sukekiyo

sukekiyo

sukekiyoが完成させた初のシングル『ANIMA』。「魂」「命」を意味するタイトルの裏に滲む彼らの音楽の本質とは――

これまでにフルアルバム『IMMORTALIS』とミニアルバム『VITIUM』を世に放ち、深みと歪みが彩る唯一無二の音楽で、その確固たる世界観を確立させてきたsukekiyo。今回、彼らが完成させた初のシングル『ANIMA』にも、その色を強く感じることができる。さらには7月17日に行われるsukekiyo 二〇一六年公演「裸体と遊具、泥芝居に讃歌の詩」-漆黒の儀-と名付けられた、かつてない長いライブにも期待が高まるばかりだ。彼らの最新作、そしてライブについて、京(Vo)とYUCHI(B)にたっぷりと語ってもらった。

◆いろんな色が入っているのに落ち着いていて、それでいて艶めかしい(京)

京

――今回のインタビューは、早起きの京さんらしい早い時間にスタートです。

京:今日は5時に起きました。

――早いですね。バンドマンでこんなに早起きをする人は珍しいのでは。

京:でも、最近は夜に飲み歩いているバンドマンの方が少ないんですよ。そういうのは古いタイプのバンドマンで、最近の若い子たちはライブが終わったらすぐメンバーとスタッフだけでご飯を食べて帰りますからね。そのせいで上下関係が甘くなったりもしているんですけど。

――知らないうちに世のバンドマンの生活サイクルが変化していたようで…。ところで、前回のインタビューで、京さんはいつも朝6時半~7時頃に歌録りをしていると言っていましたが。

京:前はそうでしたね。最近は朝9時~12時とか、13時ぐらいまでに録っています。昼に仕事が終わったら1日がめっちゃ長くて、オフの日みたいに何でもできるじゃないですか。これが結構いいんですよね。朝のほうがパワーが出るし、集中力もあるし。

――午後から動き始めると、寝坊した休日のダメな感じになりますよね。

京:そう! あれが嫌なんですよ。日曜に午後3時とか4時に起きると「うわー、もうええわ…」ってなるじゃないですか。でもYUCHIも早起きやな。

YUCHI:僕の生活サイクルも京さんに結構近いです。

京:Skypeでsukekiyoの部屋があるんですけど、僕が朝「こうしよう」と書き込むと、YUCHIが一番に反応しますからね。

YUCHI:それが大体4時とか6時頃です(笑)。もちろん全員が早起きなわけじゃなくて、UTAさんは普通で、匠さんは色々で、未架さんは24時間稼働してます。

京:彼はsukekiyoのMVも作ってくれていますからね。日本で一番忙しいドラマーです。

――相変わらず個性豊かです。では、そんな5人の最新作についてお聞かせください。

YUCHI:初のシングルです。満を持してやっと、という感じですね。

京:本当はミニアルバムとかフルアルバムとかのほうが世界観は作りやすいんですけど、『VITIUM』(2015年2月リリースのミニアルバム)から時間が経っているし、一発出そうかなと。

――それにしても、シングルとは思えない豪華な内容です。

京:値段が値段なので、なるべく曲を入れてあげようという思いはありますね。sukekiyoの作品は仕様が決まっているんですよ。だから、あとはそこに見合うものをどれだけ詰め込めるかなんです。

YUCHI:今回、曲数は多いですけど書き下ろしは2曲(「anima」「12時20分金輪際」)だけなので、作っている側としてはシングルという感じです。でも、制作時間は長かったです。曲作り中、京さんはツアーや武道館もあったし、匠さんは京さんが忙しいと必然的に忙しくなるので、みんな時間がなくて。

京:そんな中で、曲は「304号室 舌と夜」は原曲からあまり変わっていないけど、「anima」と「12時20分金輪際」は結構変わりました。テンポ感もかなり変えたし。最初、「anima」はもっとバラードっぽかったんですよ。「12時20分金輪際」もどこに落とし込むかが難しくて時間がかかりました。4曲とも原曲は去年の夏前ぐらいからあったんですけど、そこから全員でこねくり回して。

――いつも驚異的なスピードで制作するsukekiyoには珍しいことですね。大変だったのはどの曲でしょう?

京:僕は「12時20分金輪際」です。

YUCHI:僕もです。「12時20分金輪際」は本当にレコーディングのギリギリまでいじっていました。「anima」はさっき京さんが言ったように、元々はバラードっぽい曲調で、もっとまったりしていたんです。この曲は色々試したので、マイナーチェンジが多かったですね。

京:2曲とも、これまでの曲の中でも結構苦労したほうじゃないですか。今までも苦労した曲はありましたけど、結構いいテンポでポンポンあげてきたので、ここにきていいパンチをもらいました。

YUCHI:今まで原曲のイメージからものすごく変わる曲は、あまりなかったんですけど、今回の曲は結構変わったんですよ。「12時20分金輪際」なんてデモを聴いたら違う曲だと思うかもしれません。

――今回、「anima」を表題曲にしようというのは、初めから決めていたんですか?

京:サラッと歌ったときに、このメロがすごく気に入って。でも同時に他の曲も進めていたから、この曲以上に自分の中でくるものがあれば、そっちを表題曲にしようと思っていたんです。でも色々試して、やっぱりしっくりくるのはこれだな、と思ったので。

――タイトルになっている『ANIMA』は直訳すると「魂」や「命」ですが、心理学的には「男性の無意識内にある女性的特性」を意味する言葉ですね。タイトルには後者のニュアンスも含まれているんでしょうか。

京:そうですね。何となくどちらの意味も含むような、感覚的なものです。

YUCHI:sukekiyoの世界観には、そういうトランスジェンダーの部分が結構あると思うんです。歌詞もそうですけど、DIR EN GREYの世界観に比べると曖昧な部分が多いし、柔らかい部分も多い。それは特に最近のライブでも出ていると思います。

京:僕からすれば、sukekiyoで出てくる音って、こういう匂いしかしないんですよ。音からこういう世界観が出てくる。だから映像を思い浮かべるときに、ディルとは全く違う画が出てくるんですよね。それが自然と歌詞にも反映されているし。sukekiyoってライブにしても音にしても危なっかしい感じじゃなくて、何となく落ち着いた感じがするんです。

――なるほど。今回のMVはこれまでとは一味違う作品になっていますが、映像のイメージはどの段階から見えているものなんでしょうか?

京:この2曲を収録すると決まったときから大体のイメージはありました。今までも退廃的なところを映していたんですけど、そんなに色がある感じじゃなくて一色の印象だったんですよね。今回はアーティスト写真もそうですけど、いろんな色が入っているのに落ち着いていて、それでいて艶めかしい感じです。

――極上の艶めかしさです。個人的には白無垢と綿帽子が大変エロいと…

京:え! あれがエロいんですか。そこをエロと取るのは変態ですよ(笑)。

YUCHI:そうですね(笑)。

――…!! まさか自分が変態と言われる日が来るとは…。

◆「こうします」と言ったときに出てくるセンスはブレない(YUCHI)

――書き下ろした2曲はもちろんですが、3曲目に収録される「304号室 舌と夜」は、ファンの方々にとって待望の音源化ですね。

YUCHI:ライブでは結成当初からやっていた曲ですからね。この曲の原曲は京さんの昔の詩集からきているんです。

京:次のアルバムあたりに入れたいと前から言っていたんですけど、このタイミングで収録することになりました。

――曲はかなり前からありましたが、レコーディングも以前からしていたんでしょうか?

京:いやいや、全然! 歌メロと、歌詞ぐらいですね。このシングルを作ろうという段階から、もし時間があったら「304号室 舌と夜」もアレンジしたいねという話はしていたんです。でも、その後「anima」と「12時20分金輪際」を入れることが決まって、とにかくこの2曲をやろうということになったんですよ。そうしたらUTAがいきなり、「じゃあ僕、『304号室 舌と夜』からやります」って言い出して(笑)。「えっ!?」となりましたけど、間に合うなら入れたらいいし、まあいいやと。結果、上がってきた音がこの感じだったので、一発OKだったんですけどね。とにかく彼はブッ飛んでいるので…(笑)。

YUCHI:UTAさんは、アウトプットしかしない方なんです。彼が「こういうことをしようと思います」と言う時、周りの意見は聞いていませんからね(笑)。でも、「こうします」と言ったときに出てくるセンスはブレないです。

京:だからなるべく自由にさせてあげたいんです。「あとの曲はこっちで何とかやるから、頼む!」と。

――UTAさんは、今回もエピソードに事欠きませんね。

YUCHI:でもこれ以外は、 UTAさんのレスポンスがまたさらに減ったということぐらいですよね。

京:前の半分以下になったな。Skypeでみんなが見られるように連絡事項を書くんですけど、返事すらないんですよ。でも、返事がないということは、「はい」ということなのかなと思うようにしています(笑)。

YUCHI:みんな大分慣れましたよね。

京:でも、自分の曲がめっちゃ変わっていっても何も言ってこないからな。

YUCHI:そうですね。作曲者って、原曲が自分の持っているイメージと変わると気になるものじゃないですか。進化だったらいいけど、イメージと変化するとそれを指摘する人が多いし。

京:テンポで結構曲のイメージが変わるのに、UTAはテンポが変わっても何も言ってこなかったんですよ。僕とYUCHIが、「大丈夫? 大丈夫?」って電話で話したんですけど、「大丈夫だと思う」と言われて、「あ、そう。じゃあ…」と(笑)。

YUCHI:でもレコーディングに入ると、音作りとかフレーズにめちゃくちゃこだわるんですよね。

京:レスは1週間なかったりしますけどね。Skypeで全然返事がないのに、ライブのときはめちゃ元気だし。「おはようございま~す。頑張りま~す」みたいな(笑)。Web上と実物のイメージが合わないんですよ。最近も、ライブが終わって「お疲れ様で~す」と帰って行って、それからまた音信不通だし。でも、リハもちゃんと来てるんですよ。「あれ? いつリハって知ったの? あ、Skype見てたのね」と(笑)。

YUCHI:全く返信はないんですけどね(笑)。やる気はあるんです。

京:遅刻もせえへんしね。

YUCHI:ひどいときは30分ぐらい前に来ていたりしますしね。

――前回のインタビューの時より、UTAさんの宇宙度が増している気がします(笑)。

京:でもこれ以上増すとさすがに…(笑)。

――それに対して京さんは怒ったりはしないんですね。

京:いや、むしろsukekiyoを辞めたいのかなって心配になりますよね。それならそれで言ってもらえたらいいんだけどなと思ってると、ライブ後に普通に「お疲れ様で~す」って言うんですよ。何か僕だけ空回りしているみたいです(笑)。