2014.10.19

Plastic Tree@渋谷公会堂

結成20周年“樹念”ツアー2014「そしてパレードは続く」

 

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2014年、結成20周年“樹念”イヤーを迎え、3月にミニアルバム『echo』をリリースし、全20公演に渡る全国ツアーを展開したPlastic Tree。そして9月、20周年第2弾作品となるシングル『マイム』をリリース。9月15日よりスタートした今年2本目のツアーの追加公演が、10月19日、渋谷公会堂で行われた。

 

今回のツアータイトルは、Plastic Tree 結成20周年“樹念”ツアー 2014「そしてパレードは続く」。Plastic Treeには2000年に発表したアルバム『Parade』が存在し、その中に「そしてパレードは続く」という楽曲が収録されている。それゆえ、前ツアーの東京公演で、このツアータイトルが発表された瞬間、歓喜の声が湧き起こったのだった。先に公開したインタビューで、このタイトルに関して「その曲というよりは言葉」「その言葉以上のものが見つからなかった」(Vo.有村竜太朗)、「バンドとして潜在的なイメージでずっとあったもの」(B.長谷川正)と語られた通り、“パレード”や“続く”という言葉自体が、元来Plastic Treeの中にあるものなのだと認識しながらも、「絶対に意味がある」「全部リンクしている」と言った竜太朗の言葉が気になっていた。そして、タイトルロゴのデザインやテーマカラーを見た瞬間、やはりアルバム『Parade』がリンクするツアーになるのだろうということは確信に変わったし、それを期待せずにはいられなかった。

 

Vifでは、今ツアーのフォトギャラリー企画を通して全公演の模様を追ってきたわけだが、今ツアーでは各地方公演で、その場所でのみ披露される「地方限定曲」が存在し、その中には『Parade』の楽曲も含まれていた。だが、『Parade』曲は各公演で数曲の披露に留まっていた。そして、この渋谷公会堂公演に関しては、追加公演ならではの“特別感”があるものになるということが、メンバーのブログなどで事前に伝えられていた。

 

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結論から言うと、この日は「第一部」と「第二部」に分けられた構成となっていた。舞台には白い布が天蓋のように美しくドレープをなし、「そしてパレードは続く」をSEにメンバーが登場。そして、『Parade』の1曲目でもある「エーテル」で第一部の幕を開けると、なんと『Parade』の楽曲全12曲がアルバムの収録順に披露されるという、まさに特別なステージだった。

 

次々と披露される楽曲に歓喜の悲鳴が上がる。ツアーで様々な『Parade』曲が披露されてきたが、この日のみの披露だったというのは「睡眠薬」。舞台上の白い布には、映写によりまるで赤色のインクが滲んでいるようで、不穏なSEが深淵な世界へと導いていく。すると、一瞬の静寂を佐藤ケンケンのドラミングが切り裂き、4人の音が美しい連鎖を成す。この楽曲が第一部をエンディングへと向かわせる転換点となった。続く「bloom」ではガッチリ合わさったバンドサウンドを聴かせ、定位置にいたナカヤマアキラ(G)も前方へと繰り出せば、竜太朗と正がアイコンタクトする場面も。

 

こうして様々な表情を見せた第一部のラスト――ケンケンが刻む「そしてパレードは続く」のマーチのリズムが暗闇に響く。下手側には電球が灯り、椅子に座った竜太朗がぼんやりと薄明かりの中歌い出すと、ステージ背面には影絵のように小窓から見える物語が映し出される。まるで、演劇を観ているようだ。終盤、映し出される小窓が徐々に広がっていき、アキラと正の姿が見え、最終的にステージ全体が照らされると同時に楽曲の終わりを迎えた。深々とお辞儀をしフロント3人が去ったのち、最後のマーチを叩き終えたケンケンがステージを後にし、観客の拍手をもって第一部は終演となった。

 

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10分間の休憩を挟み、最新シングル『マイム』収録の「リコール」で開演した第二部。この日最初のMCで「“そしてパレード”はさっき終わってしまったので、“続く”の方です。渋谷公会堂編第二部、はじまりはじまり」と竜太朗が挨拶。無数の星が煌めいた「トゥインクル」、金テープが舞い、メンバー、オーディエンス揃って飛び跳ねた「マイム」と、最新曲たちが第二部のステージを彩る。そして、〈さよなら〉と歌う「真っ赤な糸」に、間もなくこのツアーが終わりを迎えるのだという寂しさが入り交じる本編ラストとなった。

 

アンコールに迎えられ4人が再び姿を現すと、「追加公演ということで、特別感を出そうと思ってセットリストを考えました」と正。約14年前に生み出された『Parade』楽曲の再演に関して、竜太朗は「若返っていくような蘇っていくような、楽しい時間を過ごさせていただきました」と語った。また、アキラは「(この公演の模様が)DVDになるということで、ギターがかっこいいだけの人になりたい」と言いながら、結果的には“爆裂トーク”(ケンケン談)へ。そして「アンコールはサクッとバキッと終わります! 今日で終わるんだから、がむしゃらに楽しんでいってください!」とケンケンが締めると、「Ghost」「メランコリック」「クリーム」で、この夜最高の盛り上がりを見せ、「ずっとずっとパレードは続くよ!」という竜太朗の叫びとともに今宵のステージは終幕を迎えた。

 

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最後に、竜太朗はオーディエンスに向け、こう告げた。

「当時のPlastic Tree、たかちゃん(Takashi/ex.Plastic Tree)含め、メンバー4人を抱きしめたくなりました。そう思わせてくれた皆さんに、ただただ感謝です。ありがとう」

 

この言葉が今ツアーの全てを象徴していたし、先述の「絶対に意味がある」「全部リンクしている」という言葉の答えが、ここにあった。また、「ずっと愛してくれる人、一生付き合っていきましょう」とメッセージを送った竜太朗は「終わりたくない」「帰りたくない」と幾度も口にしていたが、前ツアーの終盤でもその思いがあったからこそ、今回のツアータイトルが生まれたのだと話していたことを思い出し、まさに全ては続いているのだと実感した。なお、この特別な一夜の構成は、実は急遽決めたそうなのだが、多くの時間を費やして準備されてきた一つの“芸術作品”のような至極のステージであったことも付記しておきたい。

 

Plastic Treeのパレードは、これから先も、ずっとずっと続いていくに違いない。

 

◆セットリスト◆

-第一部-

01. エーテル

02. ロケット

03. スライド.

04. 少女狂想

05. ベランダ.

06. 空白の日

07. 十字路

08. トレモロ

09. 睡眠薬

10. bloom

11. Sink

12. そしてパレードは続く

 

-第二部-

13. リコール

14. くちづけ

15. トゥインクル

16. てふてふ

17. 梟

18. マイム

19. デュエット

20. 真っ赤な糸

 

EN

01. Ghost

02. メランコリック

03. クリーム

 

(文・金多賀歩美)