2011.4.30
黒夢@Zepp Nagoya
DAY OF LIGHT

 

去る3月29日、突如発表された黒夢・名古屋ライヴ決定のニュース。2月26日に行われた国立代々木競技場第一体育館での公演以降、ライヴスケジュールは全く未定だった彼らが、3月11日の出来事を機に急遽ライヴを行うことを決めた。「日々の中で少しでも光を感じられるきっかけのひとつになれば」という彼らの想いから、そのタイトルは「DAY OF LIGHT」――。続報として、さらに仙台・名古屋・大阪でも同タイトル公演の開催が発表されている。(5月14日よりチケットのプレイガイド一斉発売)

 

名古屋は黒夢が結成された地であり、活動休止を宣言した1999年1月29日名古屋ハートランドでのライヴ以降、約12年振りとなる地元でのライヴ。黒夢にとってもファンにとっても様々な想いが交錯していることは想像に難くない。しかも今回の会場はキャパは約1800といえどもライヴハウス=スタンディングスタイル。ライヴバンド黒夢の真骨頂、興奮と熱狂のステージは必至だ。

 

会場が明るいまま流れだした「FAKE STAR」リミックスのSEで高揚感に包まれたあと暗転すると、場内は歓声と共に拍手が湧き起こる。幕が開くとそこにはもう一枚の幕が現れ「黒夢」の二文字。歓声は一段と大きくなり、一曲目「BEAMS」のイントロで幕が下り、そこには白の衣装を身にまとったメンバーの姿。代々木公演とほぼ同様の演出ながら、何度観てもゾクッとさせられるのは、彼ら自身が持つ圧倒的な存在感とそこから放たれる強烈なパワーが見る者を激しく惹きつけるからに違いない。

 

人時に駆け寄る清春。応える人時。二人の笑顔。序盤はとにかくこのステージを楽しんでいることが遠くからでも見て取れ、こちらも幸せな気分になる。2月にリリースされた復活第一弾シングル「ミザリー」で大合唱が起こったことは、この2011年に黒夢が活動しているということが、揺ぎ無い事実なのだと実感させてくれた。

 

黒夢のすべてが進化し続けていることは当然のことながら、ラウドに変貌を遂げている「解凍実験」や、重厚な音圧の「MIND BREAKER」など、随所から今の彼らだからこそ出せるサウンドの進化を体感すると、体を動かさずにはいられない。

 

MCで清春は「幸運にもこのタイミングで最強のメンバーで帰ってこれました。他のチャリティーコンサートみたいにはしたくなくて。急遽ライヴをやることを決めたのは、今だからこそ普通にやろうと。自分たちの持ち場を離れないようにしようと」と今回の公演決定についての想いを語った。

 

本編後半からアンコールでは攻撃的ナンバーを連投し「頭飛ばせるか!暴れろ!!」と煽り、水をぶちまけると、場内はダイブの嵐。清春は床に仰向けに倒れ叫び、人時は弦が切れるのではと思うほどこれでもかとベースを弾(はじ)く。緊迫感さえある狂気迫るステージ。代々木公演のときには無かった、以前の黒夢がSEとして使用していたミスフィッツの「ラストカレス」から「FAKE STAR」が始まる流れは当時からのファンにはたまらなかったのではないだろうか。

 

そしてこの爆音に身を委ねながら気付かされた。当時世間の色々を批判したまさにロックの真髄でもある反骨精神剥き出しの楽曲たちが、この時代にも通じるものがあること、そしておそらく今の若者たちにも共感されるであろうということを。

 

二度目のアンコール、清春は「久しぶりに黒夢として名古屋に来れて良かったです。地震が収まって、放射能の雨が降らないことを祈ります。」と話し、歌詞の完成と歌入れは震災のあとだったという新曲「アロン」について「“アロン=alone”で“ひとりぼっち”という意味で。だけど、ひとりぼっちで歌いながら実はひとりじゃないってことを感じてくれれば」と語り、楽曲を初披露した。その言葉通り、闇の中の光を感じ、特に最後は印象的な終わり方で「alone」という言葉を連呼していながら「ひとりじゃない」ということを感じられるものだった。5月25日この作品が世に放たれるのを期待して待っていてほしい。

 

ラストの楽曲「Like A Angel」はこの日一番の大合唱となり、「天使の羽を広げ」るように腕を広げオーディエンスの歌声を背中に受け止める清春の姿が印象的だった。そして最後はメンバー同士しっかりと抱き合い、清春は「すごいベースを弾く男です。人時!」と、人時は「すごいボーカリストです。清春!」と讃えあいステージを去った。

 

いま黒夢が活動していることに新たな意味が見出せた日。DAY OF LIGHT――黒夢から発せられる音と言葉の渦は、漆黒の闇を照らし力強く輝く光だ。

 

 

◆セットリスト◆

01. BEAMS
02. Spray
03. gossip
04. BARTER
05. Walkin’ On The edge
06. ミザリー
07. MARIA
08. 解凍実験
09. カマキリ
10. MIND BREAKER
11. CAN’T SEE YARD
12. DRIVE
13. C.Y.HEAD
~BASS SOLO~
14. MASTURBATING SMILE
15. FASTER BEAT
16. SPOON & CAFFEINE
17. YA-YA-YA
18. CANDY
19. 後遺症-aftereffect-
20. SICK
EN.1
21. DISTRUCTION
22. ROCK’N’ROLL
23. BAD SPEED PLAY
24. FAKE STAR
EN.2
25. アロン(5月25日発売NEWシングル 初演奏)
26. NEEDLESS
27. LIKE A ANGEL

 

(文・金多賀歩美)