ライブレポート

2017.11.11
TAKE NO BREAK@下北沢・CLUB251
『2017 Autumn Oneman Tour「Demonstration」』

TAKE NO BREAK——。
それは、長時間の過剰な自慰行為によって引き起こされる症状のことで、死をも招く恐れがあるとされることを意味するワードだ。
ヴォーカルの淳を中心に、飲み友達として交流のあったギターのU.K.、ベースの朋、ドラムのデスヲがこのワードをバンド名に定めたと聞いたとき、音楽というツールを無くしては生きることが出来ない自分達にとって、好きなことをして死ねるならば、これ以上本望な場所はないと盛り上がったに違いないと即座に思った。正直、そんな彼らを羨ましく思った。なぜなら、人間、そこまでのめりこめる場所を持てることの方がまれだからだ。

もっと言うのであれば、好きなことだけを貫けることは幸せなことであるが、そこだけで生きていくことは簡単なことではなく、ときに苦痛をも犠牲をも伴う。よほどの決意がなければ、“好き”を貫くのは困難であるからだ。故に、“好き以上の覚悟”が必要となる。

が、しかし、その苦痛を超えた先にある幸福感は、何物にも代えがたい快楽なのだ。まさに。快楽を求め、自らを興奮状態に導く自傷行為は、それに近いのかもしれない。
TAKE NO BREAK——。それは最高に幸せな状況なのかもしれない。

2017年11月11日。下北沢・CLUB251。この日観たTAKE NO BREAKのライヴは、まさしく“自分達の好きな事を死ぬまでやる”という、強い決意そのものであったと感じた。

7月11日に、淳の地元でもある仙台MACANAでバンドとしての初ライヴを行ない、7月14日に下北沢GARDENで行われた東京初ライヴを『Demonstration~壱~』として本格的に活動を始めた彼らは、10月26日の仙台・MACANAを『Demonstration ~弐~』とし、そこから名古屋、大阪、東京と全国4ヶ所をまわる初ワンマンライヴツアー 『2017 Autumn Oneman Tour「Demonstration」』へと向かった。

そんな初ツアーのファイナルであった下北沢・CLUB251でのライヴは、未発表曲3曲を含む現在の持ち曲のすべてを披露した2時間弱のライヴとなったのだが、それぞれ申し分のないスキルを持ったミュージシャンたちが、さらりと完全体に導いた完璧なライヴというわけではなかった。

これは、否定的な意味ではなく、逆に新たな個性が生み出されていくことへの新鮮な期待感を持った故の感想だ。
TAKE NO BREAKは、発展途上にあるバンド。そんな無限な伸びしろを感じたライヴとなったのだ。

18時30分。定刻通りにフロアの照明が落とされると、デジタルなSEをバックに、メンバーは楽屋からステージへと向かった。ライヴハウスの構造上、オーディエンスで埋め尽くされたフロアの下手に設けられた通路をプロレス入場的にステージへと向かう動線とあって、オーディエンスはステージへと向かうメンバーに歓声を投げかけた。普通とは違うその構造が、より彼らに拍車をかけたのだろう。デスヲ、朋、U.K.が持ち場につくと、淳が大きな歓声に送られ、ステージの中央に身を置いた。

淳が左手を高く上げると、SEは1曲目に置かれた「ALBA」のイントロへと繋がれていった。大きく構えた4つ打ちのリズムとデジタルとどっしりと安定感のあるバンドサウンドの融合に、フロアは一気に熱を上げた。激しいサウンドに合せてリズムを刻みながら、デジタルな音に身を任せて躍るフロア。ツアー4本目とあって、オーディエンス側はTAKE NO BREAKの楽しみ方を見つけ始めているようだった。

「いくぜ!」

淳がフロアを煽り、朋がベースで低音に厚みを加えながらデスコーラスで拍車をかける。メタルで鍛え上げられたデスヲのドラミングは力強く、実にタイトだ。トランス色を含んだ同期と絡むU.K.のギターは、きらびやかという印象ではなく、バンドの核を担いながら、楽曲によっては間奏部分でメロウな泣きのフレーズを差し込む深みがある。2曲目に届けられた「BREAK THE LIMIT」は、「ALBA」に比べると“YOMI”を感じさせる歌メロと、U.K.、朋、デスヲが生み出すそれぞれのロックサウンドを感じさせるものであった。今、こうしてライヴ全体を見終わった状態でレポートを書いていて改めて思うのは、ライヴの導入部分でもあった序盤の楽曲たちこそ、TAKE NO BREAKの大きな柱を感じる。

実は、最初にバンド名を聞いたとき、字面で追うのではなく耳で聞いたこともあり、勝手に“TECHNO BREAK”だと思ったのだが、その要素は多いにあると改めて感じている。
しかし、「Silver」や「Stay Alive」などは、デジタル色をところどころに差し込みながらも、淳の声が伸びやかに響きわたる純粋なバンドサウンドであり、届けられた新曲や「Search for Light」は、4つ打ちながらも実にドラマティックな印象だ。
ライヴの流れとしても実に現代的である。MCを挟まず、デジタルなSEで繋がれていったその流れは、生バンドによる立体的なDJといった編成であった。

ソロワークとなると、“本体とはまったく違うこと”をする場所であるべきだと思いがちであるが、発信する側の個性がまったく消えた表現では、“その人”がやる意味すらも消えてしまう。そうなってくると、そこに意味すら無くなってしまうと私は思う。ヴォーカルに比べ楽器隊は、“音で遊ぶ”ことが出来ることで、自らの個性とはまったく違ったところで遊びやすいということもあるが、それでもやはり長年培ってきたプレイヤーとしての癖が個性として出るからこそ、“その人がやる意味”がそこに宿ると思うのだ。ことヴォーカルに関しては、変えることの出来ない声という指紋が楽器である故、その個性そのもので勝負せざるを得ないし、歌詞として放たれる言葉は、その人そのものであることから、まったく違う感性には至らない。

まさしく「FiVE」は淳でありYOMIそのもの。それでいいのだ。いや、それでなくてはいけないのだ。U.K.、朋、デスヲが生み出すサウンドも、形は違えど、やはりそれぞれの音はU.K.、朋、デスヲなのだ。だからこそ、この4人が放つ音こそが、TAKE NO BREAKであり、それこそがTAKE NO BREAKの個性となるのだ。
そういった意味も込め、4人がTAKE NO BREAKとして描いた景色は、確実にNIGHTMAREとは違う景色を描いたものであったと言える。
個人的に洋楽のハードロック要素を感じさせた、ゆったりと流れる「Search for Light」がとても印象的であったことも記しておこう。

ライヴ後半ではクラブサウンドである「Brave New World」がフロアを揺らし、本編ラストの「Just Fly Away」では、ドラム前にフロントの3人が集まり、U.K.と朋が淳を両脇から挟み込み、清々しい笑みを洩らした。

「4ヶ所やってみて、すごく歌いやすくなってきていて。ただの呑み友達が、ようやくバンドになってきたのかなって感じています」(淳)

アンコールのMCで淳も言っていたように、それぞれが申し分のないスキルと経験を持ったメンバーではあるが、TAKE NO BREAKとして一緒に音を放つことになってから1年も経っていない。逆にスキルと経験があるからこそ、個々に際立つ個性を、TAKE NO BREAKという個性を4人に築き上げていくという難しさもあるのだろう。

ライヴに足を運ぶ大半が淳がヴォーカルを務めるNIGHTMAREのファンであることも大きく、コンポーザーたちは、NIGHTMARE をなぞるようなサウンド感ではなく、そことは別物でなくてはいけないという意識も強いであろうし、真っ新な状態でTAKE NO BREAKというバンドに興味を持ってくれた人達をライヴで惹き付けられるようなサウンド感でなくてはならないという意識を強く持っているであろうことから、0からの構築以上の困難さが伴う。さらに、ライヴとなると、ライヴを作り出す上で1番重要な存在となるオーディエンスが、いかにライヴを楽しく過ごせるか、いかにノレるかというところが何よりも必須となってくるとあって、始動からわずか4ヶ月という現段階で完全体を望むなど無理な話なのである。それは、そこに対する本気度が高い証拠でもあると私は思う。完璧なコピーバンドをやるのだとするならば、きっと彼らは短い準備期間でも完璧な完全体を届けてくれるに違いない。しかし、どこにもない個性を、それぞれが完全体である4人が集まって作ろうというのだ。そこにはそれなりの時間と歴史が必要となってくる。
だからこそ、TAKE NO BREAKのこれからが面白いと私は感じた。

彼らはこの日、12月30日に『BRAND NEW START with OREmind』を渋谷WOMBで行うことを告知した。このライヴでは、TAKE NO BREAKがライヴで魅せたい完成系が見れるのだという。

さらに、彼らは現在アルバムを製作に入っており、年明けにはリリースし、2月9日の名古屋を皮切りにアルバムを引っさげての全国9ヶ所のワンマンツアーが決定している。

次に彼らのライヴを観るときは、また違った景色が見れるに違いない。4人はもちろん、オーディエンスと共に作り上げられていくTAKE NO BREAKの個性と成長を、この先も見守り続けていけたらと切に思う。

(文・武市尚子/写真・sentaro)