ギルガメッシュ

ついに再始動したギルガメッシュ! 約9ヶ月間の沈黙の理由、そして最強に生まれ変わった彼らが放つ約1年ぶりのニューシングル『INCOMPLETE』に迫る!

昨年10月、バンド史上最大キャパとなる日比谷野音公演を終えて以降、沈黙を続けていたギルガメッシュがついに動き出した。約9ヶ月間の沈黙を破り7月に行われた新曲披露イベントで発表されたのは、今作『INCOMPLETE』とニューアルバム『MONSTER』のリリース、そして10月13日のSHIBUYA-AX公演。この1年間に何があったのか。彼ら自身が答えを見つけ出し最強となった今、満を持して放つ『INCOMPLETE』について、左迅(Vo)とЯyo(Dr)に話を聞いた。

◆自分が信じる音楽、サウンドを俺は作っていくって覚悟を決めた(Яyo)

――『斬鉄拳』以来約1年ぶりのリリースということでVifもそれ以来の登場となりますが、この1年間を振り返ってみてどんな1年でしたか?

Яyo:長くなりますよ(笑)。

左迅:覚悟しといてください(笑)。

Яyo:結構ブラックな内容ですけど、フランクに喋るんで(笑)。

左迅:ざっくり話すと、昨年10月の野音ワンマンライヴで本当はアルバムの発売を発表したかったんです。曲もアルバムを2、3枚作れるくらいの曲数は作っていたんですけど、メンバーの中でその楽曲に対して納得できていない部分があって。そういうものを出すのは自分たちにもファンのみんなにも嘘をつくことになるので、ライヴをストップさせて制作に没頭せざるを得ない状況になったんです。その制作期間を経て、自分たちが探し求めていた答えが形となったので、また表舞台に戻ってきました。

――ということは、野音の時には沈黙期間に入るということが既に決まっていたんですね。

左迅:そうですね。納得できる音源が出せないということはバンドの活動もストップせざるを得なくて。自分たちの中で答えが固まっていないままバンドを動かすのはブレが生じてくると思うし、答えが出せないまま進むのは有り得ないなというのがあったので、仕方なかったですね。

Яyo:単純に何にも決まってなかったので止まらざるを得ない状況だったんですよ。結局はメンバーのベクトルがずれていたというのもあって。レコーディングするはずだった曲自体は良いものだったんです。ただ、そこでのしがらみが会社とかで。俺ら、敷かれたレールの上を全力で突っ走るのはめちゃくちゃ得意なんですよ。ただ、今までそのレールを敷くってことをやったことがなかったんです。会社とバンドの関係や関わる人員も変わってきたりして、ブレが出てきたんですね。ちょっと深い部分なんですけど、根本があっち向いてる人もいれば、こっち向いてる人もいる。そういうのが浮き彫りになっちゃったんです。次どうしたらいいかわからない。でも、そんなの自分で考えろってことなんですよ。そこが今まで無かったんです。「こういう風にやってみるのもいいんじゃないか?」「よっしゃ、そこに向けてマジで作るぜ!」っていうのが今までで、「どうしようね」って言われたから止まっちゃった。で…どこから説明しよう。長いんで。

――大丈夫です。

Яyo:俺はファンの方全員に謝りたいんですよ。わけわかんなく活動が止まっちゃって、本当に申し訳ないと思うんです。それはメインコンポーザーで一番バンドの舵を握っている人間である俺のブレが一番でかいんですよね。もう雁字搦め。茶の間受けする曲も作らないとダメだぞとか、この数字のままだと武道館見えないぞとか、そういうものにずっとビビリながらやってたんですよ。こうしないと会社に利益が出ない、じゃあこういうアプローチしたら数字上がるかな? 結局上がらなかった。そういうことが続いて、どうすればいいかわからなくなっちゃって。本当に板挟みですよ。曲は書けない、メンバーには早くしてくれとか言われるし、ソロをやり始めちゃう人もいるし、事務所の人で「先輩のような歪んでないギターで」とか言う人もいるし。「もうわかんねー」って鬱になっちゃって。メンバーとも2、3ヶ月会ってなかったです。去年の年末くらいですかね、「何のためにやってるんだろう? 俺音楽好きなはずなのにな」って、すげー悩んじゃって。でもこの状況が一番よくないというのはわかっていて、とにかく何か行動を起こさないと、と思っていました。そもそも俺は売れるために音楽やってんのかな?とか、大した売り上げになってないかもしれないけど会社に金積むために音楽やってるわけじゃないんだけどな、どうすりゃいいんだろうってずっと考えていて。で、もうどうでもいいやって吹っ切れちゃったんですよ。

――何かきっかけがあったんですか?

Яyo:ギターの弐さんとはいつも曲作りをしていたんですね。あいつが「好きなもの作れよ」ってずっと背中を押してくれていて。でも俺は間を取りたかったんですよ。こういう状況だからバンドと会社の折り合いがつく曲じゃないとダメなんじゃないかな、そうしたらもっと一般層にも受け入れられる…そういう考えを全部捨てたんです。で、年末くらいに吹っ切れ始めていて、会社の人には「先輩のように空間に広がりのある曲で歪んでいないギターの曲を持ってきた方がいいんじゃないか?」とか言われてたけど、「俺らギルガメッシュなんだけど」みたいな。もう売れなくてもいいし、会社クビになってもいいやと。ただ、俺が作りたい音楽はいっぱいあるんですよ。で、自分が出した答えっていうのが、俺にしか作れないものを作ろうと。そうしたら、曲がポンポンポンポンできるようになったんです。もう会社なんて無視ですよ。真逆なことをやってるんですよね。ギターは7弦になってるし、ギャンギャンに歪んでるし。選曲会があって「ダメだ」って言う人もいたけど、空間云々言っていた人は「いいね!」って言ったんです。その時点でもうよくわからないじゃないですか。その人は頻繁に会う人ではなくて、傍から見ていてちょくちょくアドバイスをくれる人だったんですけど、その人が「いいね!」って言ったわけです。あれ? この人「空間が…」とか言っていたのになぁと(笑)。でも、結局は自分で答えを出したってことが良かったのかなって。もう綺麗に吹っ切れちゃったから…強いですよね、今(笑)。

――最強ですね。

Яyo:気持ちは最強ですね(笑)。何かに惑わされて心が折れるってことはもう絶対にないと思います。惑わされたのも結局自分の心が弱いからなんですよ。意思が弱いとか、根本がしっかりなかったから浮遊する状態になっちゃう。そこの気持ちの持ち方をピッと変えた時に強くなれましたね。そもそも俺にしか作れない曲ってあるんですよ。これ(『INCOMPLETE』)なんて俺にしか作れないです。そこに自信を持てたかな。自分が信じる音楽、サウンドを俺は作っていくって覚悟を決めたから。

――この1年間のЯyoさんの気持ちやバンドの葛藤が歌詞に表れていますね。

左迅:そうですね。Яyoが話したようにバンドとしても意思が弱い部分があって、そこが原因で活動がストップしてしまったというのもあるので、この時期のことを忘れないように戒めの意味を込めて「INCOMPLETE」の歌詞を書きました。本当に夢を叶えたいんだったら死ぬ気でやれよ、と。中途半端なんだったらやめちまえ、そのぐらいの意思を歌詞に表して。この曲を歌う度にこの時期のことを思い出して「お前らブレんじゃねーぞ」と。夢を叶えたいと思っている人もこういう覚悟を持って突き進んでいってほしいなという気持ちもこもっている曲ですね。

――未完成を意味する「INCOMPLETE」というタイトルはどのようなところから?

左迅:バンドって未完成だからこそ、ああいう曲やりたいな、もっと上手くなりたいなとか、常にそういう向上心で成長していくものだと思うし、それが原動力となって活動していくものだと思うので、自分たちが常に未完成だということを胸に活動していこうという思いを込めています。

――ちなみに、仮タイトルはあったんですか?

Яyo:「調律崩壊G#」です(笑)。

全員:(笑)

Яyo:ギルガメッシュが初めてギターに7弦を導入した曲なんですよ。7弦のチューニングというのが、普通は一番低い音がBなんですね。それをさらに一音下げるとG#なんです。もう調律もクソもないんですよ(笑)。調律が崩壊していてチューニングがG#なので「調律崩壊G#」(笑)。調律をちゃんと勉強した上で楽曲を作れとか言われていたんですけど、そんなの無視してこの仮タイトルで会社に持っていきました(笑)。

――(笑)。今作の楽曲はシングルで出すという前提で作ったものですか?

Яyo:そうでもないですね。俺はこの時期にアルバムを出してもいいと思っていて。次に『MONSTER』というアルバムが出ますけど、そこを目がけて作っていて、もうシングルはどれでもいいよっていう感じだったんですよ。左迅のゴリ推しがあって、この曲(「INCOMPLETE」)になりました。

――c/wの2曲については?

Яyo:「Limit Break」は去年の夏ツアーでやっていたんです。この曲はおもしろいから、どうにか今のモードで作り直したいなと思って。音源化していない曲だったので、まっさらな状態から今の気持ちを乗せて作り直したものですね。「takt」に関しては最新のダブステップやブレイクダウンをふんだんに取り入れた歌謡曲です。俺の表現したい歌謡曲って、音楽理論から外れているようなものだったりちょっとアプローチが変だったりするんですけど、「俺にしかできないものを作ろう」って気持ちが切り替わってから作った、最新のサウンドを取り入れた歌謡曲ですね。

――「INCOMPLETE」はギルガメッシュならではの打ち込みが効いていますが、Яyoさんは作曲段階でどの辺りまでサウンドのイメージができているのでしょうか?

Яyo:白紙の状態から絵を描くのと一緒ですよ。まずこういうものを作りたいなという土台が頭の中でできるんです。俺、楽器全部をやるので、初めに鳴っているものから手をつけていくんです。ギターが主軸ならギターから作っていくし。それをどんどん録音していく。頭の中で鳴っている音はどんどんぶち込んでいくんですよ。土台ができてから打ち込みとかではなくて、生楽器も打ち込みも同時ですね。レコーディングが終わってからスパイス的に細かいものを入れたりとかはありますけど。

――前回は「計算し尽くして狙えるところは狙えた」とおっしゃっていましたよね。

Яyo:狙ってたわけじゃないですか(笑)。敷かれたレールの上で言われるがまま狙えるところを狙ったんですよ。もちろん「斬鉄拳」も「絶頂BANG!!」も過去の作品も良いものですよ。その時の一生懸命な気持ちは絶対変わらないです。ただ、レールはこれからは自分たちで答えを出していくということです。

――今回のMV、自然の中でのギルガメッシュという画が新鮮ですね。

左迅:歌詞のメッセージ性だったり活動をストップさせていたことをMVでも伝えたくて。色々なしがらみに縛られていたギルガメッシュが、自分たちで答えを出して自分たちの音楽を解き放って進んでいくという意味が込められたものなので、手錠で縛られているけどそこから抜け出して広い世界に放たれるというもので表現したかったんです。

――最後はギルガメッシュとギルガメッシュが対峙するところで終わりますよね。

左迅:「お前らそんなんでいいのか」っていう意思をぶつけ合って、答えを出すというものを表現したかったですね。

Яyo:要は縛っているのも自分自身なんだなと思って。自分の気持ちがあんなんだから会社にビビったりするんだなと。そういうものが上手く表現されているMVだと思いますね。

◆1分1秒1ステージ1ステージを命懸けてやっていかないと(左迅)

――c/wの楽曲についてですが、個人的には「Limit Break」はサビメロの印象だとテンポ200超えでもありな曲なんじゃないかと思いました(笑)。

Яyo:(笑)。初めて左迅と一緒に作った曲で、一体感が欲しかったんですよ。サビでみんな叫ばせたいというか、全体を巻き込むような画が見られる曲を作りたくて。新しいバージョンになってどういう反応になるかわからないですけど、自信はあります。新しく生まれ変わったものを聴いてもらって、またライヴを熱くさせたいですね。

――今作には高速チューンはないですね。前作「斬鉄拳」は高速でしたしね。

Яyo:次のアルバムにさらに高速で勢いある曲があるので、期待してほしいですね。爆弾を作ってる最中です。

――それは楽しみです。そして「takt」の歌詞に関してですが、左迅さんから“シンフォニー”というフレーズが出てくるとは意外でした。

左迅:ははは! なるほど(笑)! 俺のキャラからこんな言葉が出てくるなんてっていう感じですね(笑)。歌詞の部分でもっと表現力豊かに、もっと自分の人間性を出して深みを出していきたいなという思いがあって、そういうものを勉強していたのもあったんです。バンドが窮地に立たされて、あと何回ステージに立てるんだろうとか、あと何曲、曲を作れるんだろうとか考えた時期でもあって、1分1秒1ステージ1ステージを命懸けてやっていかないといけないなという思いがすごくあったので、それを歌詞にしました。

――先ほど“歌謡曲”とおっしゃっていましたが、こういうバラードというか…

Яyo:バラードでもないんですよね。んー。俺が作るものって言葉で表現できないんですよ。でもやっぱり歌えて聴けるものは好きで。聴けないものを俺のフィルターを通して聴けるようにするというのがすごく得意なんです。わー!!って言ってるだけの曲って聴けないじゃないですか。ストーリー性を大事にしているんです。でもバラードっていうわけでもない。それが俺にしかできないことだったりするのかなと思ったりもするし。

――こういうタイプの曲は久しぶりじゃないですか?

Яyo:そうですね。今回のシングルはバランスがいいと思います。次のアルバムのビジョンを見せておきたいなという部分もあるし。

――シングルとアルバムのリリースを同時発表してしまうのがすごいなと思いました。

Яyo:これだけ地下に籠っていたからちょっと展開が必要なんですよ。その展開を生むのにシングルの場所っていうのは外せなかったので。「Limit Break」「takt」はこのシングルでしか聴けないからぜひ買って聴いてほしいなと…だから両方買えと(笑)。

――(笑)。7月22日に新曲披露イベントがありましたが、ファンの方々の印象はいかがでしたか?

Яyo:泣いてる人もいましたね。待っていてくれたんだなぁって思ったし、待たせてごめんっていう気持ちもありました。何より俺は緊張しましたね。今回めちゃめちゃ難しいんですよ。たかが3曲だけどずっと楽屋で震えてましたもん(笑)。曲も難しいし生配信もあるし、お客さんも9ヶ月ぶりの久々のライヴだし。ハンパねーっすよ。開場するまでずっとドラム叩いてました(笑)。相当練習しましたね。

左迅:3曲で燃え尽きないといけなかったので、テンションの持っていき方をすごく大事にしました。1曲目から最高のボルテージに持っていくために、イメージトレーニングしたり集中する時間をもらって自分を高めていって。そのテンション感のコントロールが難しかったですね。

――この日披露された「INCOMPLETE」以外の2曲はアルバムに収録されるんですか?

Яyo:入ります。

――10月13日にはSHIBUYA-AX公演が控えていますが、野音は豪雨で新曲披露イベントも少し雨が降りましたね。

左迅:そうですね(笑)。

Яyo:絶対晴れます。降らせない(笑)。

――この日はアルバムの曲が聴けるんでしょうか?

Яyo:もちろんやります。アルバムの曲も昔の曲もやりたいですね。今のギルガメッシュや未来のギルガメッシュを見せられるライヴにできたらいいなと思います。

――そして11月には昨年に引き続き「Vampire Circuit」(※2012年から始動したLOUD vs VISUALのイベントライヴ。今年の出演:SiM、jealkb、NOISEMAKER、ギルガメッシュ)も決定していますが、このイベントにかける強い思いがありそうですね。

左迅:お! ありますね。ヴィジュアル系ってすごく勝手な決めつけをされるシーンだと思うんです。ヴィジュアル系だからライヴは観ないとかいう奴らが多くて。自分たちもそういう勝手な決めつけを植え付けられた経験があってすごくムカついてたんですね。だからこそ、シーンの違うバンドたちと一緒にライヴをする時は、自分たちのライヴを見せつけることによってそういう決めつけをぶっ壊したいという思いがあるんです。今後もそういう対バンをどんどんしていってヴィジュアル系というものの見え方を自分たちで変えていきたいと思っています。

Яyo:要は敵があんまりいないんですよ。俺らは音楽にすごくこだわるし、だから音楽面でしっかりしているバンドとやりたいなと思う。ヴィジュアル系の中でも色々ジャンル分けされていてすごく極端じゃないですか。各バンドでお客さんが求めているものが違ったりするので、意味がないんですよね。なので、ヴィジュアル系でもしっかり音楽を追究してやっているバンドと一緒にやりたいなと思うし。あとやっぱりSiMとかcoldrainとかめっちゃ強いんで刺激になるんですよね。熱量がハンパないんで。そこで得るものは大きいし同年代なので悔しさもあるんですよね。そういう刺激を受け合って成長していければ一番楽しいんじゃないかな。

左迅:単純に自分たちがカッコイイと認めているバンドたちとやりたいですね。

(文・金多賀歩美)


ギルガメッシュ

<プロフィール>

2004年から地元千葉県で左迅(Vo)、弐(G)、愁(B)、Яyo(Dr)の4人で活動を開始。ヘヴィーなミクスチャー・サウンドは海外でいち早く評価され、これまでにヨーロッパへ3回、アメリカへ1回遠征の経験をもつ。国内では2010年に新木場コーストでワンマンを、2011年には地元・市川市文化会館での凱旋ライヴを大成功に収めた。2012年3月には13日間連続公演を敢行、その後シングル2枚をリリース、10月にはバンド史上最大キャパの日比谷野外大音楽堂公演を行った。その後、約9ヶ月の沈黙期間を経てシングル『INCOMPLETE』とアルバム『MONSTER』のリリースを発表。10月13日にはSHIBUYA-AX公演が決定している。

■オフィシャルサイト
http://www.girugamesh.jp/

【リリース情報】


初回限定盤
XNDC-30042
¥500(tax in)

通常盤
XNDC-30043
¥1,575(tax in)

『INCOMPLETE』
2013年9月11日(水)発売
(デンジャー・クルー・レコーズ)
約9ヶ月間の沈黙を破り、約1年ぶりにリリースするギルガメッシュのニューシングル。初回限定盤には今秋リリース予定のニューアルバム『MONSTER』予告編を収録。

【収録曲】
初回限定盤
1. INCOMPLETE
2. 6th ALBUM『MONSTER』予告編 -demo ver.-

通常盤
1. INCOMPLETE
2. Limit Break
3. takt
4. INCOMPLETE-inst-