ライブレポート

2013.1.13

黒夢@新宿LOFT

新宿LOFT「master+mind」presents【Rock is Culture 2013】

〜黒夢 LIVE AT 新宿LOFT 2013.1.13〜

 

 

1月13日、東京・新宿LOFTが異様な熱気に包まれた。同夜、この老舗ライブハウスのシークレットキャストとしてステージに立ったのはなんと黒夢。世代やジャンル感を超越しながら新たな可能性を見出すことを目的としながらシリーズ化されている同会場主導によるイベント、『master+mind』の拡大版として1月7日から1週間にわたって展開されてきた『Rock is Culture 2013』の千秋楽を、この会場とも所縁の深い彼らが飾ることになったのだ。

 

かつてこのライブハウスが同じ新宿エリア内の違う場所にあった時代、そこで黒夢が行なった公演の模様は『1997 10.31 LIVE AT 新宿LOFT』としてライブ・アルバム及び映像作品化されており、そのライブ自体がいわば伝説化している。黒夢を当時から追い続けてきたファン、その時代をリアルタイムで体験することが不可能だった新世代のファンの双方から熱視線を集めた今回のライブのチケットは、ライブハウス公演でありながら9,600円という破格であるにもかかわらず瞬時にして完売。550人の幸運な観客で埋め尽くされたフロアは、開演前から酸素不足を感じさせられるようなありさまだった。

 

場内が暗転したのは午後7時16分のこと。いわゆる復活作にあたる『Headache and Dub Reel Inch』(2011年11月発売)の冒頭に収められていた「Enter Loop」が流れるなか、サポート・メンバーの大橋英之(g)と楠瀬拓哉(ds)が配置につき、続いて人時と清春が姿を現すと場内の温度は一気に上昇。前述のアルバムと同様に、ステージは「13 new ache」で幕を開けた。清春は「新宿!」「暴れろ暴れろ暴れろ!」と幾度もオーディエンスを挑発しながら、シンプルかつ強靭なバンド・サウンドに、艶めかしくも攻撃的な歌声を絡めていく。

 

新旧を織り交ぜながらのセットリストによるステージが終了したのは、二度目のアンコールに応えた彼らが最後の最後に「BEAMS」を演奏し終えたときのこと。過剰なほどの濃密さとスピード感に観衆は時間経過を忘れていたはずだが、その頃には開演から2時間以上が経過し、演奏曲目も人時のベース・ソロを含めて全23曲に至っていた。詳しい演奏内容についてはこの場では触れずにおくが、とにかく重要なのは、黒夢という特異なバンドが、いまだに“枯れ”とかレイドバックとは無縁であり続けているということだろう。逆に言えば、こうして挑発的であり続けることが黒夢の成熟のあり方なのかもしれない。ライブが後半に差し掛かった頃、清春は「この先にも滅多にない機会だから、伝説にしましょう」と語っていたが、実際、この夜のライブは1997年10月31日のそれと同様に、この先も永きにわたり語り継がれていくことになるに違いない。

 

 

「後遺症」と「sick」の連射という過激な展開を経てライブ本編が終わり、アンコールに応えてステージに登場した際に清春は、「一発目のライブがこれって、今年は思いやられます」と笑いながら、「大変な状況になるとわかっていたのにやらせてくれた」と、新宿LOFTに対する感謝の言葉を述べ、改めてこの会場に対する思い入れや憧れを口にした。また、「じゃあ今後の予定……」と言いながら観衆の嬌声を誘うと、「ありません。今日を楽しむだけです」と語っていたが、さらには「人生のうちにどれだけ滅茶苦茶な記憶があるか」が、その人の一生が幸せなものだったかどうかを左右するはずだとも述べ、オーディエンスに「それをいっぱい作って! 俺も作るから」と告げ、「また人時とステージに立ちます」と、その場に居合わせた誰もが望んでいたはずの言葉を投げかけてみせた。

 

2人の今後の動きについては、現時点においては何ひとつ確定的なことが語られていない。が、この夜の清春の言葉に嘘はひとつもないはずだ。そして今、黒夢のオフィシャルサイトを訪れてみると、謎めいたカウントダウン画面がポップアップされるようになっている。果たしてこれが示唆するものは何なのか? “復活”がゴールであるはずのない黒夢の物語が、またひとつ新たな局面を迎えようとしているのかもしれない。それを予感しているのは、筆者だけではないだろう。

 

 

(文・増田勇一)