SUGIZO

――他に、アルバム収録時に変えた曲はありますか?

SUGIZO:「PRAY FOR MOTHER EARTH」も元々10分以上の曲をシングルでは6分くらいにまで縮めてます。

――今回の収録曲は大曲が多いですよね。8分、9分、10分と。

SUGIZO:長いんですよね。でもPOP MUSICの世界だと長いんですけど、DANCE MUSICだと8、9分の曲は多々ありますよ。とはいえ10分越えはあんまりないですけどね(笑)。

――「PRAY FOR MOTHER EARTH」は、やはりかなりの大曲ですね。

SUGIZO:この曲は5年前に近藤等則さん(トランペット)と一緒にレコーディングしたものが元になっているんです。今回それをほとんどいじらずに収録しました。ご存知のように近藤等則さんは即興演奏の世界的権威です。レコーディングも、近藤さんのトランペットと僕のヴァイオリンをスタジオの卓の前で、お互い目を見ながら「せーの!」で一緒に演奏してに録ったんです。

――まさにライヴですね! 同録はすごく難しいっていうじゃないですか。

SUGIZO:そうですね。でも、同じ空間で一緒に演奏、しかも即興なので、お互い絡み合ってじゃれあって昇天していくような感覚がそのままパックされているんです。音質とかピッチは若干微妙でしたが、基本的にはその当時のものを使っています。そういう様々な物語があるんですよ。

――多忙なSUGIZOさんのレコーディングはいつどんな風に行われているんですか?

SUGIZO:いつもデータが世界中を行き来している感じですね。例えば僕が南米ツアー中に、日本の女性シンガーにコーラスをお願いしたり…。データを取りまとめて一つのものにする段取りがすごく大変です。もしくは、日本で録るだけ録って細かいエディットをツアー中にやったり。南米ツアーはまさにエディット大会でした。

――ツアーと同時進行というのは、それはまたイバラの道のような…

SUGIZO:でもね、ツアー中のレコーディングは必要だと思うんです。レコーディングモードになっていると耳の精度が上がるので。ツアー中は「えいや!」とやってしまうから、耳の精度が下がりがちなんですが、レコーディングモードのシビアさを持っているとツアー中も演奏がバシッと決まるんです。一見別のベクトルのように見えますけど、同時に進行することで、ライヴの精度が上がって、レコーディングにはライヴ感が入る。どちらも関係し合っているんですよ。

――なるほど。ところでツアーといえばリリース翌日の12月15日から「SUGIZO TOUR 2011 STAIRWAY to The FLOWER OF LIFE」が始まりますね。

SUGIZO:台北、香港、大阪、東京の4本です。

――4本だけと言いつつ場所が全く違うという、SUGIZOさんらしいワールドワイドなツアーですが。

SUGIZO:(笑)。でもアジアに関してはほとんど今は日本と同じ気がしています。だってほら、アジアだし。言葉は違うけど人種は同じだし。昔でいう大阪と東京くらいの気持ちです。昔大阪で初めてライヴをやったときみんな大阪弁でびっくりしたんですけど、それが北京語になったくらいで。

――距離感近いですね! 海外のライヴと国内のライヴ、決定的に違う点は何ですか?

SUGIZO:やはり自分たちの機材をフルで持っていくのは不可能なので、機材を縮小しなきゃいけないし、自分の求めている音色のクオリティを妥協しなきゃいけない点ですね。

――今回のツアーでは、日本ではオーケストラ、アジアではクインテットの構成ですよね。

SUGIZO:今回のオーケストラは8名+ダンサー2名で計10名なんですけど、それを海外に連れて行くのは、ものすごく潤沢な制作費がないと難しい。LUNA SEAやX JAPANでさえ、海外では何かを削らなきゃいけない。やっぱりそこが海外の壁ですね。デリケートな機材ももちろん持って行けないし。

――今回、本当は持って行きたかった機材はありますか?

SUGIZO:近年、僕がずっと使っているEVHというアンプですね。でもアジアではそれはレンタルできなくて。持っていくのは無理ですし。

――EVHにはどんなこだわりが?

SUGIZO:とにかくクオリティが違って、自分の求めている音が出る。でもアンプそのものの輸送がすごく大変なので、諦めるしかないんです。

――やはりデリケートな機材だから…ということで?

SUGIZO:お金もデリケートさも両方です。X JAPANではロスでそのアンプを買ってアジアツアーに持って行ったんですけど、やっぱりトラブルがありました。初日のソウルで音が全く出なくなって。本来、真空管が入っているギター・アンプリファイアはあまり飛行機で移動しない方が望ましいんです。

――日本ではそのアンプでのライヴが見られるぞ、と。

SUGIZO:はい。でもほとんどの人には僕のこだわっている差はわからないかもしれない。よっぽどのギター好きだったら別ですけど。

――でも、SUGIZOさんのファンの方ってよっぽどのギター好きが多くないですか?

SUGIZO:ああ、そうですね。最近若い男の子のファンが多くてね。ギターを弾いているところを凝視している人が多い。若い頃はビジュアル的に若い女の子のファンが多かったですけど、だんだんオッサン化してくると男の子が増えますね(笑)。

――オッサンって(笑)! SUGIZOさんはキッズや多くのアーティストにとってすごく大きな存在ですから、そういう人の演奏を生で見るっていうのはたまらないと思いますよ。

SUGIZO:であれば光栄です(笑)。

――では最後に2011年を振り返っていただいて2012年の抱負などを。2011年は早かったですか?

SUGIZO:ものすごく。今年1月にLUNA SEAのレコーディングをやったんですけど、それが大昔のように感じますね。やはり3.11を挟んで違う世界になってしまった…。それ以前が遠い昔に感じます。こんな大きな体験を今生きている全員がしたわけで、これで日本が良き方向に変わらなければいけないっていう地球からの警告ですよ。ネガティヴにとらえる必要はないんだけど、これで変わらないと日本が壊滅するまで変わらない。原発はもちろん、全てが正しい方向に向かうべきですよ。そんなときに政治家は何をやっているんですかね。

――ズバッと言いますね。

SUGIZO:うん。政治には国民の声がもっと反映されないといけないんですよ。それに国民が声をあげないと。根本的にどんな政権でどんな思想のもとでも、僕らが自由を掴めているっていうのは本当に大切なことだと思うんです。好きな時に好きな国に行けて好きなものが食べられる。自由ってとてもありがたいんだって日本人全員が知るべき。そう考えたときに今の国会のグダグダ感が歯がゆくて。今やるべきことをバチッとやれば良いのに。本当にやるせない。

――それにしても、こういうことについて触れるアーティストってすごく…

SUGIZO:多いですか?

――いや、少ないです。むしろ。

SUGIZO:アーティストはそういうことを伝えなきゃいけないと僕は思うんですけどね。でも日本は政治的な意見やプロテスト(※政治への抗議)的な歌を敬遠する風潮がありますよね。そういうことに触れてはいけない、それがエンターテインメントの暗黙の了解であるという。先日、原発のデモのトークに参加したんですけど、原発の話は未だにNGというメディアもあって。この段階に来てまだ一番大事なことが置き去りになっている現状がある。

――2012年も新たな音はもちろん、どんどん声を上げていくぞ、と。

SUGIZO:そうですね。中にはネガティヴな人もいますよね。環境問題も、興味がない人はそれでも良い。でも僕たちが良き方向に持っていこうとしているのを邪魔だけはしないでほしい。本当に大事なものに気づいてシフトしていかないと、日本が成長するタイミングがないんですよ。震災の後に僕らが生きてここにいて、未来を構築する役割があることを認識して、2012年はそれを実践していくべきだと思いますね。

(文・後藤るつ子)


SUGIZO

<プロフィール>

1992年、LUNA SEAのコンポーザー、ギタリスト、ヴァイオリニストとしてデビュー。1997年、バンドの活動充電期間を機にソロ活動を開始、2001年より、映画音楽や役者、コンテンポラリー・ダンスにまで領域を広げ、積極的にソロ活動を開始する。現在「SUGIZO」としてのソロワークの他、伝説的トランス・ユニット「JUNO REACTOR」、サイケデリック・ダブ・ジャム・バンド「SHAG」、シャーマニック・エレクトロニカ・ユニット「S.T.K」、10年ぶりに復活した「X JAPAN」への正式加入等多岐に渡り世界規模で活動中。

■オフィシャルサイト
http://www.sugizo.com

【リリース情報】
『FLOWER OF LIFE』『TREE OF LIFE』
2011年12月14日発売(HPQ)
国内外より豪華メンバーが参加したSUGIZO待望のNEWアルバム。多彩な楽曲が彩る10曲入り音源を2枚同時リリース!

FLOWER OF LIFE
『FLOWER OF LIFE』
【CD+DVD】
YICQ-10187/B
¥3,990(tax in)
FLOWER OF LIFE
『FLOWER OF LIFE』
【CD】
YICQ-10188
¥3,150(tax in)

【収録予定曲】
01. CONSCIENTIA
02. ENOLA GAY
03. MESSIAH
04. ARC MOON
05. TELL ME WHY YOU HIDE THE TRUTH?
06. FOLLY
07. The EDGE
08. PRANA
09. FATIMA
10. SLEEP AWAYzd

【DVD】
SUGIZO自身による楽曲解説/奏法解説インタビュー収録

TREE OF LIFE
『TREE OF LIFE』
【CD+DVD】
YICQ-10189/B
¥3,990(tax in)
TREE OF LIFE
『TREE OF LIFE』
【CD】
YICQ-10190
¥3,150(tax in)

【収録予定曲】
01. LEMURIA
02. NO MORE NUKES PLAY THE GUITAR
03. NEO COSMOSCAPE Remix by SYSTEM 7
04. MIRANDA feat. MaZDA
05. Dear SPIRITUAL LIFE
06. MISSING LINK
07. ASIAN MYSTICISM feat. JUNO REACTOR
08. Elan Vital in Heaven Remix by YOUTH
09. DO-FUNK DANCE
10. PRAY FOR MOTHER EARTH feat. TOSHINORI KONDO

【DVD】
SUGIZO自身による楽曲解説/奏法解説インタビュー