2012.10.21

JROCK EVOLUTION 2012@Legacy Taipei

 

 

10月5日(金)のシンガポール公演、10月7日(日)のジャカルタ公演と満員のオーディエンスを集め、“日本のネオビジュアルシーンここにあり!”と世界に向けて発信し続けているイベント「JROCK EVOLUTION 2012」の台北公演が10月21日(日)Legacy Taipeiにて行われた。

イベントとして海外で公演が行われる最後となったこの日、開場前から長蛇の列が並び会場は詰めかけたファンで埋め尽くされた。海外3か所を通じ、共通しているのはファンの期待感だ。国内アーティストとは異なり、決して簡単にパフォーマンスを見ることができるわけではない異国のヒーローたちに向けられた輝く眼差しはどこも同じものがある。しかし見届けたいのはMUCC・Alice Nine・ギルガメッシュの3組がその期待に応えることができるか? ではなく、彼らがどれ程その期待を凌駕していくかであり、ファンと共に開演の時間を今か今かと待った。

 

 

 

期待が高まる中、会場の照明が暗転。悲鳴に似た歓声が沸いた瞬間、鳴り響いたのは小気味の良いSE。自然と会場に巻き起こるハンドクラップに乗ってギルガメッシュがアジアに初上陸! 押しも押されぬ代表曲「Break Down」を初っ端に披露し、台北のファンをギルガメッシュのライヴの世界に一気に引き込んでいく。続けざまに披露した「CRAZY-FLAG」「driving time」など初めて聴いてもどこか体が動いてしまう、彼らの持ち味が存分に表れたヘヴィデジタルとロックが見事に融合した楽曲達は挨拶代わりの先制パンチと言ったところか。

 

そして「今晩は!ギルガメッシュです」と現地の言葉で挨拶を挟んだ後は正にやりたい放題! 台湾でもリリースされた新曲「斬鉄拳」をお見舞いしたかと思えば、「sunrise」では左迅(Vo.)先導のもと会場にタオルが縦横無尽に振り回される中、MCや各曲の煽りも現地の言葉で繰り広げられ、会場は更に一体感を増していく。「絶頂BANG!!」では「ダンスを踊りましょう!」と左迅(Vo.)の誘いに弐(Gt.)のギターソロからのキレのある(?)ダンスを披露し、台北のファンを笑顔と熱狂の渦に巻き込む。ラストナンバー「evolution」でしっかりとライヴを纏め、ヨーロッパ・アメリカでの単独ツアーを敢行した経験を持つ彼らのさすがのライヴ運びと常に全力の暴れっぷりに会場は満面の笑顔に包まれた。

 

 

そして、こちらも満を持しての台湾初上陸となるAlice Nineがいよいよステージに。ギルガメッシュが温めたステージが暗転するや否や、荘厳なSEがビートを刻み始め、スポットライトを浴びたギターのヒロトと虎が繰り出す「閃光」のギターリフに合わせ、オーディエンスが拳を突き上げる。つづく「RAINBOWS」とライヴの代表曲を立て続けに演奏し、会場を一気にAlice Nine色に染め上げる。「ダージャ―ハゥ、ウォーメンシ―、アリスナイン」と現地の言葉を交え「これまで長い間待ってくれていた台湾のみんな、今日は忘れられない夜にしようぜ!」とオーディエンスの気持ちを一つにすると「そんなみんなに送る次の曲、日本ではライトを照らしてみんなで星空を作るので、今日はみんなも思い思いに楽しんでください!」とつづけた「FANTASY」では、携帯電話やライターなどの光が会場中を見事な景色で埋め尽くした。

 

後半戦では「TSUBASA.」「RED CARPET GOING ON」と激しいアップナンバーが続き会場をモッシュの嵐にすると、最後のMCでは「みんな何年待ってくれた? 三年?四年?八年? 本当にありがとうね」将の問いかけに、手で数字を表して何年も待ち続けた想いをぶつけるオーディエンスに対して「もっと気軽に来れるように僕たちも頑張るのでこれからも待っていてください。そんな君たちのために心をこめて、この曲を送ります」と初期の名曲「春夏秋冬」を披露。会場全体が大きな愛に包まれ、ラストの「the beautiful name」では、「Earth of silence, Confused universe, Graced the beautiful name, And I sing buzz love song」と会場全体でコーラスが鳴り響き、つづくトリのMUCCへとの橋渡しをしたステージをおりた。

 

 

ギルガメッシュ・Alice Nineと毛並みの違う2アーティストのサウンドに温まりすぎる程に温まった会場に最後に現れたのはMUCC。「フォーリングダウン」「ファズ」と2組のライヴを見終えたファンにはあまりにも攻撃的すぎるナンバーをまずお見舞いすると会場が壊れるのではないか!?と思う程のジャンプが巻き起こる。”台北のファンもまだまだ力が有り余っている”そう感じたのだろう。「アゲハ」「絶望」で圧倒的な音圧を浴びせたかと思えば一転“雨のオーケストラ”を抒情的に届ける。本当に同じアーティストなのかと思う程彼らの変幻自在の姿に驚かされると共にその変化の一挙手一投足を見逃すまいというファンの強い視線が印象的なシーンだった。

 

途中のMCでは逹瑯(Vo.)が「久しぶり!ただいま!」と現地の言葉を交えて挨拶すると会場からは、「おかえり!」と歓声が沸いた。MUCCの台湾公演は今回で4度目。温かく迎えてくれた台北のファンに現在進行形のMUCCを見せつけるかの如く、リリースが迫る新曲「MOTHER」や「アルカディア」「ニルヴァーナ」などここ最近の楽曲達を中心に構成されたブロックを最後に持ってくる辺りは“今の俺たちを良く覚えておけよ!”という彼らから台北のファンへの強いメッセージに他ならないのだろうと思った。最後は「リブラ」まだ終わりたくない表情を浮かべるファンに対して心を込めて感情豊かに歌い上げると「See you next time」とまたの再会を予感させ、自身の「陰」と「陽」の顔両面を目まぐるしく覗かせた圧巻の60分間は幕を閉じた。

 

各地に産み落とされた芽がこのまま枯れてしまわないことを願いたい。シンガポール・ジャカルタ、そして今回の台北と出演アーティストが確かに残したファンへの喜びや希望が消えることなく、更に大きな輪となって世界に広がって欲しいなと切に思った。そうすればまたどの国でも素敵な景色が見れると。「JROCK EVOLUTION 2012」は、いよいよ11月3日(土・祝)のZepp Tokyo公演にてグランドフィナーレを迎える。冗談ではなくこれ程のメンツを1日で見ることができる日は今後無いかもしれない。来るべきその日を心待ちにしていて欲しい。

 

 

(写真・大木大輔)