書いた曲でもあって。僕らって幸せを描いたり反映させた曲は今までなかったので、逆にこれが未来に繋がったり、これからファンに対して伝えられるようなシーンもあるのかなと思える…、ここは1回「Glorious Story」にしておきます(笑)。

月森:1回(笑)。

――MV曲がようやく出ました(笑)。

TAKUMA:MVは「Heart」でもよかったんですけどね。「With…」(2000年9月リリースのミニアルバム表題曲)は、今回のメジャーデビューで、もしかしたら昔聴いていて今活動していることを知らない人にも聴いてもらえるチャンスがあるかもしれないと思って収録したんです。そういう意味では「With…」がMVになっても間違いではなかった。僕らが上京した時の曲なんですけど、あの曲があったからこそ、色々な人が聴いてくれてメディアに広がるきっかけになったんです。だから、アッパーなシングル曲よりも「With…」と言う人は多い可能性はあります。当時もミドルが多かったんですよね。それがどんどん変わっていきました。