2011.2.26
黒夢@国立代々木競技場第一体育館

×××× THE FAKE STAR

 

 

 2階スタンドまでぎっしり観客で埋め尽くされた会場。ステージには黒地の幕に白で大きく「黒夢」の二文字のみ。新たな伝説が始まる日がついにやってきた――。

 

1999年1月29日に無期限活動休止、そして2009年1月29日に日本武道館で行なわれた一夜限りの復活ライヴで、正式に解散となった黒夢。しかしその一年後2010年1月29日、正式に再始動することを発表。2011年1月29日にシークレットライヴを慣行するも、ファン5000人が殺到し、開始からわずか1分で中止となった。そしてメジャーデビュー日である2月9日に、約13年振りとなるNEWシングル「ミザリー」をリリースし、この2月26日「×××× THE FAKE STAR」で完全復活したのである。

 

誤解の無いよう唯一言っておきたいのは、この再始動のきっかけは、一昨年他界した、インディーズ時代から彼らを支え続け清春の親友でもあった、ある編集者へのレクイエムだということ。

 

SEが響き渡り暗転…暗闇の中ステージ上のバックライトにより、黒地に白文字だったはずの「黒夢」が反転し白地に黒文字の「黒夢」のように見えた。黒夢が生まれ変わる…そう思った瞬間、幕が下り露になったそのステージは、セットもメンバーの衣装もすべてが真っ白な世界だった。

そして一曲目は「BEAMS」。誰も予想し得なかっただろう。まさかの選曲に驚かせられたのは筆者だけではないはずだ。続いて「Spray」では、真っ白なステージに映える色とりどりの鮮やかな照明が、黒夢らしからぬ空間。これからどれだけの衝撃を与えられるのだろう、期待と興奮を押さえることはできなかった。

 

「Gossip」では人時のチョッパーに目を奪われ、「BARTER」で会場の熱気を上昇させたかと思えば、クールダウンして「masochist organ」「『sister』」で大人の妖艶さを魅せつける。

ファンにも人気のライブ定番曲「カマキリ」の、あのサイレン音にオーディエンスは既にメロイックサインを掲げ臨戦態勢。もちろん健在だった清春の「カマキリを潰せー!」という言葉を合図に場内はヒートアップ。そこから97年発表のパンキッシュなアルバム「DRUG TREATMENT」収録曲で駆け抜けたあとは、またがらりと空気を一変し「REASON OF MY SELF」で切々と訴えかけた。

 

人時のベースソロでは、進化を続けるテクニックと、柔らかさと温かささえ持つメロディアスなサウンド、デジタル音の駆使やドラマー・GOとの掛け合いは圧巻。もはやロックという枠を超越した唯一無二のベーシストであることを再認識させられた。

 

往年のシングル曲「優しい悲劇」から復活第一弾シングル曲「ミザリー」の流れは、彼らの真意はわからないが深く心に突き刺さるものだった。I know blinding days are loving――清春が持つライトが会場を照らし出していた。

 

その後は黒夢が過去に発表したアルバムの中でもエネルギッシュなロックナンバー揃いの「CORKSCREW」収録曲を立て続けにぶちかまし、清春は「久しぶりで興奮してきた?」とオーディエンスを挑発。怒涛の攻撃的ナンバーのラストは「SICK」、清春が客席に降りもみくちゃになる場面もあり、この巨大な会場はライヴハウスと化し熱狂の渦のなか本編を終えた。

 

MCで清春は「ぬけぬけと復活しちゃってすいません。皆には感謝してます。純粋にバカになって暴れられるバンドはいないので…俺ら以外。いろんな人がいて、いろんな音楽があって、時代も変わって。でもそんなの関係ねーよ!自由に思ったことをやる。俺にもできてるんで、皆にもできるはず」と語った。

アンコールも「Distraction」「Suck me !」と攻撃的に進み、寸暇の暗黒と静寂のあと突如として始まった「FAKE STAR」。ライブタイトルからも一曲目と予想するのは順当だが、予想外なことがある意味予想通りでもあるのかもしれない。常に新鮮な裏切りと驚きを与え続けてくれる、それが黒夢なのだから。熱気に包まれた場内に「F●CK THE FAKE STAR!!」と清春が言い放ちアンコールは終了した。

 

2度目のアンコールで、今後の活動のことは未定だが5月にシングルを出す予定と発表。「今回の復活の理由に恥じないパフォーマンスをしたいと思っています。新しいものを作って、今までの過去の活動を踏みにじるように活動していきます。変わって変わって変わり続けます。それが復活した証というか意味だと思うので。…遠くに聴こえてるといいな。」と話し、代表曲「少年」「MARIA」を披露。「リハーサルで歌っていて、いろんなことを思い出した曲」という「NEEDLESS」へ。

 

そして。「今こそ、天使の羽で破壊せよ!」と、清春が大切にしているあの言葉を叫び「Like @ Angel」の大合唱。曲中に「聴こえますか!?」と遠くに問いかける清春がとても印象的だった。

 

終演を迎えたあと、ステージには「WE HAVE GOT NEWEST FEATHER」という文字が映し出された…。黒夢はその新しい羽でどこへでも行けるはず。「1月29日」同様「2月26日」という日はこの場にいた全ての人たちにとって大切な日として心に深く刻み込まれたであろう。

 

この会場となった国立代々木競技場第一体育館は、地上から眺めると、少し移動しただけで刻々と表情を変えていく。鳳凰の羽のように大きく羽ばたく屋根の曲線は、カーブを描き天空へと駆け上がっていく。まるで天と地を結ぶように佇んでいるのだ。新たな黒夢の始まりがここであったことは、必然だったのかもしれない。その光と音はきっと遠くまで届いている。

 

 

◆セットリスト◆

01.BEAMS
02.Spray
03.Gossip
04.BARTER
05.masochist organ
06.『sister』
07.解凍実験
08.カマキリ
09.MIND BREAKER
10.DRIVE
11.C.Y.HEAD
12.BAD SPEED PLAY
13.REASON OF MY SELF
14.Walkin’ on the edge
15.Bass Solo
16.優しい悲劇
17.ミザリー
18.Paraphilia
19.MASTURBATING SMILE
20.FASTER BEAT
21.SPOON & CAFFEINE

22.HELLO.CP ISOLATION

23.YA-YA-YA!

24.CANDY

25.ROCK’N’ROLL

26.後遺症 -aftereffect-

27.SICK

 

ENCORE1

28.Distraction

29.Suck me!

30.FAKE STAR

 

ENCORE2

31.少年
32.MARIA
33.NEEDLESS
34.Like @ Angel

 

(文・金多賀歩美)