インタビュー

Soanプロジェクトwith手鞠

Soanプロジェクトwith手鞠

発足から1年。Soanプロジェクトwith手鞠が、更なる結束の元に生み出した2ndミニアルバム『旋律、静かな願いと』の魅力に迫る。

昨年6月1日、Soanの誕生日に行われた1stライブで幕を開けたSoanプロジェクト。今年2月に他に類を見ない“静”の音世界を閉じ込めた1stミニアルバム『静謐を制し征する音』をリリースした彼らが、次なる作品として2ndミニアルバム『旋律、静かな願いと』を完成させた。そこには息をのむほど美しい音と言葉たちが織りなす、心震わせる楽曲たちが収められている。ヴォーカル、ギター、ヴァイオリン、ピアノ…限りある音で無限の情景を見せてくれるSoanプロジェクトwith手鞠。彼らの1年間の集大成ともいうべき必聴のこの作品について、Soanと手鞠に話を聞いた。

◆「Soanプロジェクト」ではなく「Soan、手鞠、タイゾ、祐弥、Sachiバンド」(Soan)

――1周年おめでとうございます!

手鞠、Soan:ありがとうございます!

――この1年で変化したことはありますか?

Soan:プロジェクトが動き出す前までは、とにかく自分の信念や貫くもののあり方を考えて、「俺は今、こういう音楽をこういうメンバーとやりたいんだ」という土台をお客さんに伝えたいと思っていたんです。でもその後メンバーが段々固定してきて、サウンド面でもグルーヴがどんどん生まれていって、表現の振り幅や、ステージでメンバーがここまで振り切っても大丈夫なんだということがわかるようになった。それによってステージ上でも挑戦できるようになったし、元々あった自分の突き詰めた音楽のコアの部分から、輪郭がどんどん大きくなっていった…そんな1年でした。

――思い描いていた理想に近づいていますか?

Soan:そうですね。俺は究極の理想みたいなものをずっと思い描いていて。手鞠君には「最終的に、こういうところでこういうことがしたい」「こういう人たちと共演したい」ということは伝えているんです。それは本当に夢というか、ここまでいけたら死んでもいいと思えるくらいの理想なんですけど、そこに一歩踏み込むことができたと思える1年でした。

手鞠:僕はこのプロジェクトの話をもらったときに、Soanさんの「自分はこういうことを考えていて、こういうふうにやっていきたい」という考えにすごく共感して参加を決めたんです。やっていく中で、「演奏スタイルや楽器が違うだけで、これはバンドだな」と思いました。もちろん技術的な部分で求められるものは違うんですけど、伝えることや、やっている感触はライブなんですよ。

Soan:確かにそうだね。

手鞠:色々なバンドのあり方があると思うんですけど、ライブって良くも悪くもお客さんに助けられることがあるじゃないですか。でもSoanプロジェクトに関しては、ライブはこちら次第というところがあって。我々が提示したいものを高い次元で成立させて、それを提示したときに、お客さんのすごく素直な反応がダイレクトに返ってくる。それがすごく嬉しいし、自分たちの音楽が通じているんだなと感じられるようになった1年でしたね。

――1年前の6月1日のSoanさんのお誕生日とは、ご自分の中での感触も違いますか?

手鞠:去年は、自分のことでいっぱいいっぱいで(笑)。「お祝いしたいけど、できるのか?」という感じだったんです。でも今回は全力でライブをやり、なおかつSoanさんをお祝いできた。すごく余裕が出たと思います。

Soan:本当に土台が固まったよね。

――わずか1年で土台が固まったことを実感するということは、元々のヴィジョンがしっかりしていたからなのかもしれませんね。タイゾさん(G/Kra)、祐弥さん(G/ex.Duel Jewel)、Sachiさん(Violin/黒色すみれ)もそれに賛同しているのではないでしょうか。

Soan:そうですね。俺は自分が持っているヴィジョンにメンバーが共感してくれることが何よりも嬉しくて。皆がすごく背中を押してくれるんですよ。ライブの本数は少なかったけど、全然ブレることなくやれたからこそ、ものすごく結束力が高まった。手鞠君が言うとおり、バンドサウンドになった1年なんじゃないかと思います。「Soanプロジェクト」ではなく「Soan、手鞠、タイゾ、祐弥、Sachiバンド」ですね(笑)。

――今年のお正月にいただいた「明けましておめでとうコメント」で、今年の抱負としてSoanさんは「人」、手鞠さんは「存在」という言葉を挙げていましたがそれは今も変わらないんでしょうか。

手鞠:最初、自分がこんなにすごい人たちの中でちゃんとやれるのかなと思っていたんですけど、自分の力を買ってくれているSoanさんの気持ちに絶対に応えたいと思って。今、そういう意味で自分の存在意義を示せているんじゃないかなと思います。あとはやっぱり存在し続ける上で、停滞していたくなくて。今の自分が今までバンドをやってきた中でベストでありたいんです。それと同時に、明日の自分は今日よりも、1年後の自分は今よりも良くなくちゃいけないと思う。そういうことで存在価値というか、これからも自分を提示していきたいですね。

――すごく向上心があるんですね。

手鞠:こういう形態で活動をやっているから、人によっては、「バンドを解散した人たちが、アコースティックという形で音楽を楽しんでいる」と見る部分もあって。でも、この形をとっているのは趣味とか遊びではなくて、新しい形での挑戦なんです。プロジェクトに参加しているメンバー一人ひとりがすごくストイックで向上心があるからこそできるものなので。今まで積み重ねた経験と、これから先に進むためのストイックな気持ちが、それぞれのプレーヤーの存在を示していると思うんです。そういう意味で、まだまだ自分の存在意義というものを示していきたいなと思います。…僕はきっと来年の抱負でもこれと同じことを言うんじゃないかな(笑)。

――手鞠さんの中で、それは永遠のテーマなんですね。

手鞠:そうですね。人前に出ることを抜きにしたとしても、自分はそういうタイプなんだと思います。それができなかったら、人間の魅力って何もないじゃんと思っちゃうタイプなので。

Soan:こういう言葉が出てくるあたり、さすがヴォーカリストですよね。

◆名実共にSoanプロジェクトwith手鞠の内容たるもの、という完成度に(手鞠)

――今回の作品は、1stミニアルバムを上回る完成度ですね。

Soan:良かったです!

手鞠:作っていて、そういう実感はすごく沸きましたよね。

Soan:共に1年歩んできた結果が、音源にもちゃんと反映されたのかなと思います。1stミニアルバム『静謐を制し征する音』の頃は、まだ手鞠君や他のメンバーのことを探りながら、自分が貫きたいものを融合していたんです。今回はメンバーに、「こういう風にやっていっていいんだ!」と思ったことをどんどん取り入れてもらったし、俺もメンバーに対して要求しても大丈夫なことがわかった。前作以上というのは正にメンバーの力があってこそだな、と思います。

――曲の合間に入るギターの1音やヴァイオリンのピチカートからも、メンバー一人ひとりの個性やバンドとしての一体感が感じられました。

Soan:足すところや抜くところは、皆でやっていくにつれてわかり始めたんです。確かにピチカートは、さっちゃん(Sachi)の良い部分だし、「ヴァイオリンだからこそ出せるあの音色を、もうちょっと前に出そう」ということも2ndミニアルバムの最終的なMIXでできたと思います。

――ところで、今回の2作品『旋律、静かな願いと。調律、その脈動に問う。』にテーマはあるんでしょうか?

Soan:作品自体の大きなテーマは置いていないんです。Soanプロジェクトはテーマを設けて作品を作るのではなく、まず手鞠君に曲を渡して歌詞を任せて、そうすると手鞠君が「こんなのができました」と持ってきてくれるので、「いいですね。じゃあこれをお客さんに提示してみよう!」と聴かせる。そしてお客さんに、「こんなのできたけどどう? 二人の力作ですごく自信があるから聴いてみてほしいんだけど」と提示して、良いレスポンスがあったら音源化するという流れなんです。音源のために曲を作るというよりも、聴いてもらいたいからライブ先行で聴いてもらうというスタンスなんですよ。ファンの子たちは本当に素直に全力で受け止めてくれるんです。心で感じてくれているのがわかるので、そういう声をもらうからこそ、曲を形に残したいという気持ちが芽生える。ありがたいです。

――今回の作品に先行して、今年4月14日に「林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。」が視聴で公開されましたね。

Soan:4月14日は元MoranのベーシストのZillの誕生日で。この曲は手鞠君に唯一明確なコンセプトとして「故人を思う追悼ソング」だと伝えた曲です。忘れたくなかったり、それを作品にすることによって風化や劣化をさせたくないという思いだったり…生きている以上、その対になる死というものは常に存在していて、そういうものも手鞠君が描くからこそできるんじゃないかなと思ってお願いしたんです。そうしたら期待以上の作品に仕上がって。以前、Moranで、HitomiとSiznaと俺の3人の時代に、Zillが書き残してくれていた音源をミニアルバムとしてリリースしたんですけど、そのタイトルが『Apples』なんです。それを手鞠君が知っていてくれたから、林檎というキーワードを出してくれた。俺は歌詞を見た瞬間に、目頭が熱くなりました。

――この曲を聴いて不覚にも涙が出ました。

Soan:そうやって共感してくれるのは、すごく嬉しいです。手鞠君の言葉が確実に深みをもたらしてくれていますね。

手鞠:この歌詞は僕の立場だからこそ書けたものかもしれないです。僕は、Zill君というよりサブちゃん(三狼)という、前のステージネームで呼んでしまうくらい、前のバンドからの付き合いがあって。「もうすぐステージに帰ってくるから、そうしたらMoranとamber grisで対バンしようね」って約束をしたりして。だからこそ嘘を書かずに、必要以上に過剰なお涙頂戴の演出を用いずに、自分とSoanさんの気持ちを純粋に込めることで、歌詞を書けているんじゃないかなと思います。

Soan:確かにそうだね。

手鞠:あと、2作目全部に言えることなんですけど、歌詞が1作目以上に、Soanさんの思うものに僕自身がいい意味で影響されていて。1作目は、Soanさんが好きでいてくれていたex.amber grisの手鞠、という部分で歌詞を書いていたんですけど、基本のロジックは一緒でも、今はSoanプロジェクトの手鞠として歌詞を書けている気がして。それは多分、この活動の中で、いい意味で影響されているからこそだと思ったし、それがすごく今回の作品に出ているからこそ、名実共にSoanプロジェクトwith手鞠の内容たるものだな、という完成度になったと思っています。特にこの「林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。」に関しては、そういうところが如実ですね。

――なるほど。そういう面でも前作以上にSoanプロジェクトwith手鞠としての作品になったんですね。この曲は掛け合いのところが特に心に響きます。

Soan:そこは狙って書いていたんですけど、手鞠君だったら汲んでくれるだろうと思ったら、想像以上で。

――掛け合いは祐弥さんの声ですよね。

Soan:そうです。祐弥の声質は本当に透明感があって綺麗で。ネタで「エンジェルヴォイス」って言っているんですけど、本当にそう思っているんですよ。

手鞠:それに、すごく歌が上手いとか声が良いだけじゃなくて、感情を込めてくれるし、思いを汲んでくれるんです。

Soan:祐弥の手鞠君に寄り添うスタンスがすごいんです。ストイックですよ。

――今回の収録曲は、最初の2曲に〈死〉という言葉が入っていたので、手鞠さんの中で何か意図するものがあったのかなと思ったのですが。

手鞠:僕の中で今の書き方のスタンスみたいなものにおいて、生き死にがポジティブやネガティブというものを超えてしまったんです。近年のシーンの歌詞の傾向において、すごく悪い言い方をすれば、〈生きる〉も〈死ぬ〉も、言葉がファッションになってしまった部分があって。ヴィジュアル系に関して言ってしまうと、その表現がどんどん上っ面になってしまう部分があった。そういう部分に対して自分はどう思うだろうとか、そういうものを再定義してみたいなということもあったし、あとは全てが暗いことではないと思って。

――〈死〉というものが?

手鞠:はい。人間誰しも遅かれ早かれ、いつかは死んでしまうわけで。でも人間が死ぬのは、花が枯れるように美学だと思っているんです。死ぬまでにどうやって生きるか、どう生きて死を迎えるか、胸を張って笑って死ねるか、という過程が大事だと。その日に向かうにあたって、一生懸命生きるという姿勢が、最終的に死に辿り着くゴールだと考えたくて。だから全体を通して、死を書いているからと言ってネガティブではないという方向に表現したかったんです。

Soan:自分の曲を作るスタンスとして、常に人間の感情がテーマになっていたり、曲によっては輪廻転生などの一連の流れをテーマにしていたりするんです。それを手鞠君が自分なりに噛み砕いてくれるので、音楽的にも言葉的にも、より聴き入れやすいんじゃないかと思います。死だからネガティブで暗い、ただそれだけじゃなくて、必然的に起こるものだったり、いつか覚悟しなくてはいけなかったりする。そういういろんな角度で一つのテーマや言葉を提示できているんじゃないかと思います。

◆曲だけじゃなく、歌も歌詞もバックのメンバーのスーパーアレンジも聴いてほしい(Soan)

――ところで、今回の6曲は全て、ピアノだけ、ギターだけ、ドラムだけと一つの楽器で始まっていますね。

Soan:そういえばそうですね。今言われてみて、「あ、確かに!」と思いました。Soanプロジェクトはメンバーと音数が限られているので、自然と一つの楽器でスタートして、最後は徐々に抜けていって、1個か2個の楽器で終わる…そういうパターンが多いかもしれないです。

――その中で、一つひとつの楽器の存在感が際立っていますね。

Soan:そうなんです。だからライブも含めてシビアですよ。ものすごく張り詰めた緊張感がありますからね(笑)。

手鞠:ここまでキャリアを積んで来ている方々なのに、ワンマンで自分が最初の音を出す曲はガチガチになるって皆さん言いますもんね(笑)。

Soan:特に祐弥はよく言うね。「あぁ…俺スタートか…」って(笑)。独特な空気を手鞠君が作り上げてくれているので、確かに緊張するんです。でも、だからこそ面白いと言うか。手鞠君は毎回ライブでその場のテンションみたいなものを入れて微妙に変えてくるんですよ。ある程度は一緒にセットリストを決めて、台本はこんな感じで、と構築するんですけど、やっぱり間に入れてくるアドリブ感はヴォーカリストだなと思うし、名俳優だなと思いますね。

――あのライブでのアドリブ…すごいです。

Soan:恐いですよね(笑)。

手鞠:本当に申し訳ない(笑)。僕はチームプレーは大好きですけど、やっていることはかなり個人プレーだったりするんです。なので周りの皆さんには「ストライカーとして点は確実に取りに行きますから、ケツはマジでお願いします!」と頼り切っている部分があって(笑)。

Soan:ストライカーだからこそ、こっちも万が一手鞠君がシュートを外したとしても対応できるようにしているんです。楽しいですよ(笑)。

手鞠:ありがたいし、こういうところがバンドだなと思いますね。

Soan:Soanプロジェクトは、個々の役割が明確なんです。「僕はこれをやっておけば大丈夫」というところがあるので、メンバーも歌詞を書かなきゃ、生み出さなきゃ、という苦労はもちろんありますけど、音に対して向き合える時間は多いんじゃないかなと思うし、それはすごく良いところだと思っているんです。そこら辺のバンドには、全然負けないですよ!

手鞠:確かに、どこよりも超ナマモノですからね(笑)。

――今回の収録曲の中で、特に好きな曲はありますか?

Soan:俺が個人的に好きなのは、略して「白雪姫」(「焦燥の日々の帷、憔悴する白雪姫(スノーホワイト)」)です。この曲は最初、いつもの“人間の感情”よりも、“日本の四季”のイメージがすごく強くて。手鞠君に、「春なのか冬なのかわからないけど、桜か雪が降っているんだよね」と伝えて判断を委ねたんです。だから春がテーマになっても全然OKだし、場所は雪原だろうが、ちょっとした豪雪地帯だろうが、雪山だろうが、どこを想像してもらっても構わない。手鞠君に任せます、と伝えて出てきた歌詞で。

――中でもお気に入りの言葉はありますか?

Soan:〈コーヒー〉という単語ですね。自分が日本の四季で和をイメージして作ったにもかかわらず、カタカナの言葉を入れてくるというところに手鞠君の文豪ぶりを感じました。他のアーティストだったら、もっと和っぽい感じの言葉を入れてくると思うんです。でも手鞠君は曲に沿いつつ、そういう言葉を入れてくるから、やっぱりすごいなと思って。すごくお気に入りです。

――あの歌詞を見て目の前に情景が浮かびました。

Soan:吐息の感じというか、コーヒーを飲んでハーッと息を吐くときの情景が浮かびますよね。それが、コーヒーを飲まない俺にも思い浮かぶからすごい(笑)。そういうところが、手鞠君が言っていた、「Soanプロジェクトの手鞠として歌詞を書けている」という言葉通り、進化している部分なんじゃないかなと思います。これは曲だけじゃなくて、歌も歌詞もバックのメンバーのスーパーアレンジもしっかり聴いてほしいですね。

――先ほど春か冬かわからない、と言っていましたが、AメロのSoanさんのピアノで雪のちらつく情景が浮かびました。

Soan:お、雪っぽいと思ったんですか! 手鞠君とシンクロしましたね(笑)。俺はすごく悩んでいたんですよ。何かが舞い散っている感じはしたんですけどね。

手鞠:僕もどうしようかなと思ったんです。でも個人練習のときに、まだ歌詞が付いていない状態で軽く口ずさんでみたら、雪のイメージだなと思って。もしこれが桜のイメージで進行していたら、歌い方のニュアンスが全く違って、ファルセットを使う位置も変わってきたと思うんです。これが雪だからこそ、今の位置での地声とファルセットの使い分けであったり、声の中のブレス感や、強弱の調整であったりがこういうふうに歌われていると思うので。

――そうやって細かく歌詞を分解して歌っているんですね。

手鞠:僕の場合はそうですね。正直言ってやりやすいんです。Soanさんの曲は「ピアノの人が作る曲の作り方」という感じがあって。with手鞠のキーは基本的に高めなんですけど、僕もエレクトーンで音楽に入った人間なので、Soanさんの作るメロやピアノのフレーズに感情移入しやすいし、楽しいんです。

――手鞠さんは、今回の収録曲の中で気に入っている曲は?

手鞠:僕もこの「白雪姫」と、もう一つは略して「質量」…もしくは「熱量」(「相対する質量の交錯する熱量」)ですね(笑)。低音からサビに向かう展開の曲の広がり方が、デモの段階からすごく好きで。これは自分の得意分野かもしれない、と言ったら変ですけど、技術以上のもっと感情的な部分が求められている気がして。この曲ではそういうものが歌に乗せられたので、Soanさんの要求してきたものに対して、自分が答えられる力が身に付いてきているな、という実感がすごくありました。特にその2曲は自分の中で好きな曲ですね。

◆それはそれはおぞましい…真夏の夜の夢は悪夢なのか…!という一夜に(手鞠)

――さらに今回、初めて英語のタイトルの曲「sign… -resonance-」が収録されました。

手鞠:この曲は元々Soanプロジェクトwith芥の「sign…」という楽曲なんです。この曲をwith手鞠でアレンジしてやりたいんだけど歌詞をどうしようかという話になったときに、ぜひ芥君が書いた歌詞を僕が読み解いて、自分なりの歌詞を書きたいと伝えたんです。

Soan:「sign…」は、with芥の1stミニアルバム『慟哭を鼓動として道とする音』に入っている「透過幕」という曲がアンサーソングになっているんですけど、Soanプロジェクトだからこそできる遊び心だと思いますね。手鞠君が芥をリスペクトしつつもライバル、というところから、自分なりに解釈して「sign…」の手鞠バージョンを書いてくれたんです。それでサブタイトルを入れてくれたんだよね。

手鞠:そうです。共鳴、共振の意味の「resonance」という言葉をつけさせてもらいました。

Soan:曲調も全然違うので、お客さんからしても聴き比べという意味でサウンド的にも面白いし、芥vs手鞠みたいなところも面白いと思います。「手鞠君はこうやって解釈したんだ!」と思えるんじゃないかな。

手鞠:リハで初めて歌ったときに、Soanさんが一番びっくりしていましたね。「with芥で聴いていた歌詞とメロだったから、不思議!」って言って(笑)。

――Soanさんから見て、「sign… -resonance-」は手鞠さんらしいなと思いましたか?

Soan:そうですね。元々この曲を手鞠君に解釈してもらいたい理由がもう一つあって。この曲は明確に淡い恋心を歌っていて、芥の中でもかなりドストレートな歌詞なんです。それを手鞠君はどういうふうに解釈するんだろう、というところも楽しみたくて。

――相変わらず贅沢な楽しみ方ですね(笑)。

Soan:贅の極みです(笑)。すごく楽しかったですよ。今後は逆バージョンもやっていきたいです。手鞠君の歌詞を芥がどう汲み取って違うものにするのか、というのも聴いてみたいので。

――楽しみです。それにしてもこの2Aの〈痣の数とその位置が増える度〉の怖さと優しさがたまりません。

手鞠:ありがとうございます。

Soan:手鞠君は歌詞が残酷なんですよね。なのに暴力的に聴こえないところが、手鞠君のすごいところだなと思うんです。ただ傷つけているだけではないというか。冷静すぎて、恐いと言えば恐いんですけどね(笑)。

手鞠:サイコパスっぽいですよね。

Soan:それはあえて言わなかったのに(笑)!

――〈痣の数〉と〈キスの数〉を対比で書いていますからね…手鞠さん、恐いです(笑)。

手鞠:紙一重でサイコパスなのかもしれないですね(笑)。バンドをやっていなかったら危うかったのかもしれないな。バンドをやっていて良かったです。

Soan:いやいや、犯罪者にはならなかったでしょう(笑)。でも、そこまで深く芥のことを手鞠君が考えているからこそできる技だと思いました。

――『旋律、静かな願いと』は、色々な意味ですごい作品になりましたね。

Soan:めっちゃ嬉しいです。Soanプロジェクトの2年目は、これがもっともっと広がるといいなと思っているんです。聴いてもらえるチャンスがあるんだったら、とにかくそれを掴みたい。2年目はイベントにも物怖じせず出ようと思うし、「俺たちはこういうスタイルでやっているから聴いてくれない?」と伝えていけたらいいな、と思っています。この音源を携えて一人でも多くの人と出会って、この音と向き合う時間が作れたらいいなというのが、今後のSoanプロジェクトwith手鞠の目標ですね。

――今夏はたくさんのライブが予定されていますが、中でも8月22日にShibuya Rexで行われる「真夏の夜の夢 偶像女装-ドーリィオブロリイタ-」がとても気になります。

Soan:あはは! これはコンセプトワンマンなんです。ひょんなことから、ちょっと風変りなことをやっても面白いんじゃないかなと思って。この間、手鞠君と突き詰めたんですけど、ヴォーカリストが手鞠君だから、そんなに変な感じにはならないかなと(笑)。

手鞠:どうなんですかね。いっそのこと「あまりに恐くて、ライブ後しばらく経っても夢に出てくる!」という感じになってくれたほうが良いかも…(笑)。そういう印象が植え付けられたら勝ちですからね。

――何しろ「倒錯と狂乱のロリイタパーティー」ですからね。

手鞠:それはそれはおぞましい…真夏の夜の夢は悪夢なのか…!という一夜になるかと(笑)。

Soan:一体どうなるのか、ぜひ遊びに来てください。

(文・後藤るつ子)

ARTIST PROFILE

Soanプロジェクトwith手鞠

<プロフィール>

ex.MoranのSoanによる新プロジェクト。「静」と「動」の二つの表現の場を設け、それぞれのヴォーカリストとして手鞠(ex.amber gris)と、芥(Chanty)を迎え入れた。Soanの誕生日である2016年6月1日に行われた高田馬場AREAでの1stライブを皮切りに活動を展開。2017年1月、Soanプロジェクトwith芥が1stミニアルバム『慟哭を鼓動として道とする音』を、2月にはSoanプロジェクトwith手鞠が『静謐を制し征する音』をリリースした。8月22日にはShibuya REXでSoanプロジェクトwith手鞠 Oneman Live「真夏の夜の夢」を行うことが決定している。

■オフィシャルTwitter
https://twitter.com/soan_official

■オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/moran-soan/

■SoundCloud:Soanプロジェクトオフィシャルアカウント
https://soundcloud.com/soan_project

【リリース情報】

旋律、静かな願いと
2017年8月9日発売
(SPEED DISK)

旋律、静かな願いと
S.D.R-317
¥2,600+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

01. 正否の相違、或いは利害の不一致
02. sign… -resonance-
03. 林檎の花の匂いと記憶野に内在する存在。
04. 相対する質量の交錯する熱量
05. 焦燥の日々の帷、憔悴する白雪姫(スノーホワイト)
06. それを僕は普遍と呼び、君はそれを不変と詠んだ

【ライブ情報】

●Soanプロジェクトwith手鞠 Oneman Live「真夏の夜の夢」
8月22日(火)Shibuya REX