毎回のことながら、リスナーの意表を絶妙に突いてくるムック。今度はクラブ・ミュージックの大御所、DAISHI DANCEとのコラボレーション!!
5月に行われたレーベルの移籍発表から待つこと約半年…、またしてもムックが驚かせてくれた。移籍後第一弾シングルとしてドロップされるのは、彼ららしいアグレッションもさることながら、耳に残る美しい旋律が印象的な『アルカディア featuring DAISHI DANCE』。ロックとハウスが見事に融合された1枚を、Vo.の逹瑯はどう語るのか。
――ムックは少し前からダンスビートを取り入れてると思うのですが、今作はDAISHI DANCEさんとの共作ということで、一番そういう要素を強く感じました。これは移籍が関係してたり?
逹瑯:移籍したことは、確かにきっかけでしょうね。「DAISHI DANCEさんとのフィーチャリングはどうですか?」と持ちかけてきてくれたのが、アソシ(ソニー・アソシエイテッド・レコ―ズ)の人のアイディアだったので。アソシじゃなかったらこうはならなかったでしょうね。
――DAISHI DANCEさんと知り合ったきっかけは今回のコラボレーション?
逹瑯: そうですね。きちんとお仕事をしたのは。うちのギターしか会ってないんですけど。
――あれ? 逹瑯さんは?
逹瑯:会ってないです。本当にこれがきっかけです。
――実際コラボしてみてどうでしたか?
逹瑯:ピアノの旋律もあり、曲全体が綺麗になっていたので、空気感が変わった感じはしました。もともとオケ自体がエグい感じで、そのエグさがちょっとかっこよかったんですよ。で、せっかくDAISHI DANCEさんとやるんだったら、それをぶち壊してもらいたいなと。(作曲者のミヤも)個性と個性をぶつけて、新しいものが生まれたらなと思っていたらしく、あえて注文もせず、好きにやってくださいという感じだったみたいです。
――逹瑯さんは、どんな形で制作に関わりましたか?
逹瑯:ずっとそうなんですけど、ほかのメンバーが書いた詞とかに口出す方ではないんです。「世界観どんな感じ?」とかくらいかな。「アルカディア」を作ったミヤは歌のイメージが明確にある場合が多いから、俺はそれをきちんとレスポンスして再現するってことが多い。今回、コーラスとかで歌の量が多く、いろいろ大変でしたけど楽しかったですね。
――ミヤさんの明確なイメージ…。具体的には?
逹瑯:そこまで込み入ったことは話しませんけど、「ピアノ始まりだからってしっとりとかじゃなく、力強く歌ってね」とか言ってました。“歌を歌う”というよりは、“曲を演奏している”というイメージ。昔だったら、ピアノ始まりの曲はしっとり歌い上げるのかなとか思っていたんですけどね。
――確かにサビやBメロはムックらしく攻撃的だったのが意外でした。歌詞は言葉遊びが多いですよね。
逹瑯:そうですね、聴感的に面白いように、言葉遊びとして作った曲なんだと思います。もちろんメッセージとかもあるでしょうけど。
――どんなメッセージなんでしょうね?
逹瑯:最近の流れとしてのもので、“今”を大事にしている曲なんじゃないかなとは思います。あまりそういうレスポンスしないんですよ。自分の書いた歌詞にも、これはこういう意味でとか詳しい話もしないしね。メッセージは、聴いた人が自分なりに解釈してもらえれば。
――逹瑯さんは、何か意味を込めて歌いましたか?
逹瑯:いや、この歌詞に関してはエモーショナルな部分ってないんだろうなって思っていたんで。感情どうのこうのというよりは、聴覚的に作品が面白くまとまっているので、楽曲がちゃんとパンチのある感じでできているかということが大事だなと思ったんです。声色も、楽器のエフェクタを踏み換えるような感じで遊びながら歌録りをしましたね。逆にいうと、聴く人によって取り方が全然違う曲だと思うんです。でもそれでいい。こういう曲だからって説明しちゃうと、もうそういう曲でしかなくなっちゃうじゃないですか。曲って、聴く人の好きなシチュエーション、その時の気分とかテンションによって聴こえ方が全く違ってくると思うんです。その時その時の、その人の生活の一部に溶け込んでくれればいいなと思っているんで。
――ライヴではどうなりそう?
逹瑯:この前一回やったんですが、何の違和感もないしすごいロックチューンだなと思いましたね。今までの楽曲の中に混ざっても、違和感なく演奏できます。ピアノ始まりでいろいろなアクセントにもなりつつ、ベストな位置におくことでいい起爆剤になりそうだなと。
――逹瑯さんはクラブは行かれるんですか?
逹瑯:行かないですね。逆に行くんですか?
――不意打ちですか(笑)!? いや、ダンサブルな曲を難なく歌い上げているので結構行くのかと思いました。
逹瑯:逆にそこを全く知らない状態で、自分の解釈でやった方が良いものが生まれるのかもしれないですよね。まぁ、別にいいんじゃないですか。みんな、そういうところで吸収してきた音楽がバンドに反映されたり自分の中の血肉になっていると思うんで。
――確かに。近年、デジタルサウンドが多くなっているのはなぜですか?
逹瑯:単純に(自分たちの)ブームじゃないですか? 昔からメインコンポーザーの趣味ががっつり出るバンドなんで、ヘヴィロックにハマればヘヴィロックに行くし、一点集中で。落ち着いてきたなと思ったらこういうクラブ・ダンスミュージックに行ってるし。
――ムックはアルバム一枚一枚でジャンルがかなり違いますよね。
逹瑯:全然違いますね。インダストリアルにはまってみたらそれをやってみたりとか。今回のは、今まで通ってきたものがいい具合にMIXされてるんだと思います。
――2曲目の「NAME」は、「アルカディア」とは打って変わって叙情的なナンバーですね。
逹瑯:表題曲がああなので、これくらい振り切った方が面白いんじゃないかと思って。自分の好きな感じで、何も考え込まずにバーッと書きました。一番最初に思いついた歌詞が1サビの締めくくり「運命とか愛とかどうでもいいよ ただ君が好き」、これはいいと思ってね。そこに結びつくストーリーを逆算してあてはめていった感じ。
――最後の部分「名前をつけてよ この気持ちに」はその後ですか?
逹瑯:はい。本当はさっき言った真ん中のフレーズ(「「運命とか愛とか~…」
)を最後に持ってこようかなと思ったんですけど、最後に「名前をつけてよ この気持ちに」を持ってきた方が強がりきれなくなっちゃったという感じで面白いかなと思って変えました。
――幼い二人の恋物語が切なげですよね。
逹瑯:そういうのを書きたかったんですよ。そんな恋物語を女の子目線で。最終的にオチがきちんとついているものを書きたかったんです。
――少年目線にも聞こえますね。
逹瑯:どっちでもいいんですよ。けど、少年目線にすると男が少し女々しすぎるかも。
――それって逹瑯さんの一部分だとか?
逹瑯:うーん(笑)。でも俺が書いてますからね。どこかに深層心理が出ているのかもしれないですね。
――3曲目「FUZZ-Thunder Groove Ver.-」は全英詞のメタルチューンに生まれ変わっていますが、海外を意識してみたり?
逹瑯:全然。元々シングル候補曲が2曲あったんです。「アルカディア」みたいなダンスビートの曲と、いわゆるバンドサウンドに近い曲と。で、カップリングも同時進行で考えていて、(表題曲が)ダンスビートの曲だったらカップリングは昔のダンスビートの曲をバンドサウンドでセルフカバーしたり、バンドサウンドだったらその逆も然りというのが面白いなと思ったんです。どっちにしてもムックです、みたいな見せ方で遊べたらいいなと思って。「ファズ」をメタルアレンジにしようって思った時に、歌詞がちょっと甘ったるいなと思ったんで、英詞にしてみました。自分で言って、エラい目にあったんですけど。すごい大変だった(笑)。
――発音とか?
逹瑯:はい。海外向けだったら発音とかもっときちんとやってたんですけど、ただニュアンス的に英語の方がハマるから英詞にしようって言っただけなんです。勢いを大事にしたんです。
――今年の夏はフェスによく出られてましたよね。異なるジャンルのアーティストが多く出演する中、ムックは斬新な存在だったと思うんですが。
逹瑯:まあ、昔のムックだったら呼ばれてないと思うんで。今こう呼ばれるっていうのは必然性なんじゃないかな。お祭り騒ぎ好きですし。
――心持ちは、いつものライヴとは違いました?
逹瑯:名前は聞いたことあるけど、初めて見るっていう人も多いと思うんで、30-(~)40分っていう短い時間の中でも自分たちの色を「こういうバンドなんだ」っていうのをわかりやすく伝えられるようなセットリストとか雰囲気とか心がけましたね。海外でもフェスに出たりしてたんで、フェス慣れしているバンドを見る機会が多かったんです。それでフェスの持って行き方を勉強できていたので、自分たちなりの立ち回り方を意識しながらやりましたね。
――ほかのバンドは観ました?
逹瑯:ちゃんと観てないんでわからないっすね。あ、吉井(和哉)さんは観ました!
――吉井さんがお好きなんですね?
逹瑯:昔の自分だと、暗いとか重いテーマの曲を書く時は、そのまま水中に潜り続けるような息苦しい感じのものを書いていたんです。吉井さんもぐーっと潜っていくような歌詞を書きながらも、途中で一瞬ふわっと息継ぎをするんですよね。俺は勝手に息継ぎだと思ってるんだけど、そういう手法で一種我に返る。それがすげー好きで。これってムックでも生かされているし、自分なりにもっとできるようになりたいなとは思っていますね。
――そして来年は結成15周年year。今発表されている来年のムックの日(6月9日)のことは何か決めていますか?
逹瑯:えー…何もないなー。15周年ということくらい(笑)! あとは武道館もそうだったんですけど、地方の人も来やすいような時間帯にしようかなというくらいかなぁ。
――では、ムックにとってのアルカディア(理想郷)とは?
逹瑯:理想郷…。ムックは昔から目指しているところがなかったんですけど、最近出来つつあるかな。それは、もっと“ムック”であり続けること。もっと「ムックでしかできないよな」「ムックだったら何でもありだな」みたいな感じになればいいな。
――そんなムックって、逹瑯さんにとってどんな存在?
逹瑯:もう生活の一部ですね。洋服とかと一緒、あって当たり前。もっと言うと人生の一部。もう15年やってるでしょ、あと1年やったら人生の半分ですから。半端ないっすよね。
――人生の半分…。そう考えるとすごいことですね。『アルカディア featuring DAISHI DANCE』、リリースが楽しみです。
逹瑯:今は便利な時代ですし、動画サイトでもいいので試しに聴いてみたらいいと思います。家や車で聞いてもテンションが上がる曲だと思うし、ライヴがめちゃめちゃ楽しくなる曲です。あと、冷やかしでもいいからライヴに来てください。2回目からは冷やかしじゃなくなるはずです。CDも買ってくれたら嬉しいけど。俺も好きなアーティストの買うしね。
(文・竹村千代子)
ムック
<プロフィール>
メンバーは、逹瑯(Vo)、ミヤ(G)、YUKKE(B)、SATOち(Dr)。メンバー全員が作曲を行う。これまで国内外合わせ650本以上のLIVEを行い、2006年には初の日本武道館、2011年には延べ15000人を動員し日本武道館2DAYSを成功させた。海外でも100本以上のライブを行い、ヨーロッパ、アジアでは定期的にワンマンも行う。ロックに留まらない、幅広い音楽性の楽曲は現在も進化中。
■オフィシャルサイト
http://www.55-69.com/
『アルカディア featuring DAISHI DANCE』
(発売元:ソニーミュージックアソシエイテッドレコーズ)
2011年11月23日発売
レーベル移籍後第一弾シングルは、エレクトロやハウス界のトップに君臨するDAISHI DANCEを迎え入れたヘヴィかつロマンティックな一枚。クラブサウンドとの融合により、“らしさ”がより強化されたムックを堪能せよ!
【収録予定曲】
【初回盤生産限定盤 2tracks+VC盤】
(CD)
1.アルカディア featuring DAISHI DANCE
2.NAME
(DVD)
1.アルカディア featuring DAISHI DANCE MUSIC CLIP
【通常盤 3tracks盤】
1.アルカディア featuring DAISHI DANCE
2.NAME
3.FUZZ-Thunder Groove Ver.-
※同日リリースのライヴDVD『Chemical Parade』との同時購入特典
A賞…「メンバーと一足早い船上クリスマスパーティ~アルカディア号で行く『MUCC Xmas Cruise』」にご招待(抽選で50組100名様)
B賞…「オリジナルクリスマス壁紙」をプレゼント(抽選で1,000名様)