Angelo

Angelo

Angelo史上最高のニューアルバム『RETINA』が完成!
“網膜”を意味するコンセプチュアル作品が映し出す本質とは…。

Angeloが生み出した新たな作品『RETINA』。キリト(Vo)の言葉を借りるなら「一言では言いきることができない」コンセプチュアルな作品でありながら、そのサウンドは彼ららしさとともに今後のAngeloをも予感させる。“網膜”を意味するこの一枚に内包される物事の根源とは。キリトが思う愛の形とは。Angeloの新たな幕開けともなる今作について、キリトにたっぷりと語ってもらった。

――今回はキリトさんにいろいろとお伺いしようと思いますので、よろしくお願いします。

キリト:はい、よろしくお願いします。

――完成した今現在の心境はいかがですか?

キリト:いやーしんどかったなっていう…(笑)。やりたいことがギリギリになっても出てきていたので。クリエイティブな欲求というのがやるほどに出てくる感じだったので、それを物理的に作業としてやることが大変だったんです。ただ、そういう気持ちにならなければやらなくても済むことなのにやるってことは、やりたい衝動の方が強かったということで。

――一番しんどかったのはどの時期ですか?

キリト:やっぱり最後の曲になってる「RETINA」は、アルバム制作開始時にはまだ存在していなかった曲なので、それを作ってるときが物理的には一番大変だったんですよ。

――そうなんですね。今作は作曲者がキリトさん6曲、Karyuさん6曲でちょうど半々ですよね。

キリト:はい、偶然です。

――前半と後半で割りと固まっている感じがありますが。

キリト:まぁ、誰作曲とか関係なく曲で並べた感じですね。

――では曲順はスムーズに決まりましたか?

キリト:うん。普通にライブでセットリストを決めるみたいに、歌詞の内容の前後はそんなにこだわらなくてもいい作りだったので、単純にサウンドとして並べて聴いたときに飽きない並べ方に。ドラマ展開みたいなものも歌詞の世界観っていうよりサウンドを聴きながらそういう展開を考えて並べました。

――Karyuさん作曲のナンバーが増えたことによるAngeloとしての変化はありますか?

キリト:前までは全部自分が請け負っていたので、良くも悪くもキリト色一色になってしまっていたときに、それとは違うKaryuの要素が半分入ることで音楽的な幅が広がり、可能性がグンと広がった感じはします。

――そういえば10月4日の「天使の日」ライブの際、Karyuさんがご自身のことを「いろいろな可能性を秘めている」とおっしゃっていましたよね。

キリト:自分で言ってました? じゃあ、そうなんじゃないですかね(笑)。

◆思いっきり壁が取れた瞬間だった

――今作、1曲目が少し他と毛色が違うように感じたのですが、いかがでしょう?

キリト:こういう始まり方もおもしろいかなって。アルバムの1曲目はいつも考えるんですけどね。まずどういう風に思ってもらおうかっていうのが1曲目に出るから、そこで聴いてくれる人の予想を裏切るというか、「あ、こんな感じで来るんだ」みたいなものを持ってくるというか。

――Angeloネクストステージの幕開けという感じがしました。メイントラックを「シナプス」(Karyu作曲)にした理由とは?

キリト:MVを作るに当たって、シングルでは出してないですけど、このアルバムの中でのシングル的な名刺代わり的な曲。映像になってプロモーション的にも聴いてもらう1曲としてはバランスがとれてるかなって。聴きやすさもあり、アルバムの本質もちゃんとありながらも、いろいろな人に興味を持ってもらえるんじゃないかと。

――新しいAngeloサウンドだなと思いました。「シナプス」に関しては、初披露した「天使の日」ライブよりも前に聴かせていただいたんですが、第一印象で「すごくキャッチーだな」と思って。キラキラしたデジタル音が入っていたり、Karyuさんっぽくない明るさというか。最初に原曲を聴いたときの印象はいかがでしたか?

キリト:やっぱりそういうキャッチーさも感じたし、1曲抜き出して名刺代わりにするには良いんじゃないかと思いました。

――コーラスが特に印象的ですよね。音源はどなたの声ですか?

キリト:僕がやってますよ。デモに入ってるKaryuの声もミックスしてます。

――そうなんですね。ここであえて「シナプス」以外でキリトさん的おすすめ曲を選ぶならどれでしょうか?

キリト:やっぱり最後の「RETINA」ですかね。サウンド構築がこの時点で次を見据えているというか、俺自身、長年曲作りとかバンドのサウンド構築をしてきた流れの中で、思いっきり壁が取れた瞬間だったんですよ。苦しい時期だったけれども。苦しんだおかげで急にポンッと開けた感覚があって。それがひいては今後のバンドサウンドの可能性の扉をパン!と開いた感じがあるので。らしさもちゃんとありつつ、サウンド構築が新しいところにいってるというか。

――この曲で終わるのは結構意外でした。

キリト:そういう意外性がむしろ欲しいと思ったんですよね。僕の曲ではありましたけども、元々全然違うタイプの曲だったんですよ。もうちょっと綺麗に終わるような予定だったんだけど、急にそれが嫌になって。「これは本質じゃない」ということで、このアルバムの自分の中で根底にある本質をできるだけサウンドにしたいなと。

――かなり変わったんですか?

キリト:もう方向性は180度違います(笑)。

――それは大変(笑)。ではこの曲が今後のAngeloの方向性…

キリト:…の一つが大きく出たんじゃないかな。

――歌詞はキリトさんならではの哲学的な世界観ですが、一番苦労した歌詞はどの曲ですか?

キリト:歌詞はそんなに苦労しなかったですね。難しいものを書くのは全然苦労しないんですよ。むしろ簡潔化する方が…。「事象の地平線」はあえてわかりづらい言葉を排除して、それでいてわかりづらい感情を出そうとした曲なので、むしろ言葉選びをあえてそういう風にする方が結構考えるというか。好き勝手な言葉を出したときは、もうぶち込めばいいんで(笑)、全然苦労はないんですよ。

――わかりやすくしようと思うと難しいんですね。この曲はなぜわかりやすくしようと?

キリト:んー。バラードだし。

――この曲には〈両極に浮かぶ矛盾さえも抱きしめて〉という歌詞がありますが、前回のインタビュー時に「人は矛盾を抱えて生きている」とおっしゃっていたので、そういうことが歌詞の中にも組み込まれているんだなと実感しました。そういう観点でいくと、歌詞的には「Script error」がキリトさんがよくおっしゃっていることが一番組み込まれている曲だなと思いました。

キリト:すごく今を表していますよね。我々が置かれている現状。

――「世の中には浅はかな愛の歌が溢れている」というお話も前回ありましたが、この「Script error」にもそういう歌詞がありますよね。やはりキリトさんが常日頃思っていることの一つということでしょうか?

キリト:本当に現実的な歌というか。まぁ僕は政治運動家ではなくて単なるミュージシャンなので、作品としてそういう世界観を作るだけで、それを聴いて何を感じてくれるかは聴いてくれた人の自由だし、何をどうしろって言ってるわけではないです。どっちでもいいです。

――でも基本的にはキリトさんが実際に思っていることを歌詞にすると。

キリト:そうそう。

――今までに、そうじゃない歌詞を書いたことはありますか?

キリト:んーどうだろうな。歌詞を書くうえで赤裸々に自分告白をすることが自分にとっての“作詞”ではないので、全然違う人格を設定して書くこともあります。そういうときは僕自身がどう感じるかっていうことではなくて、キャラクターになりきって憑依して言葉を出すから、そういう時はちょっと違うんじゃないですかね。近いときはもちろんあるし根っこにあるのは僕の考えだから、共通項はあるかもしれないけど。んー…まぁ自分が歌詞を書くときはキャラによって違います。

――そのキャラの中には思っていることの片鱗があったり…?

キリト:自分がそのキャラだったら何て言うかっていうところでは共通しているかもしれない。

――でも、浅はかな愛の歌は書かないですか?

キリト:いや、書けますし、書くならむしろものすごく浅はかに書きます。

――今後そんな曲が生まれることがあるかもということで(笑)。