DAIDA LAIDA

DAIDA LAIDA

DAIDA LAIDAが世に放ったニューアルバム『綴』。珠玉の10曲が織りなす最新作の魅力、コロナ禍で精力的に活動を展開する彼らの今の思いとは――

国内屈指の名プレイヤー4人によって構成されるバンド・DAIDA LAIDA。彼らが約3年ぶりとなるフルアルバム『綴』が配信リリースされた。ハードさとメロディアスさが渾然一体となっているのがDAIDA LAIDAの楽曲の凄さだが、今回の作品は、これまで以上に豊かな感情と色彩が感じられる、まさに珠玉という言葉がふさわしい10曲が顔を揃えた。現在、4人はこの作品を手に、配信ライブという新たな方法で自らの音楽を届け続けている。コロナ禍という未曽有の危機の直風を受けている音楽業界において、DAIDA LAIDAは実に柔軟に、そして力強く突き進んでいる。MASAKI(B)曰く、「ミュージシャンだから、音を届けてなんぼ」。その揺るがない熱意を、最新アルバムの魅力と共にお届けする。

◆この作品でバンドのカラーが出てきた(NoB)

NoB

――Vif初登場ということで、隣の方の紹介をお願いします。今回のアルバムになぞらえて、漢字一文字で人柄を教えてください。

NoB:僕はKENちゃんを紹介しますね。彼を漢字で表すと、新選組の旗と同じ「誠」です。音楽に対してこんなに誠実な男はいないと思いまして。普段はいい年こいて夕方起きて、酒を飲み倒しているらしいんですけど、音楽に対してはうちのメンバーで一番誠実なんじゃないか、ということで「誠」です。

KENTARO:恐縮です! じゃあ僕はMASAKIさんを…

NoB:「淫(みだら)」かな。

KENTARO:いやいや(笑)。MASAKIさんは、配慮の「慮」です。DAIDA LAIDAはミュージシャンとしてすごい方ばかりなんですけど、MASAKIさんは演奏だけじゃなく、リーダーとしていろんなことに目を配ってキッチリ段取りをしてくれるんです。音楽事務所の人間でもなかなかここまで徹底してやれる人はいないと思うんですよ。気配りができるのは、いろんなことを考えているからだと思うんです。すごいなということで、「慮」にしました。

MASAKI:JOEを一文字で表すと「狂」ですね。ステージ上のオンオフの入り方がかなり狂気なんです。独自のテンション感に入っていくんですけど、お客様もそれを朗らかに見守っている感じがあるんですよ。そのオンオフ感が狂気的なのでこの字で。

JOE:NoBさんは、昔からずっとスターなので「星」ですね。なろうと思ってもこの人みたいになれないなと。中学の頃から毎日のように歌声を聴いていて、一緒にバンドができるようになって何年も経つのに未だに夢みたいなんです。僕の中で永遠のスターです。

――個性あふれる他己紹介でした。さて、今回のアルバムタイトルと曲名は漢字一文字ですが、これはNoBさんの案ですか?

NoB:たまたま最初にできた曲に付けたのが「雫」という一文字だったので、これでいこうと思ったんです。前回(2017年7月リリースのアルバム『This is DAIDA』)はものすごく長いタイトルばかりだったから、その反動で今回は漢字一文字だったらいいなと思って。

MASAKI:前回長かったですからねぇ。

NoB:長かったよねぇ。僕らも覚えられなかったもん。

――今回のアルバムは「雫」の制作時から始まっているんですね。

MASAKI:そうです。2018年に「雫」と「燎」、2019年に「朧」と「漣」が先行シングルとしてリリースされて、今回のアルバムに繋がっていくんです。日本って、アルバムを出して、レコ発して、大都市を回ったら1~2ヵ月で終わっちゃうじゃないですか。それはすごくもったいないなと思っていて。せっかく良い作品ができたんだから、それをもっとじっくり持って回りたいなと思っているんですよ。とは言え、レコ発して2年目には何もないというのは寂しい。それなら新曲も付けていこう!ということで、3年前から毎年2曲ずつ新曲を足してライブをしているんです。

――ちなみに今回、タイトルと歌詞はどちらから先に考えたんでしょう?

NoB:10曲の内8曲は歌詞が先で、後からそれに合うタイトルを考えました。残りの2曲は先にタイトルが思い浮かんで、それに合わせて歌詞を書いています。

――曲の並びはスムーズに決まりましたか?

MASAKI:揉めたりはしていないですよ。このバンドには一人暴君がいてですね…

NoB:誰が暴君やねん! 俺はネロか!

全員:(笑)

――皇帝の言うことは絶対!ということで、スムーズに決まったんですね。

KENTARO:前回は個人個人で案を出して照らし合わせたりしたんですけど、合わないところがあったりもしたので、一人が決めたほうがまとまりやすいかなと思いましたね。

――9月7日の配信ライブ(「DAIDA LAIDA 綴(つづり)配心プロジェクト〜暁(あかつき)〜」)では、1部は「証」、2部はアルバムと同じ「暁」で始まりましたが、曲の並びが違うと全く違う印象を受けました。

MASAKI:ライブは二部制なので、少し変えた感じを出したかったんですよね。二部の最後のほうが何か良いことやるんじゃないかと思われても嫌だなと。うちは均等にやっていますので、どっちもいいことあるよ!とここでお伝えしておきます(笑)。

――アルバムが完成してどんな印象を受けましたか?

NoB:この作品でバンドのカラーが段々出てきたかなという感じがするんですよ。

MASAKI:今回、先に出した4曲は各々が好きに作ったんです。4曲出揃ってからアルバム用に2~3曲作って、ラスト2~3曲で足りないところを埋めるという感じでした。6~7曲揃った後に、色が違うものを最後の最後に作ったという感じですね。

――そのせいか、絶妙なバランスのアルバムです。それにしてもKENTAROさん加入以降、それまでの作品とは劇的に変わりましたね。

MASAKI:そうですね。作曲者が増えたというのもありますし。

JOE:良い意味ですごく変わりました。以前は昔の色がちょっと強いかなと思っていたんですけど、KENちゃんが入って新しめのメタル寄りの曲になって、DAIDA LAIDAが進化していると思います。

MASAKI:体は退化していますからね。音楽は進化しないと。

全員:(笑)

――今回のジャケット写真は、皆さんの顔のパーツを組み合わせて作られていますが、見事な合致具合に驚きました。

JOE:あれはびっくりしました。相当組み合わせを考えたんだよね?

KENTARO:かなりやったね。今回、ジャケットは僕に任せてもらったので、NoBさんからもらったアルバムタイトルをコンセプトに考えたんです。どこに誰のパーツを使うか僕が決めて、デザイナーさんにブラッシュアップしてもらいました。

MASAKI:KENちゃんはああいうのが得意だよね。好きじゃなきゃできないよ。

――目も、目元から鼻への流れも、フェイスラインも全く違和感がないですよね。

KENTARO:顔のパーツを組み合わせるだけで、二日くらいやっていましたからね。当時コロナ禍でメンバーにはほとんど会っていなかったんですけど、僕は一日中写真を見ていたので、久しぶりに会ったときもそんな感じがしなかったです。むしろもう見たくない!という感じでした(笑)。

◆今のDAIDA LAIDAを表せる曲に(KENTARO)

――各曲の聴き所を教えてください。

01.暁(あかつき)/作詞:NoB、作曲:MASAKI&鋼鉄兄貴

KENTARO

――これまでのアルバムとはガラリと変わった、華やかな幕開けです。

MASAKI:早いシャッフルという今まで全くなかったタイプの曲なので、すごく印象が変わりますよね。ベースもそうですが、フルスロットル。これに尽きます。いきなり絶頂です。

NoB:こういう曲はよっぽど自信がないとできないですよ。

JOE:ライブでこの曲が1曲目だと、気持ちの上で大変ですね。今まで以上に緊張感があります。しかも、このアルバムにはこの曲以外にも難曲がたくさんあるので、余力を残さないといけないという。

KENTARO:ギターはシンプルなところはストレートにしているんですけど、イントロのメインのリフがものすごく難しくて。

――過去一番大変な曲だそうですね。

KENTARO:DAIDA LAIDAのリフの中では一番難しくて、最初デモを聴いたときは弾ける気がしなかったです(笑)。

NoB:僕はこの曲では楽器と化しています。普段アニソンを歌ったり、ソロの活動をすることが多いじゃないですか。バンドじゃないとできないサウンドってこういうことだと思うんですよ。ドラムの音、ベースの音、ギターの音、声のミックスを楽しんでもらえる作り方になっていると思います。

02.雫(しずく)/作詞:NoB、作曲:KENTARO

――この曲でMVを撮ることにしたのはなぜだったのでしょう?

NoB:楽曲がドラマチックで、DAIDA LAIDAが結成当時から目指したメロディアスかつハードな代表的な曲だと思ったからですね。

MASAKI:この最終決定はJOEがしたんですよ。

JOE:「雫」ができた瞬間に、これは絶対映像映えするなと思って。NoBさんがMV撮影の候補として「雫」と「宴」を挙げたんですけど、先に言おうと思って、勢いよく「雫!」って言ったら決まったんです。

――無事決まってよかったです。「宴」も映像化したら面白そうな曲ですよね。

NoB:そうそう。不思議な空気がある曲だから、それも面白いかなと思ったんですけどね。

――この曲は壮大な世界観の詞も聴きどころの一つです。

NoB:僕はストーリー性のある近未来のSFチックなものが好きで、昔からよく書いていたんです。この曲ではその究極のものをということで、人間とアンドロイドの恋を書きました。昔のSF映画のイメージかな。

――この曲もあちこちに楽器陣の聴かせどころが散りばめられていますね。

MASAKI:ベースは中間にハーモニーソロを入れているのが我ながら面白いなと思います。ベースでハーモニーを入れる人はあまりいない上に、それをドラムソロの後ろでやっているという。

JOE:さすがだなと思いました。ドラムは、リズムが今までないパターンの大きく取る8ビートや、流行りのブルータルっぽい感じを出したいなと思ったんですけど、最初はノリを掴むのが難しかったですね。途中フックみたいな間奏で、すごくカッコいいリフも入っています。ドラムソロは、たまにはそんなに手数が多くないものをと思ったんですけど、自分の得意パターンになっちゃって。でもKENちゃんが、これで良いんじゃないって言ってくれたので「よし!」と。

――MVでJOEさんがクラッシュシンバルをピタッと止めるところは見どころですね。

JOE:ありがとうございます! ちょっと命かけてます!

MASAKI:見せ場だもんね。

KENTARO:この曲は今回のアルバムで最初に作った曲なんですけど、今のDAIDA LAIDAを表せる曲にしたくて、メロディアスで内側から出るような激しさを出せたらと思って作りました。ギタープレイ的にはそんなに頑張っていないんですけど、ギターソロはあえてメロディアスにせずにフワッとさせたので、その雰囲気が気に入っています。

03.証(あかし)/作詞・作曲:NoB

MASAKI:この曲はNoBさんの典型的な曲調というか、16分感のある跳ねリズムにメロディーが乗っていて、その跳ね感をいかにリズムで生み出すかが課題でした。ベースのソロはメロディーに絡めながら動くさりげなさで、いぶし銀という感じです。

――間奏前が特に素晴らしかったです。

MASAKI:そうそう。そういうところです。曲を盛り上げるにはベースも同じことをやっていてはダメで。同じAメロ、Bメロが来たからまた同じものを弾こう、ではダメなんですよ。

――とても緻密に計算されているんですね。

MASAKI:そうなんです。自分なりのレシピがあるので、それで構築しているんですよ。

JOE:ドラムはべタな16分だと面白くないなと思って、「そこまで入れなくていいんじゃない!?」ってくらいキックの数を入れています。ちょっと油断すると持っていかれます(笑)。このアルバムは場面展開が多くて、1曲も気が抜けないんです。

KENTARO:最初に聴いたときに、軽快なノリのある曲だと思ったので、音数もそんなに増やさず、ストレートにいった感じですね。NoBさんからリクエストがあったので、イントロにフランジャー(うねりのあるサウンドを作り出すエフェクター)をかけたりしています。

――冒頭のリフが絶妙でした。

KENTARO:シンプルなリフなんですけど、ライブで弾いていても気持ちがいいです。この曲は楽しむ余裕があるんですよ。弾く楽しさというより体全体で弾ける楽しさですね。

MASAKI:この曲はライブ映えするよね。

――疾走感もあり、少しの郷愁もあり。この曲はNoBさんの「得意かつ一番歌いたいところ」だそうですね。

NoB:演奏がうちのメンバーじゃなかったら、歌謡曲じゃないかと思うくらいメロディアスじゃないですか。僕はそういうのが得意だし、そういうものしか思い浮かばないので、自分の担当ポジションかなと思って。

――しかし、こんなにも耳に残るメロディアスさでありながら、素人には易々と歌えないのがDAIDA LAIDAです。

MASAKI:そこはやっぱり、メロディーに耳がいくNoBさんの歌唱力、歌唱法、声質によるところが大きいですよね。見え隠れする秀樹節もありますしね。

全員:(笑)。

04.燎(かがりび)/作詞:NoB、作曲:MASAKI

NoB:この曲は、ヴォーカリストの見せ場であるアカペラで始まるので、そこはかなり張り切りました(笑)。ロックだけど、しっかり歌い上げなければと思わされるしっとりとしたメロディーなので、そこは腕の見せ所!ということで、ライブをイメージして歌っています。

――作詞はいかがですか? 〈20年後の自分に諦めた釈明できるならどうぞご自由に〉という歌詞が特にグッときました。

NoB:やっぱりその部分が1番伝えたかったところかな。僕は歌詞の書き溜めは殆どせず、毎回ほぼ何もない状態から書き始めるんです。ただ、フレーズのストックはスマホのメモに乱雑に書いてあったりはしますね。

KENTARO:この曲はアカペラで始まるキャッチーな曲で、ギター的にはイントロリフの8分の刻み方とピッキングのニュアンスに拘りました。シンプルなリフだけに弾き方で印象が変わるので。あとはBメロのキーボード的なフレーズはタッピング奏法でやっています。

JOE:王道のリフに乗って軽快なビートではある中で、場面転換の箇所では重厚感を意識したビートにしています。最後のスリリングな終わり方がたまらないですね。

MASAKI:この曲は「ファイヤーハウス」を意識した、80年代メロディアスハードロックイメージで作りました。重厚な美メロサビのアカペラからスタートする曲がほしくて。

――この曲ではMASAKIさんの十手奏法が見られますね。

MASAKI:ベースソロの冒頭に使っています。十手をスライドバーに見立てて、弦を擦るように滑らせて効果音的に音を出すんですよ。LAな曲に銭方平次がやって来るイメージですね!

05.哀(あい)/作詞・作曲:NoB

――この曲は他のどの曲よりも強く感情を感じました。

NoB:自分自身、とても珍しい事なのですが、“命”について歌った曲です。長いこと作詞をしていますけど、今までそこには出来るだけ触れないように気をつけてきた気がするんですよ。“死”を扱うということはとてもデリケートなことだし、一時期流行った、自分で命を断つLINE的なテーマの歌にとても反感を持っていたので。それは、同調やシンクロの危険性を顧みないアプローチに抵抗があったからなんですけど、今回の「哀」はそうではなく、魂の浄化と言うことを考えた歌詞です。とても理屈っぽくなりましたけど、珍しくこう言う歌詞を書いたので少し言い訳してみました(笑)。

JOE:NoBさんの歌うバラードは全てを支配するので、しっかりと土台を支えることに集中しました。そのなかで的外れなフレーズを入れることによって自分らしさも出しています。

KENTARO:NoBさんならではのバラードで、ギターは基本的にシンプルなフレージングにしたんですけど、さりげなく重厚感を出そうと思って、聴こえるか聴こえないかくらいのところで結構重ね録りしています。これが聴こえていなかったら意味がないんですけどね(笑)。

――ソロパートはいかがでしたか?

KENTARO:ギターソロは弾きまくりではないけど、曲を盛り上げるソロが弾けたと思います。

MASAKI:このアルバムのバラード曲で、ベースソロのフレージングは構築しています。ペダルノートを使ったバッハ旋律的な音使いをしました。ただ、レコーディングで1弦24フレットでのチョーキングを入れてしまったので、ライブでのペースストラップポジションが低い私としては、指が届く気配が感じられません!

――ライブではMASAKIさんの手元必見ですね。

MASAKI:(笑)。なので、おそらくライブのソロは別物で構築することになるかと思います!

◆自分が人生の中で作ってきた曲の中でもトップに入る曲(MASAKI)

06.楔(くさび)/作詞:NoB&Junichi Koganei、作曲:KENTARO

MASAKI

KENTARO:へヴィかつメロディアスな曲がほしいなと思って作った曲で、オープニングのギターとシンセのユニゾンフレーズから作りました。

MASAKI:ナウなメタルの匂いがする曲ですよね。DAIDA LAIDAは懐かしいノスタルジックな楽曲もあれば、こういう近代サウンドを折衷させている部分も特長かなと。

NoB:この曲は男臭く歌ってみたんですよ。歌詞のテーマも含めてですけど、サビの前に入るジングル的なセリフにも注目していただけると。少しあざといですけどね(笑)。

――ソロパートについてはいかがですか?

KENTARO:ギターソロは泣きが入った往年のメタルって感じかな(笑)。現時点ではまだライブで演奏した事がないけど、ライブで演奏するのが楽しみです。(※この取材後、9月20日の配信ライブで初披露されました)

MASAKI:ベースソロも「ザ・泣き」ですね。メロディックかつテクニカルに。常にソロでは起承転結を意識しているので、その形がうまく表現出来ていると思います。

――JOEさんは、この曲で重さを出すのが大変だったそうですね。

JOE:はい。リフがカッコいいので、更に引き立てるためにリズムパターンをいくつか試行錯誤してからRecに臨みました。キックとタムを絡めて重さを意識しようとしていたんですけど、フロアとロータムで作り上げたパターンが一番ハマったかと思います。

NoB:ハードな演奏の中に流れるストリングスの調べ。これぞメロディアスハードロックの真髄というべきアプローチの仕上がりをぜひご堪能ください!

07. 雷(いかづち)/作曲:KENTARO

――楽器陣のテクニックを存分に味わえるインストゥルメンタルですね。

MASAKI:今までもアルバムにはインスト曲がありましたけど、それらはあくまでライブのオープニングやエンディングのための物だったんですよ。なので、ライブで演奏することはなかったんですけど、これはライブで演奏するインストとして作った曲です。別名、ライブにおける「NoB休め」です(笑)。僕自身は、今までインストのソロアルバムを4枚出していて、僕がインスト曲を作るとソロと被るかなと思ったので、作曲はKENTARO君にお願いしました。

KENTARO:以前からワンマンライブの時によくインストコーナーを設けていて、その時は往年のメタルのリフをモチーフにアドリブでソロを廻す感じだったんです。今回はそれをオリジナル曲で作るのも良いんじゃない?という話をMASAKIさんとして、僕が作りました。

JOE:この曲も魂が入り込むリフなので、軽快さと重厚さを重ねつつ細かい技を随所に何気なく入れ込んでいます。途中、変拍子で厄介な箇所が出てくるんですけど、そこから各ソロパートへとチェンジするのもたまらない感覚です。そういうところもインストゥルメンタルの醍醐味かと思いますね。

MASAKI:ベースもソロパートが多いです。特に長いベースソロでは「さくらさくら」のメロディーも引用して、遊び心もぶち込みました。演奏回数が増えるごとに、ソロパートを長くしたり、ライブでアレンジが変わったりしていくんじゃないかなと。なんせ「NoB休め」がテーマですからね!

KENTARO:各メンバーのソロはもちろんですが、NoBさんのクワイヤ的なコーラスも聴きどころです。

NoB:今回はインストなのにコーラスをたっぷりぶち込んじゃいました。クラシカルな男性合唱団の様な響きを目指したんですよ。ちなみにタイトルは僕が「雷」を提示したら、何と作曲者のKENTAROも、「もし自分にタイトルのネーミングを振られたら『雷』にしようと思っていた」と言う嘘の様な本当の話があったんですよ!

――名付けられるべくして付けられたタイトルだったんですね!

08. 漣(さざなみ)/作詞:NoB、作曲:MASAKI(Guest Keyboards by kiyo)

KENTARO:これはもう既にライブでも結構やっているんですが、切なげな良い曲だと思います。ギター的にはやり過ぎない事を心掛けました。ライブでは曲を感じながら気持ち良く弾かせてもらっています。kiyo君がゲスト参加でピアノ&キーボードを入れてくれた事で、この曲の魅力が更に増したと思いますね。

MASAKI:kiyoちゃんは素敵なプレイを吹き込んでくれたんですよ。3サビの後に新たな別メロディーに展開して行くところが泣けます! イントロのベースソロは1、2弦を同時に鳴らしながら、2弦をルートにして1弦でメロディーを鳴らすタッピングを使っていて、ここもある種、泣きタッピングですね。

JOE:ドラムはシンプルなビートです。途中の間奏箇所でトリック的に聴こえる所もスリリングだなと。サビの〈あと10年先はどうだろう どんな色のココロして歌ってるんだろう〉の歌詞でも、すごく考えさせられる曲です。

――〈見た目とかじゃなく ココロはお変わりないですか?〉という歌詞も心に沁みました。

NoB:細かい部分まで聴いていただいて感激です。この曲では、等身大の、若い子達に媚びない自然に滲み出る感覚を歌詞にしました。若い子には歌えない大人のロックを目指しています。でも決してジジ臭く攻めたわけでも、枯れた人の歌でもなく、まだ新しい夢を見たい大人の歌なんです。

――コーラスが幾重にも入っていて、NoBさんの声の優しさや美しさが際立ちます。この曲は特にたくさん入っているのでしょうか?

NoB:いえいえ、コーラスはどの曲にも、たーっぷり入っていますよ! でも、1番大変だったのは、男性合唱団を目指した「雷」かも知れませんね。普段と違うアプローチだったので。

MASAKI:この曲は、自分が人生の中で作ってきた曲の中でもトップに入る曲になりました。ついつい聴き返したくなる曲です。メジャーコードを使いつつ歌メロには切なさがあって、NoBさんの歌詞にもそんな悲哀が出ている気がします。

09. 宴(うたげ)/作詞:JOE&NoB、作曲:MASAKI

――ライブ感満載の1曲です。

MASAKI:完全にライブの画、お客様との一体感を意識して曲を作りました。ハンドクラップ、掛け声などライブではたくさん共同作業がある曲です。

KENTARO:この曲はまだライブでやった事はないですけど、コーラスパートも結構あってライブ向きだと思います。今のコロナ禍ではコール&レスポンスは難しいですけど、落ち着いたらライブで大いに盛り上がって欲しいなと思います!

MASAKI:曲の香りは80’sですね。でもね、リフがドラムはミドルの8ビートなんだけど、あえてハイハットを16分で刻んで貰っているんです。そこがこだわりかな。

JOE:ドラム的にも16を刻みつつの8ビートで気持ちのいい所に叩き込めたのではと!

MASAKI:あと、もう一つこだわったのが、間奏のソロが終わって3番に入る時にブレイクがあって、先行してギターのスライドから入ってくるんですけど、そこもただの左手スライドではなく、右手のピックで弦を縦に擦るように音を出してもらったことですね。「キュイ〜ン」ではなく、「キュルル〜ン」なんです!

KENTARO:僕は随所にディレイを使ったフレーズを入れているのが、結構気に入っています。

――この歌詞はNoBさんとJOEさんの共作ですが、制作はどういう手順で進むのでしょうか?

NoB:彼と歌詞を書くときはいつも、まず曲のイメージで彼に好きなテーマと書きたい内容、キーワードになるような言葉を考えてもらって、それを僕がまとめるんです。DAIDA LAIDAっぽい言葉遣いで編集していくような感じですね。ここでも“綴”っているわけです(笑)。

JOE:前作に続いてNoBさんに歌詞に挑ませてもらいました。思いのままに書いたんですけど、NoBさんがあっという間に完成させてくれました! 僕的には「コロナで塞ぎ込んでしまった感情を発散させたい」的なことを伝えたかったんですが、素晴らしくまとめていただいています。

10. 朧(おぼろ)/作詞:NoB、作曲:KENTARO

――「朧」というタイトルから、朧月や春の霞のようなぼんやり儚げなものを想像していたので、再生して驚きました。

NoB:この曲のテーマこそがまさに「朧」なんです。自分でもコントロールできない感情、見えたり隠れたりモヤモヤするスッキリしない日常への思いを「朧」と言う言葉に込めました。こういう曲だからこんなテーマじゃないといけない、というステレオタイプの打ち出し方はしたくなかったんですよ。昔はまさにそうだったから、今は抵抗しちゃうんですよね(笑)。

KENTARO:これはライブでやる事を大前提に作った曲なんです。JOE君に派手にソロを叩いてもらって曲に入りたいというのもあって、イメージ通りの仕上がりになりました。テンポ的に激速ではないけど、ソロやベースとのユニゾンパートも含めて疾走感がいい感じで出せたと思っています。

JOE:ドラムソロから入るパターンがいくつかあったんですけど、ライブ映えする曲でもあるので、聴いている側がわかりやすく入りやすいパターンにしたつもりです。このBPMでスタンスを崩さず踏みっぱなしで感情をつけて叩くのがポイントでした。

MASAKI:アルバムのラストチューンが今回のアルバムで一番激しい曲になりました。個人的には「モーターヘッド」の香りがしています。リフはギターとユニゾンしての一体感。テンポ自体激速ではないんだけど、その一体感が曲スピード感を煽り運転にしています。

――この曲のベースソロの入りがまたインパクトがありますね。

MASAKI:そこの音使いのイメージが、宇宙戦艦ヤマトに出てくるデスラー総統のテーマ曲なんです。わかる人にはわかって貰えるはず! こういった部分の僕の破天荒加減が伝わると面白いかなと!

――そしてアルバムの最後は、〈こんな僕にいつも愛をアリガトウ〉という感謝の言葉で締め括られます。

NoB:ファンの皆はもちろん、自分を取り囲む人達全てに「ありがとう」です。

◆やり続けることで絶対に暗闇ではなくなる(JOE)

JOE

――配信ライブの感触はいかがでしたか?

MASAKI:元々、コロナ禍の前からアルバムのリリースも決まっていたし、通常の形式での全国ツアーも組んでいたんです。でもコロナで通常のツアーをやることが厳しくなってしまった。そんな中、辛うじて配信という形でライブができるようになったんです。ライブは我々の持ち味でもあるし、ライブをやっている姿を伝えるのが一番だと思ったのでこの形式でやることにしました。でも、ただ「新しいアルバムを出しました」と何度かライブをやって終わりというのも寂しいので、お客さんと一緒に少しずつニューアルバムを楽しむ、ストーリー性のある配信ライブにしようと考えたんです。配信ライブ毎に少しずつニューアルバムの曲が入ってきて、最後の最後で『綴』の曲が全曲入る、ステップアップ型のレコ発プロジェクトに切り替えました。

――主軸になる曲が少しずつ変わっていくんですね。配信ならではの難しさはありますか?

NoB:やっぱりMCでリアクションがないことかな。何十年もそれで生きてきた人間なので、MCではお客さんの顔を見ているんですよ。今まではたとえ黙っていても楽しんでいてくれているか否かを肌で感じられていたのに、それが感じられなくなったのには戸惑いました。配信のシリーズになってからはMASAKIに司会のような形でやってもらっています。司会だったらMASAKIかなと思うので。

JOE:僕は反応がない分、狂いたい衝動に駆られるんですけど、一度MASAKIさんのソロでやらせていただいたときに、お客さんに「そこまで頑張らなくていいんですよ」って言われたことがあって。その時に、こんな一生懸命狂ったとしてもかえって何も伝わらないのかもしれないなと思って、以降はオブラートに包んで話すようにしています。でも狂いたい衝動には駆られているので、いつそれが出るかわからないです(笑)。

――ファンの皆さんはドキドキしながら見ているかもしれませんね。

JOE:でも、MASAKIさんにちゃんと止めていただけるので安心です。

MASAKI:JOEは傍観しちゃうと落としどころがないので、止めないとダメなタイプなんですよ。たまに第三者とJOEのトークを見ていて、「何で止めないのかな。ここで止めないと美味しくなくなっちゃうのに」と思うことがあります。

JOE:(笑)

KENTARO:配信ライブでも少人数のお客さんに入ってもらっているのでライブ感があるにはあるんですけど、僕は今までのライブとは別物だと思ってやっています。配信には、これまでライブ会場にいないと観られなかったものがどこにいても観られるようになるという良い点があって、一方でライブ感を伝えるにはその場にいないとわからない部分もある。でも、今できることはこれなんです。1曲ごとにMCが入るのも配信だからこそだと思うので、それを楽しみながらやれたらいいなと思います。

――MCで、今後のライブでやりたいことの案がたくさん出てくる中で、CDを出すかもしれないという話も飛び出しましたね。

MASAKI:予想してはいたんですけど、配信だけでは物足りない、盤としてほしいという声が多くて。なので、来年また新しいシングルでも出して、それを踏まえてもう一度『綴』の進化バージョンを盤にするのも一つの手かなと思っているんです。

――ファンの方には嬉しいアイデアだと思います。そして、MCでの「決して立ち止まっているわけではない」というMASAKIさんの言葉に勇気づけられた人も多かったのではないでしょうか。

MASAKI:ガイドラインに従ったルールに則っていても、今はまだライブに行けないという人がすごく多いんですよ。いつか落ち着いたらって言っても、いつ落ち着くのか、そもそも落ち着くことがあるのかすらわからない。そんな中で、配信という形式は今後ずっと共存していくものなのかもしれない。なので恐れず挑んでいきたいなと思います。

NoB:もしかすると10年後に振り返ったら「あの時に変わったんだよね」って思うかもしれないよね。

MASAKI:これがスタンダードな形になるかもしれませんからね。ミュージシャンですから音を届けてなんぼというのが一番です。

――DAIDA LAIDAはとても柔軟に状況に順応しながら進んでいるという印象です。最後に、今後の展望を聞かせてください。

JOE:早くお客さんと一緒にライブをやりたいです。いつ、というのは全く決められないからお客さんも不安がすごくあると思うんです。でも、やり続けることで絶対に暗闇ではなくなると思うので、いつか光が差したときにその思いが爆発できるように、その日を心待ちにしています。

MASAKI:とにかく立ち止まらないというのがテーマです。継続は力なりですからね。我々は、この時期でも音源を出して、来年も出そうと計画しているので、そんな攻めている姿勢を見てほしい。いつか落ち着くのを待とうよ、ではなく、僕たちはいつでも攻めているからお客さんもいつでも帰っておいで、という思いをずっと発信していきたいです。

KENTARO:今までライブをメインに活動してきたんですけど、そのメインの活動ができなくなって、もうできることはあまりないのかなと考えたこともあったんです。でも、こうやって配信があるからバンドの活動もできるし、リアルタイムで皆さんに観ていただける機会もできた。こういうものを利用しつつ、僕らのできることを少しずつやっていくしかないと思っています。皆さんが日々の生活の中でつまらないなと思っているときに、配信ライブを観て気持ちが晴れたら僕らがいる意味もあると思うし、そういう反応があったから僕らもこれまでやって来られたので、ライブは配信にはなっても、どんな状況でも工夫さえすれば何とかなるという気持ちにシフトできた気がしますね。これまでのライブのように同じ場所で同じ時間を作り上げていくのがベストですけど、それができる時期が来たらすぐにやるだけのことだし、それができない間は今できることをやっていけたらいいなと思っています。

NoB:僕たちだって人間だから、弱いんですよ。弱いし、挫けそうになる。でも、子どもの時から、仲間がいたら頑張れることってあるじゃないですか。バンドってその典型的な形ですよね。家族の次の単位で一緒にいる仲間だし、力を出し合える仲間なんです。それがオーディエンスの人たちにもヒントになってくれたらなと思います。「一人じゃないよ」そういう思いを届けたいなと思って頑張りますので、これからもよろしくお願いします!

(文・後藤るつ子)

ARTIST PROFILE

DAIDA LAIDA

<プロフィール>

NoB(Vo/OSAMETA、URUGOME、MAKE-UP、Project.R、ex.P.A.F)、KENTARO(G/MAZIORA THE BAND)、MASAKI(B/CANTA、地獄カルテット、LIV MOON、ex.アニメタル、ex.SHY BLUE、ex.JACKS’N’JOKER)、JOE(Dr/the CYCLE、DASEIN、ex.SEX MACHINEGUNS)の4人から成るロックバンド。日本のハードロック、へヴィメタル界の凄腕メンバーが集結し、2011年に結成された。2012年3月に1stミニアルバム『風と獅子と罪と魂』をリリースし、現在までに6枚のアルバムを発売。2020年8月25日に最新アルバム『綴』を配信リリースして以降、精力的に配信ライブを展開している。

■オフィシャルサイト
http://daidalaida.site/

【リリース情報】

綴(つづり)
2020年8月25日(火)発売
(DAIDA LAIDA)

綴(つづり)
¥2,400(税込)
amazon.co.jpで買う

【収録曲】

01.暁(あかつき)
02.雫(しずく)
03.証(あかし)
04.燎(かがりび)
05.哀(あい)
06.楔(くさび)
07.雷(いかづち)
08.漣(さざなみ)
09.宴(うたげ)
10.朧(おぼろ)

[配信プラットフォーム]
iTunes Store/Apple Music/Amazon/Amazon Music Unlimited/music.jp STORE/オリコンミュージックストア/Spotify/KKBOX/mora/レコチョク/LINE MUSIC/YouTube Music/Google Play Music/AWA/うたパス/SMART USEN/dwango.jp/OTOTOY/Rakuten Music/mysound/Deezer/着信★うた♪by KONAMI/PlayNetwork

【配信ライブ情報】

●「DAIDA LAIDA 猛獣達の叫び〜ver8.5〜」
10月22日(木)
[ゲスト]
1部:つかさ&MINAMI(AMBEEK)
2部:天照

●「DAIDA LAIDA 猛獣達の叫び〜ver9.5〜」
10月28日(水)
[ゲスト]
1部:EYE(Mary’s Blood)
2部:HIZAKI&KUZE(Jupiter)