インタビュー

168 –one sixty eight-インタビュー

168 –one sixty eight-

葵(彩冷える)の新プロジェクト「168 –one sixty eight-」が動き出した。“美しいもの”を意味する至高の1stシングル『雪月花』に込められた想いに迫る!

“168”という不思議な名前もさることながら、待望のメジャー1stシングルのタイトルは、真夏には既に遠い記憶となった“雪”の文字を冠した『雪月花』。葵が“この世で最も美しいもの”を歌い上げたというこの作品には、実に深く切ない想いが濃縮されている。遂に始動した新プロジェクト「168 -one sixty eight-」で、新たな一歩を踏み出した葵に話を聞いた。

◆元カノと再会したみたいな感じでした(笑)。

――まずは、今回始動したプロジェクト「168」についてお聞きしたいのですが。

葵:ずっとバンドでヴォーカルをやってきて、2010年にバンドが活動を休止してからはソロ活動をしてきたんですが、ソロのライブの時にスタジオミュージシャンの方にサポートをしてもらってもどこかしっくりこなくて。「もっとこうできたらいいな」というのが心のどこかにあったんです。それがバンドなのかなと思って。

――具体的にはソロのライブとバンドにどんな違いを感じたんでしょうか。

葵:スタジオミュージシャンの方々とステージに立つことと、今までヴィジュアル系のバンドでやってきたミュージシャンとステージに立つことには大きな違いが一つあるんです。前者は譜面どおり、こちらが求めているものを100%出してくれるけど、それ以上のものは提示しない。それに対して、後者はそれぞれ自分の色を持っていて、良い意味でも悪い意味でも予知できないものをくれる。そういう人たちと音をぶつけ合った時に、想像以上のものが生まれることがあるんです。自分はそれを求めているんじゃないかと。

――それこそがライブの醍醐味かもしれませんね。

葵:そうなんです。それを感じたのが、この春、昔一緒にバンドをやっていた涼平(メガマソ)と「葵&涼平(incl.アヤビエメガマソ)」のツアーをやったときなんです。今回プロジェクトに参加してくれたNAOKIくん(ex Kagrra,)と輝喜くん(アンティック-珈琲店-)も一緒にツアーを回ったんですけど、みんなそれぞれキャラクターを持っていて、それがぶつかったときに生まれるものがすごく魅力的で。自分が出したいものはこれなんじゃないかと。僕は、バンド活動は彩冷えるを最後にしようと思っているので、正式なメンバーを集めてバンド活動をすることは恐らくもうないんですが、バンドっぽいプロジェクトができたらいいなと思って、この168という形になりました。

――今回のプロジェクトの参加アーティストは、NAOKIさんや輝喜さんのように元々接点のあった方で固めているんでしょうか?

葵:実は今回のプロジェクトでは、“その都度違うミュージシャンと組む”、というのを一つの醍醐味にしようと思っているんです。レコーディング、PV、赤坂BLITZ(7月29日に行われるワンマンライブ)のステージ、限定盤のDVDのライブ映像もメンバーが違うんですよ。その都度違うミュージシャンと音を重ねて、その時生まれる音に期待してほしいし、自分も楽しみにしています。

――メンバーが固定のバンドでは出せない予想外の音が生まれそうですね。

葵:そうなんです。たくさんいるアーティストの中でもその都度その都度の化学反応を出せる団体はなかなかいないと思って。コンセプトとしては毎回違う人に頼めたら良いなと。

――それは面白い半面、ものすごく大変なのでは?

葵:はい。そもそも僕、人見知りなんですよ。それは公にしている僕の個性なんですけど、このプロジェクトでそれが克服できたらいいなと(笑)。音楽って表面的な部分だけじゃダメで、相手の深いところまで知らないと同じ曲は演奏できないから、これは僕にとってはかなり過酷なプロジェクトなんです。NAOKIくんと輝喜くんはツアー「葵&涼平」でもお世話になったからいいんですけど、ギター陣がYUKIさん(DUSTER-3)とsebastianさん(BULL ZEICHEN 88)という先輩方なので…。

――なかなかドMなプロジェクトかも(笑)。

葵:そうなんです(笑)。かなり自分に鞭打つ感じで。でも引き締まるし、良いものができるんじゃないかと思っています。

――変化するバンド形式ならではの化学反応がありそうで楽しみです。バンドといえば、先ほど彩冷えるのお話が出ましたが、6月29日に一日復活ライブがありましたよね。

葵:ええ。解散したわけではないので、復活というのもおかしいんですけどね(笑)。喧嘩別れではなく、お互い目指すものが変わっていたから今は別々の道を歩んでいるんですが、あの日は純粋に音楽を楽しみました。今後どうするというのは全くないですけど、また機会があればまたやってもいいのかなと。でも今はお互いの活動を大切にしつつ、という感じですね。

――2年ぶりに同じステージに立ってみていかがでしたか?

葵:正直な話をしちゃうと、楽屋とかリハーサルでは元カノと再会したみたいな感じでした(笑)。

――わかりやすい例えですね(笑)。

葵:(笑)。仲は良いんですよ。でも何か微妙なんですよね。ちょっとだけしっくりこなくて。ただ、本番直前にステージの袖で気合入れをしたあたりで2年前に戻ったというか。気まずさもないし、昔一緒にライブをやっていた頃の続きみたいでした。ステージングも、打ち合わせてないのに昔みたいにできちゃうって不思議ですよね。楽しかったです。

――一緒に音楽をやるってそういうことなのかもしれませんね。

◆宝石や芸術品もあるけど、一番美しいのは命なんじゃないかと。

――では改めて、今回のシングル『雪月花』について教えてください。

葵:『雪月花』というのは、日本語で“美しいもの”を表わす言葉なんです。実は、最近父が末期がんで亡くなって。歌詞は病院に付き添うときに書くことが多かったんですが、その時、一番美しいものって何だろうと考えたんです。宝石や芸術品もあるけど、一番美しいのは命なんじゃないかと。命の美しさや儚さをテーマに書くと同時に父親のことを歌っているのが「雪月花」です。

――タイトルにはそういう意味合いがあったんですか。

葵:はい。命は美しいものであって、それを別の言葉に置き換えるときに「雪月花」と言う言葉にしたんですけど、夏にリリースするシングルで“雪”が付いているタイトルにするのにちょっと悩みました。でも、“雪”“月”“花”の三文字が並んだときの言葉の美しさや意味合いはリンクするかなと思って。

――曲の背景を知ってさらに深く曲が聴けそうです。ところで今回のシングルに収められた4曲は、全て“君”と“僕”が登場していますが、曲ごとに対象が違っているんでしょうか。

葵:「雪月花」の“君”は父です。「SCANDAL」と「サヨナラセカイ」はまた違う対象で。収録曲は「雪月花」が今回歌いたいものの中心で、「SCANDAL」と「サヨナラセカイ」は対になっていて全く真逆のものを歌っているんです。最初に言っておかないといけないんですけど「SCANDAL」は僕のことを歌ったわけではないです(笑)。

――あれ? 葵さんの実体験かなと思っていました(笑)。

葵:いやいや(笑)。芸能界ってこういうところなんじゃないかっていう憧れをそのまま言葉にしました。ただ、パッと聴いて「葵の実体験じゃないか?」と思ってもらえるくらい生々しくて危なっかしい歌詞でもいいのかなと。

――この危うさ、今までの葵さんにはない感じですよね。

葵:ヴィジュアル系のアーティストって綺麗な世界とか、人間の汚い部分を表に出す人があんまりいないと思うんです。でも、生々しいものを書いてもいいんじゃないか、というチャレンジでもあります。歌詞は、ソロの時は、ほぼ100%僕の実体験を書いていて、バンド時代はどちらかというと実体験とは離れた空想や物語を書くことが多かったんですが、168では自分の体験や想っていることを踏まえつつ、思っていることを書いていこうかなと。

――先ほど葵さんはご自分を人見知りだと言っていたこともあって、こういう歌詞は意外でした。

葵:ステージを降りると人見知りしちゃうんですよね(笑)。昔から文化祭でもステージには絶対立てない人間だったんですけど、そういう人でもこんな歌詞が書けるんだぜ、という(笑)。どちらかというと「サヨナラセカイ」(初回生産限定盤A収録)の歌詞の方が自分に近いですね。

――「サヨナラセカイ」の歌詞の中で〈僕より劣っている君を見付けては安心してる〉という歌詞が衝撃的だったのですが。

葵:誰しもこういう気持ちはあると思うんです。自分より劣っている人を探している。そんなことしちゃダメだと思ってもしちゃうんですよね。僕はランキングをされる立ち位置にいるので、自分よりランキングで上の人、下の人を見て何とも思わないかと言えばそれは嘘になりますし。そんなことも思いつつ、ここに間違いなく響く言葉を置いたのも事実です。そこをピックアップしてもらって嬉しいところでもありますね。

――この赤裸々感が聴き手に強烈に響くのかもしれませんね。

葵:アーティストなのでそんなに守ることはないのかなと。綺麗な言葉に差し替える必要もないんじゃないかと思うんです。

――葵さんは歌詞をすごく明瞭に発するヴォーカリストなので、その詞世界がさらにダイレクトに伝わります。

葵:歌詞は小説じゃないし、ポエムでもない。歌に乗って耳に届くものじゃないですか。聴きとれなかったら意味がないんですよね。レコーディングの時も口の形を意識しているし、できあがったときも、ボーっと聴いていて聴きとれないようならやり直すし。そこは綺麗に歌うことよりもこだわっています。想いが届かなかったら意味がないですから。

――とてもリアルに情景が浮かびました。ところで、この「サヨナラセカイ」の“君”は誰なんでしょう? さっき言っていたランキングで上や下にいる人たち?

葵:これは僕自身でもあります。僕は殻を破りきれないところがあって。〈素直な気持ちのままで傷付けること言ったから〉という歌詞もあるんですが、言いすぎちゃうと傷つけたり、言葉が多いと伝えたいことが濁ってしまったり。そういう世の中で自分をはっきり提示しなくてはいけないな、と。

――この曲は聴いた人それぞれの形で心の深い部分に響くと思います。

葵:そうだったら嬉しいです。僕はソロで歌詞を書くときは、起承転結と最後に自分なりの答えを提示していたんですが、「サヨナラセカイ」は答えを提示していないんです。みんな生き方や考え方が違う中で、聴いた人がどう思うかは人それぞれだし、こういう歌って答えがあったらいけないのかなと思って。

――確かにそこには人それぞれの答えがあるのかもしれませんね。

葵:ちなみに僕はこの歌詞を書いていて一番自分と向き合えて、すごく落ち込みました。

――落ち込んだんですか(笑)!?

葵:はい。ネガティブだなーと思って(笑)。“サヨナラできないセカイ”ですから、そこでどうやって生きていくのかというのが伝わればいいなと思います。

◆音楽は伝えたいものがあるから作品にするのが一番だと思う。

――今回、全曲シングルA面になりそうな、キャラクターの強い曲が揃いましたが、「雪月花」は映画の主題歌、「SCANDAL」は挿入歌ということで映画のストーリーに則って書かれたものなんでしょうか。

葵:ストーリーに則って書いた曲はないんです。「SCANDAL」は映画監督と話しつつ方向を決めた感じではありますけど。「Dancin’ Viper」(初回生産限定盤B収録)だけは映画とは無関係ですね。

――「Dancin’ Viper」はどういったいきさつでできたんですか?

葵:ソロの頃からライブでやっている曲なんですが今回初の音源化です。ライブのために書いた曲で、良い意味でも悪い意味でも適当に作っていて(笑)。

――適当(笑)!? 曲のタイトルはどういう意味なんでしょう?

葵:ヴィジュアル系のライブってファンの振りが独特で、ステージから見ていると踊っている蛇みたいに見えるんです。それでこのタイトルにしました。この曲は、お客さんのために歌っているので、歌詞の内容もそのあたりを意識していて。例えば、ライブ会場で周りの子たちを気にして声が出せなかったり、踊れなかったりするじゃないですか。それじゃもったいないから〈理性なんてお荷物はロッカーに入れて〉楽しもうよ、と。あと「バンギャル」って言葉を歌いたいがために歌詞中に「アバンギャルド」って言葉を入れて(笑)。

――なるほど(笑)!

葵:音源では「アバンギャルド」って歌ってますけど、ライブでは「バンギャル」って歌ってます。遊べる曲ですね。あと、今まで100曲以上歌詞を書いてきた中で、唯一一人称が「俺」な曲です。

――初の「俺」解禁ですか。

葵:はい(笑)。「ここ聴いとけよ」ポイントですね。僕、ライブ中にオラオラモードに入っていると一人称が「俺」になるので。

――男らしい葵さんがパッケージされているわけですね。それにしても今回の4曲は、良い意味でテイストがバラけていて、168の多面性を感じました。

葵:どれもリリースのために作った曲じゃなく元々あった曲だからかもしれませんね。僕はリリースするために曲を作るんじゃなくて、ライブをするとか、伝えたいことがあるから曲を書くというのが正しい気がするんです。

――とても正しい音楽論を聞いた気がします。

葵:音楽ってそれでいいと思うんですよ。今回メジャーデビューシングルですけど、いろんな世代の人に届くものだから歌詞を綺麗に書いてとか、一番伝わりやすい世界観でとか、そういう面倒なものを取っ払って。音楽は伝えたいものがあるから作品にするのが一番だと思うし、そういうのが「Dancin’ Viper」には表れているかなと。ただ単にライブで楽しみたいがために作った曲なんですけど、それが正しい形な気がする。ライブをやるから曲作んなきゃ!っていうのが一番大事なことじゃないかと思うので。

――純粋な衝動で作った「Dancin’ Viper」をライブで聴くのが楽しみです。ところで、7月29日の赤坂BLITZでのライブはチケット代が168円なんですよね。

葵:最初のライブなので、たくさんの人に見てほしいという気持ちはあります。あと、今回数字にまつわるプロジェクトなので、そこは事務所に泣いてもらって(笑)。

マネージャー:はー…(ため息)

――マネージャーさんがため息ついてますけど!?

葵:あはは(笑)。あと、今回は時間も168にこだわろうと思っていて。昼84分、夜84分の合計168分でできたらいいなと。ステージにカウントダウン形式の時計を置いて、夜は、昼が終わった時点での168分の残りの時間からスタートしようと計画中です。でも僕、MCがすごく長いから、喋りすぎると最後の曲が途中で終わるかも(笑)。それをご了承いただくための168円でもありますので(笑)。

――どうなるのか予測不能で楽しみです。

葵:すっごくハラハラすると思いますよ(笑)。これからも色々面白い事や刺激的なことをやっていこうと思っています。楽しみにしていてください。

(文・後藤るつ子)

168 –one sixty eight-

<プロフィール>

2004年「彩冷える」を結成。2010年12月をもって「彩冷える-ayabie-」を活動無期限休止し、2011年よりソロ活動を本格化。2012年、満を持して新ソロプロジェクト『168 –one sixty eight-』を始動。7月29日に赤坂BLITZでプロジェクト名にちなんだ168円のデビューライブを開催し、8月8日には映画『ハピネス イン リトル プレイス』の主題歌でもある『雪月花』を徳間ジャパンからリリースする。

■オフィシャルサイト
http://aoism.com

ライブ情報
SOLD OUT!!
■168 -one sixty eight- 1stワンマンライブ『激情スコール』
チケット代はプロジェクト名にちなんだ168円!

7月29日(日)赤坂BLITZ (1部:14時開演、2部:18時開演)
168 -one sixty eight- 1stワンマンライブ『激情スコール』

確定サポートメンバー
Gt. YUKI (from Λucifer、現DUSTAR-3)
Gt. SEBASTIAN(from BULL ZEICHEN 88)
Ba. NAOKI(from ex.Kagrra)
Dr. 輝喜(from アンティック-珈琲店-)

■1st single「雪月花」 発売記念イベント開催!
http://www.tkma.co.jp/j_pop/168/news_detail/id=2488

8月7日(火)札幌cube garden
8月8日(水)SHIBUYA TSUTAYA
8月9日(木)あるなる金山、名豊ミュージック豊橋本店 特設会場
8月10日(金)大阪あべのHOOP
8月11日(土)仙台リトルハーツ

【リリース情報】

初回生産限定盤A
CD+DVD
TKCA-73801
¥1,800(tax in)

初回生産限定盤B
CD+DVD
TKCA-73802
¥1,800(tax in)

通常盤
CD
TKCA-73803
¥1,300(tax in)


『雪月花』
2012年8月8日発売
(徳間ジャパン)
遂に動き出した葵のソロプロジェクト「168 –one sixty eight-」第1弾シングル。のびやかな歌声で紡ぐ切なくも美しいその世界観は圧巻。

【収録曲】
初回生産限定盤A
[CD]
1.雪月花
2.SCANDAL
3.サヨナラセカイ

【DVD】
1.雪月花MV+168初出しライブ映像A

初回生産限定盤B
【CD】
1.雪月花
2.SCANDAL
3.Dancin’Viper

【DVD】
1.雪月花MV+168初出しライブ映像B

通常盤
【CD】
1.雪月花
2.SCANDAL
3.雪月花 Instrumental
4.SCANDAL Instrumental