Plastic Tree

◆もう「死ぬほどカッコいい!」と思うくらい(ナカヤマアキラ)

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――次は正さんによる「スウィング・ノワール」ですが、タイトルがお洒落ですね。

正:お洒落でしょ(笑顔)? お洒落にしたいなと思って。よりこの曲の胡散臭さが深まるなと(笑)。テーマとしては80年代の暗めのニューウェーブを狙って作りました。

――一聴してメロと歌詞の雰囲気が正さんぽいなと思いつつ、テンポ感が割とゆっくりめなのとオケの音色が少し意外でした。

正:メロディーに対してはこれくらいのテンポ感がいいかなぁという感じで決めましたね。エレクトロ要素はあるんだけど、あまりテンポの速い四つ打ちという感じでもないしなと。横ノリな感じというか。

――激しいものとは別の立ち位置で、ライブで楽しめそうな曲ですよね。

正:そうですね。それこそ踊れる曲になったらいいなと思っています。

――ちなみに、この楽曲の歌詞に〈五線譜〉というワードが入っていますが、「C.C.C.」にも入っていて、相変わらず正さんと竜太朗さんは通じ合っているなぁと。

正:(笑)。好きなワードなんじゃないですかね。単語として好きみたいな。

――プラっぽい単語でもあるなと思います。

竜太朗:前に使っていますからね。お馴染み単語(笑)。その表現が一番合う時に出す言葉です。最初に使ったのは「ロケット」(2000年7月リリースのシングル)か。

正:そうそう。

――ところで、「スウィング・ノワール」の歌詞に出て来る〈茶色の小瓶〉が意味するものというのは?

正:何なんでしょうねぇ。言ってしまうとなんかね(笑顔)。

――そこは聴いた方々に想像を膨らませていただくと。そして、次はアキラさんの「Light.Gentle.and Soul.」です。これはまた何だろうという引っ掛かりがあるタイトルですね。

アキラ:読むのが面倒くさい感じでしょ? それが一番良いなと思って(笑)。

――飛び回るようなイメージのエレクトロなサウンドが入っているのが、アキラさん好みの雰囲気だなと思ったのですが。

アキラ:あー、確かに好きですねぇ。この曲、パッと聴き、どうでした?

――「あ、アキラさんだな」と(笑)。

アキラ:俺はね、頭の中でこのリフを思い付いた時、カッコいいと思ったんですよ。もう「死ぬほどカッコいい!」と思うくらい。…リフだけね(笑)。でも…俺だけかぁと思って(笑)。誰もその感じを言ってくれない。

全員:(笑)

アキラ:思ったより伝わんねーなーと思って(笑)。この曲の感想について色々と言われるんですけど、難しいことはどうでもいいから一言「カッコいい」と言ってほしいんだよっていう。

――皆さん「カッコいい」は前提としてお話ししているんですよ!

アキラ:これを思い付いた瞬間、忘れる前にと思ってPCに飛び付いて作りましたから。ちゃんと書いておかないと明日には忘れる、ヤバイヤバイ!って。勢い余ってそういう行動をしました。

――そんなに急に思い付いたんですか?

アキラ:そう。「キター!」って。どんな時だったかは忘れちゃったけど、キタ感だけは覚えてる(笑)。ヤバイヤバイ、まだPC起動しないの!?と。録音してみて、やはりカッコいいぞ!と思いましたよ。作曲面白いなー面白いなーと思いながらやってました。

――この楽曲はリズムが特徴的で、個人的には特にBメロのドラムがカッコいいなと。

ケンケン:これはとんでもなくややこしいです。デモの段階からややこしくて、そのままやっちゃったのが、あぁ…もうちょっと簡単にしておけばよかったなと思って。アキラさんの曲は毎回そうなんです。やっていて楽しいですけどね。

――ライブに向けて練習しないといけないですね。

ケンケン:そうですね。この曲は時間を取られるんじゃないですかね。

竜太朗:これは取られますね…。

――間奏もリズム隊がメインですよね。

ケンケン:おー。

アキラ:そうだ、俺が休憩できる場所(笑)。

竜太朗:お茶くらい飲めますね(笑)。

アキラ:「二人で頑張ってねー」って(笑)。

全員:(笑)

――それと、アキラさんの歌詞に〈愛〉が出てきたことに驚きました。

アキラ:「メデューサ」も「Light.Gentle.and Soul.」も恋愛がテーマだからね。

――実は『doorAdore』の時に、アキラさんは恋愛をモチーフにした歌詞はあまりないですよねというお話をしていて、「今度書きましょうか?」と言っていたんですよ。

アキラ:マジで!? それが今回だったってこと!?

正:その時が来たっ。

――2年越しにその時が来ました。

アキラ:そうなのかぁ。恋愛って一番キャッチーな話題なので、それゆえに軽視していたんですけど、今回は使わせていただきます!と(笑)。まぁ、俺の気持ちを知ってという歌詞ではないですけど。

――次の「月に願いを」はケンケンさん作詞作曲ですが、個人的には唯一、作者が意外でした。

ケンケン:おー、そうなんですね。

――とてもドラマチックな曲ですね。おそらく「アンドロメタモルフォーゼ」とかの方向が好きな方はハマる曲ではないかと。

ケンケン:ほー、なるほど。好きになってもらいたいですっ。曲の構成は最初からあまり変えていないと思いますね。

――プラにありそうでなかったタイトルだなと。

ケンケン:後付けなんですけどね。ライブでどうなるんですかね。そのままなのかな。これ、同期ありましたっけ?

アキラ:ありますよ。…ていうか、そのままになってくれないと困るじゃないですか(笑)。

ケンケン:竜太朗さん、ギターは弾くんですか?

竜太朗:いや、弾かないね。弾いたほうがいいすか?

ケンケン:いやいや、いい感じに。

全員:(笑)

――歌詞の世界そのままの竜太朗さんの歌声が切なさを増幅させていて、さすが竜太朗さんだなと。

竜太朗:そのまま歌っただけです(笑)。佐藤さんの気持ちを代弁しようと思って。

ケンケン:Aメロの感じとかも同じ認識でしたね。ボソボソ歌うというか、まぁそうなるよなという歌い方でした。

――〈好きだとばれないように 胸の奥閉じこめ 隠すの〉という歌詞が可愛いなと。こういう実体験はありますか?

ケンケン:あ、ノンフィクションかどうかということですか(笑)? フィクションということにしておきましょうか(笑)。…そうですね、この子は可愛い子ですね。

――(笑)。ラストは竜太朗さんによる「エンドロール。」です。とてもキャッチーで楽しい気分で終わることができて、多幸感に包まれるライブの画が見えます。

竜太朗:本当ですか。ライブの画までは想像していなかったです。

――曲調とは裏腹に儚さのある歌詞が竜太朗さんらしいです。「エンドロール。」と名付けたのは、最終的な段階ですか?

竜太朗:曲を書いている途中からいくつか候補があって、その中で悩んでいたという感じですね。色々と浮かんじゃって。これはタイトルもメロディーも細かいアレンジの部分も、えらく悩みまして。レコーディングも一番迷惑をかけたかもしれないですね。

――曲順として最後になるという想定はしていたのでしょうか?

竜太朗:いや、曲順は正君が決めたので、そこまでは考えていなかったですね。可能性はあるかもなくらいの感じでした。

正:余韻の残り方がすごくいい曲だなと思って。あと、10曲というボリューム感的に、この曲で締めたほうがバランスが良く感じたんですよね。例えばあと2~3曲あるとしたら、「月に願いを」とかで締めたほうが今までのプラっぽいのかなと思うんですけど、今回は作品として風通しの良さが一つの特徴のような気もしていて、この曲はそれを象徴するような曲なので、最後かなと思いました。

――なるほど。風通しの良さというのは、とても納得です。

正:重厚感というところでいったら『doorAdore』でおそらく出来たので、今回はまたそれとはキャラクターの違う作品というところで。

◆これは言っておかないとと思っていた(佐藤ケンケン)

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――今回、作詞者と作曲者が一緒だったわけですが、この曲の歌詞を書いてみたかったなと思うものを挙げるならどれでしょう?

竜太朗:「メデューサ」は書きたかったですね。

ケンケン:もしもシリーズということですよね。「インサイドアウト」ですかね。

――まさかのシングル曲(笑)。

全員:(笑)

ケンケン:もしもシリーズだから。深く考えずに、この10曲の中で歌詞を書きたいと思うんだったら、これですね。

アキラ:「C.C.C」は俺に来るんじゃないかと思っていたんだよね。で、歌詞を助けるためにシーケンスを乗せるというところまで想像していたんだけど(笑)、自分で自分の曲の歌詞を書くということになって、「えー!」と。どこかの待ち時間で決まったんだけど、その前までは、今回歌詞は俺には1曲も来ないのがベストだなと思いつつ、そういうわけにもいかないだろうなというところで、一応想像まではしておこうかなと(笑)。

――そうだったんですね(笑)。

アキラ:あれは名古屋だったかな。自分の曲の歌詞を書きましょうとなって、皆「はーい」と(笑)。

竜太朗:アキラさんだけ一人足取りが重かったですね(笑)。

アキラ:いや、俺だけかなと思ったら、ケンケンさんなんて「マジすか…」って言ってて、俺より酷い人がいると思って(笑)。

竜太朗:確かに、ケンちゃんもヤバそうだった(笑)。何か知らないけど、テンションがローだなと思った(笑)。

ケンケン:(笑)。「月に願いを」は違う人が書くなら正さんかなと思っていたんですよ。サビのメロディーの感じも提案したのは正さんだったので、何かイメージがあるのかなと思って。リフレインする感じが合うんじゃない?という提案で、このメロになったんです。

正:そうだね、デモの段階ではサビの感じがちょっと違っていました。

ケンケン:だから、書いてもらったほうが早いんだろうなとは思っていました。でも、そんなに落ち込んでないです(笑)! あまりこんなことを言っていると、書きたくなかったみたいに思われる(笑)。

――(笑)。正さんのもしもシリーズは?

正:シングル曲は置いておいて、今回自分の曲は多分自分で書いたほうがいいだろうなとは思っていたんですよね。特に「あまのじゃく」は曲自体の解釈も難しい気がしたので、これは自分で書こうかなと思っていたし。ただ、どれが来ても面白そうですねぇ。

――そして、完全生産限定盤の豪華BOXが収録曲10曲を全てマキシシングル化した10枚付きという仕様で。これは前代未聞です。

正:僕もこれは見たことがないですね。

ケンケン:説明が難しいですよね。

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――各ジャケ写も作者をフィーチャーしたものになっていますが、何と言ってもケンケンさんのa●an感が一番のインパクトです。

ケンケン:(笑)。デザイナーさんが提案してくれました。これは言っておかないとと思っていたんですけど、自分で提案したわけじゃないですからね(笑)。でも、良い機会をいただきました。

――さらに新録の8曲全てMVを撮影したということで、凄過ぎます…。

竜太朗:いつもアルバムの時は、メンバーそれぞれ色々とやってみたいことを言うんですけど、今回はスムーズというか、やってみたいことが繋がっているというか。デモの段階でそれぞれの色がすごく出ているものだったので、シンプルに10にこだわってやってみようというところで、作詞作曲を一人がコンポーザーとなってやることもそうだし、10曲全部をシングルっぽくしてみたいなと。もちろん、その段階でスタッフも一緒に話し合っているんですけど、曲をもっと明確に見せられる方法は何かないかな…シングルだったらMVがあるじゃん…じゃあと。ただ、初めはあそこまでの話じゃなかったんですけどね(笑)。

スタッフ:最初は、スタジオライブ的な感じでトレーラーを作ろうという話だったんですけど、せっかくならということになって。

竜太朗:監督が「全曲違う感じに撮れるよ」と。こっちはそこまで頼んでなかったのに(笑)。アートワークもそうなんですけど、最近ずっと一緒にやらせてもらっているカメラマンさん、デザイナーさんも「何すか、それ」って言いながら結構面白がってやってくれていて。スタイリストさんも「全部衣装変えるんですか?」「いや、僕は言ってないですけどね」とか言いながら(笑)、それぞれがそれぞれの立場で頑張ってくれて、皆楽しんで付き合ってくれてできた感じですね。

――本当に大変だっただろうなと思いながらトレーラーを見ていました。

竜太朗:大変ではありましたけど、やる意義があったということですね。今はTwitterもあるから反応がダイレクトに聞けるじゃないですか。バンドの動向を気にしてくれている人たちにちゃんと伝わって、このアルバムを楽しみにしてくれているというのがわかったので、それだけでもとてもやる意義があったなと思います。

ケンケン:今は全曲が少しずつ繋がったトレーラーが公開されていますけど、この記事が出る頃には1曲1曲の映像が出るんですよ。それも楽しみにしていてほしいです。

――そしてリリース後に春ツアーがスタートし、ファイナルは5月6日KT Zepp Yokohamaです。最後に、ツアーに向けて一言お願いしたいのですが、たまにはジャンケンで決めましょう。

全員:(笑)※ジャンケン

竜太朗:いつもアルバムツアーは新しい曲を実演でやるというときめきが僕らにもあるし、皆は音源を先に聴いて来てくれるわけですから、やっぱりときめきがあると思うんですけど、それと同じくらい、初めてやる楽曲たちなので、自分たちのものになるかどうかという緊張もあって。もっと言うと単純にミスるんじゃないかとか(笑)。それはないように頑張るんですけど、そういう緊張もあり、独特の空気感を生むので、それを楽しめればいいなと思います。『十色定理』というアルバムタイトルなので、今回のツアーは10にこだわってやっていきます。アルバム通り10本それぞれの色にできればいいなと思っているので、なるべくたくさんの色を観に来てくれたら嬉しいなと思っています。特にファイナルのZepp Yokohamaは、初めての場所で初めての曲たちが多いツアーをやるというのは自分にとっても刺激があることなので、ぜひ観に来てほしいですね。

(文・金多賀歩美)

ARTIST PROFILE

Plastic Tree

<プロフィール>

有村竜太朗(Vo)、長谷川正(B)、ナカヤマアキラ(G)、佐藤ケンケン(Dr)によるロックバンド。1997年6月にメジャーデビュー。デビュー15周年の2012年、4度目の日本武道館公演を成功に収める。2017年、デビュー20周年“樹念”シングル2作を発表、初のトリビュートアルバムのリリースも実現した。2018年3月にアルバム『doorAdore』、2019年2月にB面集『続 B面画報』をリリース。7月には東京芸術劇場にて結成25周年“樹念”公演となる初のシンフォニックコンサートを開催。2020年、ニューアルバム『十色定理』を手に、3月27日から春ツアーをスタートさせる。

■オフィシャルサイト
http://plastic-tree.com/

【リリース情報】

New Album『十色定理
2020年3月25日(水)発売
(ビクターエンタテインメント)

十色定理
[完全生産限定盤]
(CD+10CDs+DVD+Photo Book)豪華BOX仕様
VIZL-1759
¥15,800+税
amazon.co.jpで買う
十色定理
[通常盤]
(CD)
VICL-65361
¥3,000+税
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

[CD]※共通
01. あまのじゃく
02. メデューサ
03. 潜像
04. C.C.C.
05. remain
06. スウィング・ノワール
07. インサイドアウト
08. Light.Gentle.and Soul.
09. 月に願いを
10. エンドロール。

[完全生産限定盤:シングルCD①「あまのじゃく」]
01. あまのじゃく
02. あまのじゃく[Instrumental]
03. あまのじゃく[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD②「メデューサ」]
01. メデューサ
02. メデューサ[Instrumental]
03. メデューサ[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD③「潜像」]
01. 潜像
02. 潜像[Instrumental]
03. 潜像[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD④「C.C.C.」]
01. C.C.C.
02. C.C.C.[Instrumental]
03. C.C.C.[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD⑤「remain」]
01. remain
02. remain[Instrumental]
03. remain[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD⑥「スウィング・ノワール」]
01. スウィング・ノワール
02. スウィング・ノワール[Instrumental]
03. スウィング・ノワール[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD⑦「インサイドアウト」]
01. インサイドアウト
02. インサイドアウト[Instrumental]
03. インサイドアウト[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD⑧「Light.Gentle.and Soul.」]
01. Light.Gentle.and Soul.
02. Light.Gentle.and Soul.[Instrumental]
03. Light.Gentle. and Soul.[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD⑨「月に願いを」]
01. 月に願いを
02. 月に願いを[Instrumental]
03. 月に願いを[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:シングルCD⑩「エンドロール。」]
01. エンドロール。
02. エンドロール。[Instrumental]
03. エンドロール。[Pre-production ver.]

[完全生産限定盤:DVD]
プラっと語リー酒~十色定理編~

【ライブ情報】

●Plastic Tree Spring Tour2020「十色定理」
3月27日(金)HEAVEN’S ROCK さいたま新都心VJ-3
4月4日(土)郡山 HIPSHOT JAPAN
4月5日(日)仙台Rensa
4月11日(土)NAGOYA ReNY limited
4月12日(日)金沢AZ
4月18日(土)DRUM LOGOS
4月19日(日)DRUM Be-7
4月25日(土)UMEDA CLUB QUATTRO
4月26日(日)京都 FANJ
5月6日(水・祝)KT Zepp Yokohama
※全公演延期

●「アルルカンサーカス」
6月6日(土)日本青年館
出演:アルルカン、Plastic Tree、vistlip、DEZERT
※公演中止