特集-Special Feature-

千聖

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全曲新録の千聖ソロデビュー20周年記念ベスト盤が完成!
あれから20年。俺は今もロックしているけど、君たちはロックしているか?

PENICILLINのギタリストであり、ソロプロジェクトCrack6のヴォーカル&ギターを務める千聖がソロデビュー20周年を迎え、記念ベスト盤『千聖~CHISATO~ 20th ANNIVERSARY BEST ALBUM「Can you Rock?!」』をソロデビュー当時のレコード会社である徳間ジャパンからリリースする。ファン投票により選ばれたソロ名義の過去曲15曲+新曲1曲を収めた今作は、「ただの寄せ集めじゃないものにしたかった」という思いから全曲新録。豪華アーティストとのコラボレーションも実現した。20年前の自身と対峙しながら、様々な出会いが形となり完成した1枚は、まさにこれまでの彼の音楽人生の集大成と言っても過言ではない。そんな記念作品の制作秘話、現在の思いを千聖に語ってもらった。

◆何が出るかわからないワクワク感

――今年の制作は例年のようにGW中に追い込みではなく、GW頭に完成したようで。5月3日からPENICILLINの東名阪ツアーもありましたしね。

千聖:本当は4月26日に完パケる予定だったんですけど、トラックダウン(以下、TD)が仕上がらなくて、そのままPENICILLINのリハに突入したので、昼間から夜までリハをしつつ、夜中はプロデューサーの重盛(美晴)さんから送られてきたTDデータをチェックするという。1曲チェックするのに物凄く時間がかかるので、毎日朝の10時頃までやっていましたよ。リハは12時くらいに集合なので、まともに風呂に入る時間もないくらい(笑)。ようやく5月1日に完成しました。

――おめでとうございます…!

千聖:ありがとうございます。最後は命がけでした(笑)。

――(笑)。今回はヴィジュアル面も色々とトピックスがありますが、まず基本的にはPENICILLINの時とは異なり、ソロは当時からカジュアルでスポーティーなテイストですよね。

千聖:1stシングルの時から、スポーツとロックとサイバー的なものが主軸になっているんですよね。当時、PENICILLINのギタリストがいわゆる歌手デビューするということにあたって、PENICILLIN色とは違う色でデビューしたらどうかという意見が多かったからかもしれない。たまたま、当時の僕は私服でadidasやNIKEとか、スポーツカジュアルなテイストのものをよく着ていたので、私服を見たファンからは「ヴィジュアル系っぽくない」と言われてた気がする(笑)。なので、個人的にはその延長線で全然抵抗なく。

――今回最初に公開されたヴィジュアルでは、『VENUS』(97年8月発売の4thシングル)のジャケ写で使用されたスケボーが20年の時を超えて登場し、メインヴィジュアルの右手の特製プロテクターグローブは『CYBER SOUL PAVILION』(99年5月発売の2ndアルバム)のジャケ写で付けていたものということで。よく残っていましたね。

千聖:特にスケボーに関してはビックリですよね(笑)。

――徳間ジャパンの方が保管していたそうですね。

千聖:当時、新星堂に飾ってあったものらしいです。今回、ジャケットデザインをしてくれたのが、プロテクターグローブを作ってくれた方なんですけど、2ndアルバム、ミニアルバム『SURF SIDE ATTACK!』(99年11月発売)をデザインした前田(浩志)さんという方なんです。あと、当時のマネージャーがビザールギターという、いわゆる変形ギターを入手するツテがあって、ソロのジャケットでは大抵それを使っていて、今回もビザールギターを使用したかったので自分たちであちこちから集めました。

――それは撮影用として?

千聖:そうですね。当時、ESPのモニターだったのに、一切それを使わなかったという(笑)。

――それは大丈夫だったんですか(笑)。

千聖:もちろん。マネージャーが率先して話をつけていたので。ギブソン、フェンダー等の有名なものはもちろんですけど、ビザールギターも使うという。今回、そのヴィジュアルイメージを踏襲しました。

――千聖さんと言えばフライングVの印象が強い中、ブックレットも含めて今回のヴィジュアルイメージに1本も出てこないのはなぜなのか気になっていましたが、腑に落ちました。

千聖:今回、せっかくベストアルバムを出すということで、音源だけじゃなく外見からもこだわりましたね。

――活動する上でPENICILLIN、Crack6、千聖ソロの意識の違いとは?

千聖:Crack6と千聖ソロは難しい境界線ではあるんですけど、PENICILLINとソロプロジェクトが別物というのは、ご存知の通りヴォーカルが僕であるということと、ギターが僕だけじゃないということですね。PENICILLINの場合はギターとサウンドプロデュースという役割で、HAKUEI君、ジローさん(O-JIRO)、僕という三角形の関係で、プロデューサーの重盛さんと一緒に作るという少人数制がここ十数年のスタイルです。千聖ソロは最初、重盛さん、T2yaという二人のプロデューサーと担当ディレクター、僕という4~5人でやっていて、当時の世の中的には、バンドサウンドに少し打ち込みが入っているくらいはありましたけど、土台に打ち込みが何本も入っていて、それに自分のギターとヴォーカルがガッツリ入るという、あんなスタイルはほとんどなかったので、最初、めちゃくちゃ文句を言われたんですよ。「何これ? ロックじゃないよ」って(笑)。

――そうだったんですか。

千聖:制作に全然関係ない関係者からね。原型はわかりやすいロックだったんですけど、T2ya君が手を加えたらジャングルビートとかが無数に入って面白いコラボレーションが生まれて、PENICILLINとは全然違うものになったんですよね。当時のPENICILLINはダークでゴリゴリして、それでいて美しいという様式美の傾向が強かったんですけど、千聖ソロはPENICILLINをやる以前の、ハードロック、ポップス、AORとか、中学生から高校生の頃によく聴いていた音楽を混ぜているので、パーソナルに近い音楽性ですね。ジャズ、パンク、ハードロック、ヘヴィメタル、ファンク…そういうのをどんどん融合して、大御所のスタジオミュージシャンの方々とコラボさせてもらって、PENICILLINとはまた違う感じでグルーヴを楽しめたんです。

――なるほど。

千聖:良い意味でPENICILLINは、自分たちの物を自分たちで追究していくという。それはそれで楽しいし、美しいし、安心もするんですけど、ソロはソロで最終的に何が出るかわからないワクワク感はありますよね。やってみたいと自分が思い浮かべたものを、ストレートに再現しやすいという感じです。

――興味を持ったものを、どんどん試していけたんですね。

千聖:ライブのバンド編成も、女性コーラスやキーボードも入れたり、PENICILLINとは当時から明らかに違うんですよね。Crack6はどちらかと言うと、アプローチがもっとストレートでハードなロックで、歌のスタイルもそういうノリで作ったので、実はPENICILLINに近いところもあるかもしれないですよね。でも、固定の人数が決まっているわけではないので、PENICILLINとソロの両方がくっ付いているような感じ。ただ、千聖ソロのほうは、よりポップで軽快なイメージです。

◆自分に対する問いかけでもあるし、皆に対しての問いかけでもある

千聖

――今回のベスト盤はファン投票の上位15曲(初回限定盤は14曲)+新曲1曲が収録されていますが、シングルの表題曲全てが上位に入ったというのは予想通りですか?

千聖:思ったよりも素直な投票をしてくれたなと(笑)。16位以下の曲が悪いわけでもなく、どれもこれも大事な曲だし、自分も含め皆の思い入れもあるんですけどね。シングルから入ってきた人が多かったのかなという気はしますね。“意外”となのか“やっぱり”なのか、わかりませんが。

――シングル曲以外は、どのような理由でランクインしたと思いますか?

千聖:6位に入った「This Side Of Paradise」は、シングルではない曲で一番上位に来ているんですけど、曲はもちろん、歌詞が良いのかなと思うんですよね。1stアルバムの最後の楽曲で、詞も曲も完成度が高い。当時の僕の声が若かったので、今の声で聴きたいという意見が多かった気がしますね。

――確かに96年~97年は、声が大分若いですよね。

千聖:そうですね、若すぎて元気すぎて…(笑)。10位の「Millennium」は2ndアルバムの中で最初の曲なんですけど、自分の歌がある程度確立している時代の歌なんですよね。約3ヵ月という驚異的な早さで作り上げた1stアルバムとは対照的に、2ndアルバムはリリースまで2年かかっているので、感覚が全然違う。Twitterで「私はこの曲がすごく好きなんですけど、オリジナルを超えられるんでしょうか?」という質問が来て、確かにと思いました(笑)。それだけ2ndアルバムは何度聴いても完成度が高いんですよね。新録のベスト盤に入るということは、皆の期待値が高いんだろうなと思います。11位の「電脳遊戯」はノリがよくてライブで盛り上がるし、歌詞が過激なので遊び心があって面白いと思います。

――改めて振り返ると、結構なスピードでリリースしていますよね。シングルだけでも、96年~99年で9枚出しているので。

千聖:そんなに出してたのか(笑)。3rdシングルの『falling over you』(96年11月発売)は本当は出すつもりはなかったんですよ。当時、アルバム用にバラードを作って、デモを徳間ジャパンの会議で聴いてもらったら、良い曲だからやろうよとなって。制作本部長の方がすごく気に入ってくれて、当時、徳間ジャパンとして一推ししていた岡本真夜さんが贅沢にもコーラスで参加してくださったという。彼女も曲をすごく気に入ってやってくれたので、急遽シングルになったんですよね。

――今回は豪華アーティストの皆さんが参加していますが、全部の録りに立ち会ったんですか?

千聖:はい。正直言うと、当時はドタバタで忙しすぎて、真夜ちゃんの時とかは立ち会ってなかったんです。会話はしていたんですけど、肝心な制作現場にはいなかった(笑)。今回は全部立ち会ったし、オファーもほとんど全部自分たちでやったんですよ。

――そうなんですね。岡本真夜さんとは久々の再会だったんですか?

千聖:Twitterでは繋がっていて節目では挨拶をしていたんですけど、実際に会ったのは約20年ぶりですね。今作の曲は全部20代の時の曲で、それを20年後にまたできるというのは有り難いです。

――千聖さんファンで有名なHEROのSARSHIさん(G)も参加していますね。

千聖:ディープな参加ではなくライトな参加で申し訳ないですけど(笑)。

――ギターで参加するのかと思っていましたが、まさかのコーラス(「Can you Rock?!」「電脳遊戯」)で(笑)。

千聖:そこは難しいですよね(笑)。ギタリストのアルバムなわけで、自分が弾けちゃうから、ついつい細かいところは全部自分で弾いちゃうんですよね(笑)。大人数でやるコーラスは皆でやりたいなと思って「参加できる人募集」ってLINEで送って、魔太朗さん、SARSHI、塩谷瞬くんとかが参加してくれました。面白かったのは、SARSHIは曲を完全に知っているんでしょうね。ジローさんがディレクションしていたんですけど、SARSHIはもうわかってるっていう顔をしていて(笑)。

――(笑)。それと、仮面女子(「VENUS」にCyber Woman Voiceで参加)は意外でした。

千聖:元々、仮面女子のプロデューサーの方とは仲良くさせてもらっていたんです。今回誰にするか最後の最後まで決まっていなくて、ちょうどその時、マネージャーの方が「良かったらどうですか?」と言ってくれたので、どうせなら複数の声を合成したら面白いかもということで、この形になりました。3人ともすごく表現が上手くて、それぞれ個性がある。たった数秒間の世界ですが曲の要の部分なので、色々な表情をこだわってやってくれました。すごくプロフェッショナルの世界観を感じましたね。僕も見習わないと(笑)。

――そして、鮎貝健さん(「666」にナレーターで参加)が高校の同級生というのは驚きました。

千聖:正確に言うと歳は一つ上なんですけど、彼は留学していたので、最終的に自分と同じ学年になったんです。洋楽のハードロック、ヘヴィメタルの全盛期の頃だったので、ただでさえイケメンなのに、英語が喋れる、歌えるということもあって、ものすごく人気がありましたね(笑)。ちょっとだけ一緒にバンドもやっていたし。卒業して会わなくなっても、彼はMTV JAPANのVJやJ-WAVEのDJとして活躍していたんですけど、お互い忙しくて会う機会がなくて。「666」は当時、「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)とかをやっていたウォード・セクストンさんの声なんですけど、セクストンさんじゃないなら鮎貝しかいないな!と思い立ち、早速連絡したら快く引き受けてくれました。

――今までに作品でコラボしたことは?

千聖:今回が初めてです。近い業界にいるのにこれまで仕事で接触していなくて、高校生以来初めて一緒にやって、不思議な気分でした。それをO-JIRO君がレコーディングするという風景が面白かったです(笑)。

――新曲「Can you Rock?!」は、このベスト盤に収録するからこそのテーマは何かあったのでしょうか?

千聖:タイトルの通り「ロックできているかい?」と問いかけているんですけど、要するにあれから20年経って、俺は今もロックしていると思うんだけど、君たちはどうだい?っていうことですよね。この場合の「Can you Rock?!」はただロックバンドをやっているということがROCKしているということではなくて、何も考えずダラダラ流されたような人生を送っているんじゃないか? 悪いルーティーンを打破することができているか?という、自分に対する問いかけでもあるし、皆に対しての問いかけでもある。20年目だからこそできるかなと思って作りました。昨日MVを撮ったんですけど、ものすごくカッコよくできたなと思って。やっぱり20年経っても俺は天才なんだなと感じる、カッコいい曲です(笑)。

――さすがです! 全体を通して聴くと、この曲は今の千聖さんっぽさがあるなと。

千聖:なるほど。意識してCrack6っぽくないように作ったんだけどね(笑)。でもやっぱり今の自分が出るんだろうね。今回は打ち込みをT2yaくんの代わりに山田巧くんに任せたので、巧くんは最近知り合った人だから今の雰囲気を出すというか。そういうことができるのは面白いじゃないですか。1枚の作品として全部一緒じゃない、でも雰囲気は崩していないというところが良いかなと。

――語り部分の最後には「愛してるZE!」があって、1曲目からファン心を鷲掴みするのではと。

千聖:(笑)。ここまでロックできたのは皆のお陰だなという意味で、皆への愛を表現したかったんです。でも、喋るのって1stシングル「DANCE WITH THE WILD THINGS」でもやったんですけど、当時の俺の中では、曲中に喋るのは水前寺清子さんのイメージしかなかったから、ロックでやるのは斬新だなと思ったんですよね(笑)。「DANCE~」ではオスカー・ワイルドの台詞を入れたんですが、「Can you Rock?!」はフィッツジェラルドの墓碑に書かれている言葉を参考に使わせていただきました。まぁ、難しい考えや理論もいいけど、僕は君たちに対して結局何が言いたかったかというと「愛してるZE!」この一言が言いたかったんだよ、と…言いたかったんです(笑)。

――ライブで言う時のような感覚でしょうか。

千聖:とにかく皆に対する“ストレートな愛情表現”ですよ。でも「DANCE~」での「ところで 今夜 君はどうしてる?」の部分とか、当時ライブで言うのがすごく照れ臭かったのが、今は普通に言えるようになりましたけど、今回の「愛してるZE!」もライブでは言おうか、言うまいか…(笑)。

――ぜひ言ってください(笑)。

千聖:そうですね(笑)。シャイなので大変なんですが、頑張って愛を伝えてきます(笑)。ということで、この部分は今っぽい感じも踏襲しつつ、1stシングルに対してのオマージュもあります。